釣り人も滅多にお目にかかることのできない「シロアマダイ」。そんな高級魚の稚魚の大量生産に、山口県水産研究センターと同県の栽培漁業公社が2年連続で成功しました。
(アイキャッチ画像提供:山口県水産研究センター)
シロアマダイ種苗(稚魚)の大量生産に2年連続で成功
山口県水産研究センターと同県の栽培漁業公社では、平成29年から、シロアマダイの生態把握や種苗生産技術開発に取り組んでいました。昨年度全国で初めて種苗の大量生産に成功、今年も2年連続で大量生産に成功しました。
瀬戸内海産のシロアマダイの親魚を確保、採卵したのち、人工授精を行い、約40万粒の受精卵の確保に成功。このうち約26万粒を用いて、(公社)山口県栽培漁業公社と共同で生産試験を実施し、約4万尾の生産に成功しました。
なぜシロアマダイが対象魚に?
そもそも、なぜシロアマダイが対象魚として選ばれたのでしょうか。
山口県水産研究センターによると、この取り組みは、水産庁からの委託事業「さけ・ます等栽培対象資源対策事業」を受けて行われたとのこと。もともと山口県ではアカアマダイの稚魚の大量生産にも注力しており、その技術を横展開できたという経緯があるようです。
また、シロアマダイは希少性が高く、市場ではkg単価1~2万円の高値で取引されることもある高級魚。漁業者側からのニーズも高く、稚魚生産・放流技術の開発が待たれている魚種でもあるようです。
今後の展望
山口県が定める「第七期山口県栽培漁業基本計画」では、シロアマダイを新規栽培対象種に指定しており、資源増大に向けた取組を進めていくとのこと。基本計画では、「種苗生産・放流に係る技術レベル」「漁業者の要望」「漁獲後の市場の需要動向や流通販売」などを総合的に検討し、対象魚を選定しています。
今後は、施設で稚魚を大きく育てるノウハウの確立、約3カ月で死んでしまう成魚の飼育期間を延ばす技術の確立が待たれているようです。
なお、育成された稚魚は、ヒレに目印を付けて放流され、漁獲状況まで検証予定。「育成、放流して終わり」ではなく、同県の未来の漁業を支える「漁獲」まで得ることができて、初めて取り組みが成功したと言えます。
滅多にお目にかかることができないシロアマダイ。しかし、研究が進めば、普段の食卓でも「ちょっとした贅沢魚」として認識される日が来るのかもしれません。
取材協力:山口県水産研究センター
<田口/TSURINEWS編集部>