世界で最も硬い食品『鰹節』にも旬があった? 春節と秋節の違いを解説

世界で最も硬い食品『鰹節』にも旬があった? 春節と秋節の違いを解説

日本人の食に絶対に欠かすことのできない「鰹節」。世界で最も硬い食品とも言われ、その保存性の高さは折り紙付きですが、そんな鰹節にも「旬」はあるのでしょうか。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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日本食に欠かせない鰹節

和食を代表する食材といえる鰹節。カツオの身を加工し、水分を抜いて保存性を高めたものです。そもそも、干してカチカチになった魚「堅魚」が転じて「かつお」となったという説があるくらい、古くから鰹節は保存食として馴染みのあるものだったのです。

はじめの頃は砕いて利用されていたと考えられていますが、室町時代後期に書かれた料理書である「四条流庖丁書」にはすでに「花鰹」の文字が登場しており、この頃にはすでに「花びら状に薄く削る」利用法が編み出されていたのではないかと考えられています。

世界で最も硬い食品『鰹節』にも旬があった? 春節と秋節の違いを解説鰹節のなかで最も高品質とされる本枯節(提供:PhoteAC)

江戸時代になると、現在の鰹節の原型とも言える荒節(燻製処理を施した鰹節)が、さらにその後、土佐地方で枯節(さらにカビ付け加工を施した鰹節)が発明され、現代に至っています。

鰹節の「旬」とは

鰹節は保存食品なので、適切に管理・保管されたものであればもちろん一年中美味しく食べることができます。

しかし、原材料となるカツオには「旬」があります。一般的にカツオの旬は、春から初夏にかけてのいわゆる初鰹の時期、そして秋になり脂をためて食味が良くなった戻り鰹の時期の2つが挙げられますが、鰹節の原料として考えたときの旬は初鰹の時期のみとなります。

世界で最も硬い食品『鰹節』にも旬があった? 春節と秋節の違いを解説脂がよく乗り太ったカツオは鰹節には不向き(提供:PhoteAC)

実は、鰹節に加工をする際に、カツオの身に脂肪が多いとそこの部分が油焼けしたり、また削るときに粉状になってしまうなど、質の良いものに加工することが難しくなってしまうのです。そのため、春に獲れたカツオを加工した「春節」のほうが、秋のカツオを使った「秋節」よりも高品質だとされています。

春のカツオは西から回遊するため、西寄りの地域のほうが早い時期に水揚げすることができ、脂の少ないものが得られます。東に行けば行くほど時期が遅くなり脂も乗ってしまうため、かつては鰹節の品質にも「西高東低」の傾向が見られたそうです。(『カツオと鰹節』「かつお節塾」株式会社にんべん)

今は差がなくなってきている

「春節」が作れるのは九州から伊豆までの地域。東・北日本に向かうほど漁獲されるシーズンが遅れ、脂も乗ってきて「秋節」となってしまいます。春節は加工の時期が夏の暑い盛りとなり乾燥が行いやすくなる、という好条件もあり、品質向上に寄与していました。

ただし、これらの話はあくまでも、近海もののカツオだけで鰹節を作っていた時代のこと。遠洋漁業の漁獲高の増大で、現在はこれらの条件は一概には当てはまらなくなっているといいます。

最近の研究により、カツオは近海ものより遠洋もののほうが脂が少なく、鰹節の加工には向いていることが判明しています。またその他、雌のカツオより雄のカツオのほうが脂肪が少なく、鰹節原料として好適であることもわかっています。(『カツオと鰹節』「かつお節塾」株式会社にんべん)

世界で最も硬い食品『鰹節』にも旬があった? 春節と秋節の違いを解説技術の発達により、一年中美味しい鰹節を作れるようになった(提供:PhoteAC)

「雄節」と「雌節」

ちなみに鰹節には「雄節」と「雌節」がありますが、これは上記の雄と雌の違いに依るものではありません。

鰹節をつくる際、半身を背側と腹側に切り分けて加工するのですが、背側を使ったものを雄節、腹側を使ったものを雌節という方です。カツオは多くの魚と同様、腹側に脂が乗るので、雄節のほうが高品質とされます。

鰹節を購入するとき、これらのことを知っておくと、より高品質なものを手に入れられるかもしれません。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>