サカナの体の色&模様が決まる要因を解説 浅場のサカナは日焼けをする?

サカナの体の色&模様が決まる要因を解説 浅場のサカナは日焼けをする?

様々な色や模様の魚たち。同じ種類の魚でも生活する環境で見た目がまるで違って見えることもあります。魚はどのような理由で色や模様が変わるのでしょうか。調べてみました。

(アイキャッチ画像出典:Pixabay)

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サカナ研究所 その他

同じ魚でも異なる色や模様

動物界では、同種でも見た目が異なることはよくあります。もちろんサカナも同様です。

魚の色や模様は種類により、ある程度決まっていますが、中には生息地、時期などによって同じ魚なのに見た目が全く異なることがあります。

サカナの体の色や模様はどのようにして決まるのでしょうか。

生息する水深による違い

魚は生活する水深によって、魚種に関係なく体の色が似ている傾向があります。それぞれの水深で魚はどのような色になっていくのでしょうか。

鍵となるのは、「自分がどのような生き物に狙われるか」ということ。自分の命を脅かす存在が何かということです。

海面付近で生活する魚たち

比較的表層で生活する多くの魚は、背中が青い色や緑色、お腹側が白色をした魚が多い傾向にあります。

表層で生活していると、自分の命を脅かすのは「空を飛ぶ鳥」や「自分の下を泳ぐより大きな魚」ですよね。

サバやアジなど小型の青魚もみな決まって背中側が青っぽく、お腹側が白色をしています。

空を飛ぶ鳥が海を見た時に、海の青と魚の背中の区別がつかず発見されにくくするためと考えられています。

また、お腹側が白色をしているのには太陽の光が大きく関わっています。

魚が下から見上げた時に、太陽の光と魚のお腹の色が同化し発見されにくくするためにお腹側が白くなっていると考えられています。

サカナの体の色&模様が決まる要因を解説 浅場のサカナは日焼けをする?表層付近に生息するイワシ(出典:Pixabay)

深い場所に生活する魚たち

サカナの体の色&模様が決まる要因を解説 浅場のサカナは日焼けをする?上:深場に生息するカサゴ 下:朝場に生息するカサゴ(作成:TSURINEWS・サカナ研究所)

反対に深い場所に生息する魚たちにもある共通の色の傾向があります。

それは【赤色】です。これにも太陽の光が深く関わっています。

太陽の光は海に注ぎ込まれると、水深が深くなるにつれて、赤色の光が水に吸収され、水深200mに到達する頃には青色の光しか届かなくなります。

つまり200mくらいの深さになってくると、赤い身体は光を反射しないので、赤色自体が黒く見え、周囲から見えにくくなるのです。

そのため深海に住む魚たちは発見されにくくなること、そして気配を消して他の生物に近づいて捕食しやすくなるなどの理由から、赤い体をした魚が多いと言われています。

食べ物による色の変化

水深によって魚の体が一定の傾向にあることがお分かりいただけたかと思います。

タイの王様でもある「マダイ」も水深が深い場所に確かに住んでいますが、食べ物によって、体の赤色にも差が生まれます。

サカナの体の色&模様が決まる要因を解説 浅場のサカナは日焼けをする?マダイ(撮影:週刊つりニュース関東版 編集部)

マダイは幼魚のときから甲殻類を好んで捕食します。甲殻類の殻には赤い色素のアスタキサンチンが多量に含まれています。

幼魚のときからアスタキサンチンを摂取し、体内に吸収、沈着することで、マダイはあの美しい赤い体になります。

ですので、甲殻類が豊富な環境で育つとより赤く、少ない環境では黒っぽく育っていきます。ちなみに黒くなる理由は人と同じで、日焼けで黒くなるのだとか。

とにかく養殖のマダイでは、この性質を利用し、アスタキサンチンを多く含んだ人工飼料を食べさせることにで天然物よりも赤くなるように飼育されています。

これは赤いマダイのほうが商品価値が上がるからです。

感情表現による変化

魚の中には色素の沈着による色の変化ではなく、感情などによってある一定の期間、または瞬間的に体の色が変わる種類のサカナがいます。

例えば、クエ。

クエは普段うすい茶色味がかった地味な体の色をしています。

しかし、自分の縄張りに魚が侵入した際には、体の模様をくっきりとさせ、まるでトラのような縞模様が浮き出ています。

これは威嚇色と言われ、鱗の下にある色素胞という組織を縮めたり伸ばしたりすることで模様を浮かび上がらせています。

サカナの体の色&模様が決まる要因を解説 浅場のサカナは日焼けをする?怒ると模様が更に濃くなる(出典:Pixabay)

また、これは魚の中には産卵の時期になると体の模様をより派手にし、異性の魚に猛烈アピールをする種類の魚もいます。

紅鮭(べにざけ)という魚は、普段は銀色をしていますが、産卵期に入ると体の色は真っ赤に染まります。

魚全体を通して婚姻色に変化するのは比較的オスの種類が多いですが、紅鮭の場合はオスメス両方とも赤くなります。

繁殖の時期になると脳内からホルモンが分泌され体の色が変色します。体の色が濃くなるほど生命力が強いとされ、メスはより色の濃い個体とペアになり繁殖を行うようです。

意外と人間に似ている?

生活環境に合わせて体の色が変わるのは人類も同じことが言えます。

たとえば日焼け。

人間も日焼けをすると皮膚を紫外線から守るために黒くなっていきます。

例えばマダイの近縁種のクロダイ。どちらもスズキ目タイ科ですが、マダイはマダイ属、クロダイはクロダイ属に属します。

サカナの体の色&模様が決まる要因を解説 浅場のサカナは日焼けをする?クロダイ(撮影:週刊つりニュース関東版 編集部)

しかし見た目は色を除きとても似ています。このクロダイが黒い理由こそ、日焼け。マダイは深場に生息するのに対して、クロダイの生息域は水深の浅い沿岸域や汽水域、つまり日をマダイよりも浴びているということになります。魚も同じように環境に合わせて体の色を変化させる術を見つけたのかもしれません。

また、人が怒って表情を変えるのと同じように、体の模様を変えて相手を威嚇したり、意志を示すところも似ています。え

私達人間も異性にアピールするために身なりを気にしますが、魚も同じように異性にアピールをするために色や模様を濃くして他と差別化を図るという点ではかなり似ています。

魚も人間も本能的にはかなり似ているのかも知れませんね。

<近藤 俊/TSURINEWS・サカナ研究所>