健康と美容に意識の高い女性なら誰でもその名を知る「大豆イソフラボン」。これがなんと「養殖ウナギを大きく育てる」ことにも役立つことが判明したそうです。
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あの成分でウナギが大きくなる?
ウナギの養殖生産が盛んな愛知県。鹿児島県についで全国2位の生産量を誇り、三河湾沿岸の「一色うなぎ」などは全国的なブランドです。
その愛知県にある水産試験場の内水面漁業研究所で「大きくておいしいウナギ」を人為的に作り出すことに成功したというニュースが話題になっています。大きく成長させるためのカギは「誰もが知る食品栄養素」と「メス化」にあるといいます。
養殖ウナギのメス化に成功
ウナギは現在、天然のシラスウナギを捕獲し、それを飼育して大きくするという形の養殖が行われています。しかし現在、養殖で育てたうなぎは9割以上がオスになってしまうといいます。ウナギの生態にはわからないことが多いのですが、ほとんどが「オス化」してしまうことの理由もまだわかっていないのだそうです。
オスのウナギは大きくなると身や皮が硬くなるため、食味が悪化してしまいます。そのため大きく成長させることができず、1尾当たり200~250gといったサイズで出荷しています。
一方、メスのウナギはオスに比べて個体自体大きくなりやすく、また大きくなっっても身が柔らかいままのため、大きく育てて商品価値をあげてから出荷することが可能とのこと。そのため愛知県水産試験場では、ウナギを効率的にメス化する技術開発を2018年度から進めてきたのだそうです。(『大きくて、おいしいうなぎを作り出すことに成功しました~新しいうなぎ養殖技術を開発~』愛知県HP 2020.11.26)
大豆イソフラボンがメス化のカギ
ウナギの「メス化」をもたらしたのはなんと、誰もがその名を聞いたことがある栄養素「大豆イソフラボン」。研究員のひとりが「女性の健康や美容にいい」ことで知られる大豆イソフラボンを試験的にエサに混ぜてみることを思いついたのだそうです。
試験の結果、養殖における一定期間、大豆イソフラボンを餌に混ぜてシラスウナギを育てることにより、養殖ウナギの実に9割以上をメスにすることに成功。その結果、オスのウナギの2倍(400~500g)サイズに成長させても、身が柔らかく、おいしいウナギを育てることができたのです。
現在当試験場では特許を出願中で、商用化は2023年を目指しているそうです。この技術が全国的に一般化され、仕入れの価格に反映されれば、大きくて美味しいウナギを今よりも安く食べられるようになるかもしれません。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>