鑑賞魚飼育の強い味方「ブラックウォーター」を解説 見た目は泥水?

鑑賞魚飼育の強い味方「ブラックウォーター」を解説 見た目は泥水?

以前、メダカ飼育の強い味方である「グリーンウォーター」という水について紹介しました。今回は、アマゾンなど秘境に存在するまた違った魔法の水「ブラックウォーター」を紹介していきます。

(アイキャッチ画像提供:Pixabay)

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ブラックウォーターとは

ブラックウォーターとは、南アメリカ・アマゾン川などの熱帯地域を流れる河川でみられる黒または茶褐色の水を差します。枯れ葉や流木等から溶け出したタンニンによって、茶褐色または黒褐色に変色し、酸性に傾いている水質のことを指します。

自然界で、ブラックウォーターになっている河川は他の河川よりも栄養が豊富とされています。

本来の「ブラックウォーター」は、陸水学、地質学、地理学、生物学的の研究によって定義されます。そのためただ単に水が茶色ければ、ブラックウォーターであるという訳ではありません。しかしアクアリウム業界で使うこの言葉には、そこまで厳密な定義は存在しません。

グリーンウォーターとの比較

以前の記事「メダカ養殖の強い味方『グリーンウォーター』を解説 見た目は汚水?」で、メダカ飼育には「グリーンウォーター」が適している話をしました。

グリーンウォーターもブラックウォーターも客観的に、水を見た時の色を示唆していますが、水に色がついている理由は全く異なります。

グリーンウォーターは、植物プランクトンが大漁に発生することによって、水が緑色に見えているのに対し、ブラックウォーターは、溶け出したタンニンによって水自体が染まっているような状態です。

簡単に言うと、お茶や、紅茶、コーヒーなどを淹れているようなイメージです。ちなみに紅茶が茶色いのもタンニンによるものです。

鑑賞魚飼育の強い味方「ブラックウォーター」を解説 見た目は泥水?この色もタンニン(出典:Pixabay)

ブラックウォーターの特徴

ブラックウォーターの色は、枯れ葉や流木等から溶け出した「フミン酸」や「フルボ酸」によって作られます。

「フミン酸」や「フルボ酸」は酸性の物質のため、水槽の水はpH的な面で、弱酸性の水へと変容します。また通常の澄んだ水と比べて、酸性度が高いだけでなく、水が軟水化していきます。

これは、フミン酸が水中のミネラル成分と結びつき、水の硬度を上げるカルシウムやマグネシウムなどの濃度が低下するためです。

水槽の水をブラックウォーターにすることで、水槽内の水は弱酸性に、そして軟水化していく特徴があります。

ブラックウォーターのメリット

先ほど紹介した「フルボ酸」には殺菌作用があり、病原菌やすり傷による魚の病気や感染症を防ぐ効果があります。

水槽内は閉鎖空間であるため、病原菌や感染症が一度発症してしまうと、あっという間に水槽全体に蔓延してしまいます。

水槽内での病気は飼育において、かなり気を付けなければいけないポイントなので、そのケアができるというだけでも非常に心強いと言えます。また、日本の水道水は、中性になるように調整されていますが、消毒のための塩素で弱アルカリ性に偏りがちです。

多くの淡水の観賞魚は自然界では弱酸性の環境で生きているため、中性の水道水から作られた水よりも、ブラックウォーターの方が快適に暮らすことができます。

鑑賞魚飼育の強い味方「ブラックウォーター」を解説 見た目は泥水?ブラックウォーターで元気に(出典:Pixabay)

ブラックウォーターのデメリット

自然界に近い水となり、良いことずくめなように思えるブラックウォーターですが、何事にもメリットがあればデメリットが存在します。

ブラックウォーターは、ろ過機に入れる活性炭との相性があまりよくありません。活性炭は、水の黄ばみや匂いを吸着する効果があります。

ここで言う黄ばみというのはもちろん、フミン酸やフルボ酸によるものなので、せっかくブラックウォーターを作っても、活性炭を入れてしまうと、あっという間に、水はクリアになってしまいます。

他にも、一部の生物の飼育にあまり適していない場合もあります。例えば、エビや巻貝の殻の形成には、カルシウムなどのミネラルを必要としますが、ブラックウォーターを使用すると、水の硬度が下がってこれらのミネラルが不足しがちになります。

数匹なら問題なさそうですが、ビーシュリンプなどの綺麗な模様のエビをメインに飼育するような水槽では、わざわざブラックウォーターする必要はないでしょう。また、魚類や甲殻類だけでなく、水草の生育にも向いていません。

水が茶色いので、日光やライトの光が水草の葉に届きにくくなるため、光合成が阻害されて、成長が鈍くなってしまします。

ブラックウォーターを再現する理由

自然環境に近づけることで、水質などの様々なストレスを緩和することができます。ストレスがなくなるとサカナはみるみる元気になり、発色が良くなったり、ヒレがピンッと広がるようになります。

多くの観賞魚はブラックウォーターにすることで快適に暮らせますが、特に向いているのは『ベタ』『ディスカス』『アロワナ』などです。これらのサカナは本来の生息地が、ブラックウォーターのため全く問題ありません。

反対に向いていないサカナは「ミッキーマウスプラティ」や東アフリカ産の「アフリカンシクリッド」が挙げられます。これらのサカナは、弱アルカリ性の水を好む為、向いていません。

ストレスを感じているとサカナは徐々に体調が悪くなっていき、美しいサカナは色味が出にくくなったり、ヒレがボロボロになってしまうこともあります。適しているサカナ、適していないサカナを見極めてブラックウォーターを使用するようにしてください。

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