日本の食卓に深く関わってきたウナギ。その養殖に必要となる稚魚について、静岡県の浜名湖では、今年は例年にない豊漁が予測されているようです。
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ウナギの稚魚が豊漁
「土用丑のウナギ」など、我々日本人の食文化に深く関わっているウナギ。そのほとんどは養殖物ですが、養殖に必要なウナギの稚魚「シラスウナギ」は天然の個体を捕獲して賄っています。その漁が12月1日に解禁しました。
全国有数のウナギ生産量を誇る静岡県では、その解禁を前にした11月中旬に、シラスウナギ漁が行われる浜名湖で試験採捕を実施しています。11~25日にかけ、3回に分けて湖内2カ所で網を仕掛け、捕獲されるシラスウナギの数を確認しました。
結果として、「3日で計55匹」が捕獲されたそうです。これは近年でも豊漁と言われた昨年2019年の「4.2倍」に当たり、試験採捕としては過去10年で最も多い数値です。関係者は予想以上の豊漁に「実際のシラスウナギ漁でも、前年に続く好漁が期待できる」と期待を高めています。(『ウナギ稚魚10年で最多 浜名湖で試験採捕、好漁期待』静岡新聞 2020.11.27)
回復傾向にあるシラスウナギ資源量
日本に棲息するニホンウナギは、様々な要因から生息数を減らしており、現在では絶滅が危惧されています。シラスウナギ漁でもここ数年は壊滅的な不漁が続いており、2017年から2年連続で試験採捕数はゼロでした。
しかし2019年は計13匹を捕まえ、実際の漁でも静岡での総水揚げは1638kg(前年比3.4倍)に達したそうです。シラスウナギを受け入れて養殖をするための養鰻池はいっぱいになり、シラスウナギ漁は漁期途中で打ち切られたそうです。
今年の試験採捕の結果を受け、期待の声は高まっているといいます。
安心はできない
しかし、シラスウナギの接岸量が多いからと言って、「ニホンウナギの資源量が復活した」と考えるのは早計であると言えます。過去の傾向を見てもシラスウナギの漁獲量は年ごとの変動が大きく、2、3年回復基調だったとしても、来年以降もそれが継続するとは言い切れません。
日本に接岸するシラスウナギの量が変動する理由については、海流や海水温といった海洋環境の変動や、日本国内の河川や河口域の生息環境が影響しているとされていますが、根本的な原因はわかっていません。シラスウナギが大量に接岸したからと言って、捕れるだけ捕ってしまえば、翌年以降また大きな減少を招いてしまう可能性もないわけではないのです。
資源を守り、安定的にウナギを供給するためにはやはり、シラスウナギそのものを人工的に賄うことが必要です。
現時点でもウナギの完全養殖自体は実現していますが、コストが大きく商業化には至っていません。それでも養殖コストを下げるための研究が日々続けられており、5~10年後には実現化したいと考えられているそうです。(『うな丼に未来はあるか?』読売クオータリー 2020.10.6)
<脇本 哲朗/サカナ研究所>