産卵期を控えて荒食いが続く大阪湾の船タチウオ。現在は90~100cmの良型揃いでいい人なら40尾を超える釣果だ。近年、テンヤを使ったタチウオ釣りは「待ち」から「攻め」の釣りへの移行が激しく、今年も釣れ出しからその傾向は顕著だ。今回は、そんな「攻め」の釣りの基礎編を紹介しよう。
(アイキャッチ画像撮影:TSURINEWS関西編集部・松村)
テンヤタチウオの「即掛け」と「乗せ」
大阪湾のテンヤタチウオ釣りでは、大きく「即掛け」と「乗せ」と言われる2つの釣り方があり、それぞれ使用する竿の調子も違えば、最近ではテンヤも「乗せ型」や「即掛け型」とコンセプトをかえた商材が店頭に並んでいる。が、入門者にとっては、それが何を意味するのかが分からない人も多いはず。まずは、タチウオの2大釣法の基礎を説明しよう。
タチウオテンヤの基礎知識
その前にまずはタチウオテンヤの基礎知識から。以前は2本バリやアシストフックなどテンヤにもバリエーションがあったが、現在はほぼ1本バリに集約されている。これは1本バリの方がバラシが少ないのと、オマツリなどのトラブル時に対処しやすいのが主な理由。
先にも述べたようにテンヤのハリは下向きにあるハリ1本のみ。実は一般的な釣りのように、ハリが付いたエサを口にくわえたところを掛ける釣りではない。
テンヤ釣りはタチウオの捕食習性に合わせた釣りで、エサの下から突き上げるように捕食するタチウオに対して、アワせる事でテンヤのハリで引っ掛ける釣りになる。
そのため、慣れないとどこに掛かったかが分からず、タチウオの顔周辺以外の変なところ、あるいは皮一枚などに薄く掛かってしまいバレる原因になる。その辺りを意識して釣りをしてみると自分のやっているタチウオ釣りがかわる。
基本的なテンヤの効用を踏まえて、ここからが本題。2つのタチウオ釣りの特徴と、今季の傾向を説明していきたい。
乗せ型の特徴と釣り方
「乗せ型」の釣りとは、簡単に言うとタチウオがエサに食い付いた時に、しっかりと掛かるまで待ってアワセを入れる釣り方。タチウオはエサを見つけて食いに来るとかなりしつこくエサを追いかける習性を利用したものだ。
胴調子の軟らかい竿を使い、タチウオがエサを食いに来た時に、竿の硬さによる反発や違和感をなくし、タチウオがハリに掛かって竿が絞り込まれるまで待つ釣りである。
ここで先ほど説明したテンヤの掛かり方を思い出してほしい。この釣り方は、タチウオがエサの下から突き上げては離れ、再びエサを襲うのを繰り返すうち、自然にハリが「掛かってしまう」状況をイメージすると良いだろう。
胴調子の竿のメリット
ここで胴調子の竿を使うメリットがあり、竿が硬いと何度かエサを食われているうちに、竿の硬さでエサを食いちぎられる事がある。
対して軟らかい竿だとタチウオが食った時にも柔軟な調子がタチウオの引っ張りなどに付いていく事でエサが取られにくい。そして違和感が小さいために何度も襲ってくる。この釣りでは竿が舞い込んでアワせる段階ではすでにタチウオの身体にハリ先が立っているのでアワせ損ねる事が少なくなるのが特徴だ。
誘い方の特徴としては、硬い竿に比べてシャープなアクションを演出しにくく、どちらかと言えば大きなアクションとスローな食わせのイメージ。
大きめのアクションとスロー巻き
具体的には電動リールの巻き上げを極端なスロー(速度1や2)で巻き上げつつ、竿で大きくあおっては元に戻す。竿をあおる時にテンヤが大きく動きタチウオにアピールすると、ゆっくりとした巻き上げ時にアタリが出る。
ここで釣り方が分かれるのだが、1つは竿先にアタリが出たら、即アワせる釣り方、2つめはそのまま巻き上げ続けて竿が海面に突っ込むほど舞い込んでからアワせる釣り。どちらを選択するかはその時の状況次第。即アワせても掛かるようならそれでもOKだが、なかなか掛からない事も多々あり、掛けてもすぐにバラしてしまう事もある。そんな時は十分にハリに乗せてから掛けるというスタイルだ。
ただ、十分に乗せるまでにタチウオがエサを放してしまう、いわゆる追いが悪い事もあるので、そんな時は即アワセで何度も掛けにいく動作が必要だ。この時も竿が軟らかい分、硬い竿に比べると、何度もアタリが出る可能性もある。
即掛けの特徴と釣り方
次は「即掛け」の釣りについて。こちらはその名の通り、アタリがあればとにかくアワせて掛けていく釣り方。
軟らかい竿に比べて、小さなアタリも取る事ができるように、穂先の感度はかなりいいタイプが多い。その上で、釣り人側から掛けていくので、しっかりとハリが刺さるよう、胴のしっかりした竿を使う。理想は胴がしっかりしていて、穂先は感度がよくやや柔軟な先調子の竿。
この釣りではとにかくタチウオにアピールして、エサを食べに来たら即アワせて掛けるのを信条としている。そこで、広いタナをスピーディーに探って、少しでも活性の高いタチウオを探し捕食スイッチを入れたい。
誘いの工夫が面白い
具体的な釣り方としては、竿先をちょんちょんと揺らしながら、リールで少し巻き上げる。つまり、テンヤの動きに変化を付け続ける事でタチウオに見つけて貰おうと言う寸法だ。
ちょんちょんと動かしてアピールした後は、「アタリを出させる間」を作る。乗せ型同様、電動リールでごくスローな巻き上げ、もしくは巻き上げずにステイと言った方法があり、どちらがいいかはその時の状況次第なので試してほしい。
その時に、小さくシャープなアクションを演出したいのだが、そのアクション幅や1回の竿の上下動でリールのハンドルを何回巻くかなどバリエーションも多く、工夫のしどころとなっている。
誘いがタチウオの活性にバッチリ合うと、即掛けな分、入れ食いを演出できる。基本的に数釣りに適した釣法とも言える。
アクション後のアタリに集中
アタリはアクションし終えた直後に、コツンと小さく出る事が多く、まずは軽くアワせてみよう。掛からなくても問題なし。アワせるために突き上げた竿を再び下ろしてテンヤを同じタナに戻したら、何ごともなかったかのように再び誘う。
実は1度エサに食いついてきたタチウオはどこかに行ってしまうのではなく、周辺でエサを探したり、1度食いついたエサを執拗に狙う。そこで、ジッとしていると興味を失って去ってしまう事もあるが、再びアクションを入れる事でアタリが再現する。
基本的にはアクション+巻き上げ→アタリでアワせる→掛からなければ同じタナからアクションという動作を繰り返していると何度目かで掛かってくる事が多い。
アタリの違いで食い方をイメージ
慣れてくるとアタリの出方でアワせるか、そのままエサが逃げるのを演出して、次の掛けるべきアタリを出させるのかを判断する事ができる。つまり、即掛けの場合はタチウオがエサを下から捕食してきた瞬間に掛けにいくので、タチウオが確実にテンヤの下にいないとヒットする確率は低い。
アタリによってタチウオの状況を判断しようと言うのである。実はアタリのバリエーションの豊富さもこの釣りの楽しさである。具体的には「コツンと下から突き上げる」、「コツンと小さく引っ張り込む」、「いきなり竿が舞い込む」、「ゴツゴツとその場で何かにかじられたような感触が伝わる」、「モワ~ッと穂先に重みが乗る」、「フワッといきなりテンションが抜けて糸がフケる」などなど。
理想的なのはコツンと下から突き上げるようなアタリで、これはタチウオが下から上へ向かって食ってきているので、確実にハリ先の前にはタチウオの頭があると判断できる。慣れるとタチウオが確実にテンヤの下に入っているアタリを見極めて掛けていく事もできるようになる。
糸フケは要注意
ちなみに注意点としては、テンションが抜けて糸がフケた時である。昨シーズンから続き、今季もかなり遭遇するアタリなのだが、実はタチウオがエサを食ってそのまま上へ向かって泳いでる。
いわゆる強烈な「食い上げ」である。この食い上げの場合はエサをくわえていると言うよりは、すでにテンヤのハリがタチウオに掛かっている場合が多く、ゆっくりとしていると上に泳いだタチウオの歯によって道糸が切られて高切れを起こしてしまう。
テンションが抜けて軽くなったら、高速でリールを巻いて、とにかく重みが竿先に伝わる状態まで素早く持っていく退所が必要だ。テンヤの釣りでは底にテンヤが付いている状態で釣る事はないので、重みが竿先から消えた状態は尋常ではないと判断してほしい。
今季のタチウオはどちらが優位?
さて、2つのテンヤ釣法の基礎を説明してきたが、ここからは今年のタチウオの状況である。シーズンが始まった7月中旬から以降、今季に限って言うと、ゆっくりとした変化をさせないスローな釣りよりも、ややアクションをさせてアピールした釣りの方が反応がいい感じだ。
ただ、アクションを大きくしすぎるとかえって反応が悪くなる事もあるので、基本は小さくシャープにを心がけよう。
タチウオは「お化け」と言われるほど神出鬼没なターゲットだが、その時々でも好みの誘いがコロコロかわるような釣り手側からすると「勝手な」魚である。そんなタチウオの勝手に合わせて、好釣果を得るのも釣り人の工夫のしどころであり、タチウオ釣りの醍醐味でもあると思うのだが。
<松村計吾/TSURINEWS関西編集部>