朝夕、徐々に涼しくなってくると、秋のイカダではチヌの数釣りが楽しめるようになってくる。場所によっては小型ながら50尾、60尾と数が釣れたり、45cm超の良型が登場したりと1年でもかなり楽しい時期だ。そこで、WEBライターの大西与志夫さんと、南あわじ・福良のじゃのひれ筏釣りセンターを訪れた。
(アイキャッチ画像撮影:TSURINEWS関西編集部・松村)
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じゃのひれフィッシングパーク
秋は台風のシーズンであり、釣行計画を立てても突然の中止…なんて事がよくある。チヌ狙いのカカリ釣りは、比較的内湾にイカダやカセが掛かっているので悪天候で中止になる事は少ないが、それでも秋から初冬にかけては、台風を含めて強風が吹き荒れる日が出てくる。
10月2日に釣行した福良湾のカカリ釣り場は三方を山に囲まれている年間を通しても波の穏やかなカカリ釣り場だ。湾の入り口近くには、じゃのひれフィッシングパークがあり、地続きの海上釣り堀やキャンプ場、ログハウスなどアウトドアレジャーを目いっぱい楽しめる一大施設がある。
イカダの選び方
じゃのひれ筏釣りセンターが渡すカカリ釣り場は、福良湾の広範囲に点在しており、その時々でよく釣れているエリアがあるので、釣行の際には上がる場所をよく相談して決めたい。
例えば、「○○筏はチヌも釣れているけれど、浅場でエサ取りがめっぽう多くて工夫が必要」や「××筏はアタリは少ないけど、良型のチヌが釣れる」など、釣果の傾向がかなりバラエティーに富んでいる。慣れた人ならその状況を踏まえて自分の得意な条件を選ぶ方法もある。
「ホテル前筏」で実釣
当日は福良湾奥に位置するホテル前筏に上がる事にした。ここは水深7mほどと浅く、シモリなどが近くにあるため、かなりエサ取りが多いものの、チヌの魚影も濃いエリアだ。いかにエサ取りをかわしてチヌが食うパターンを探るか…。この工夫のしどころも秋のチヌカカリ釣りの醍醐味である。
ホテル前のイカダは4基がロープで連結されていて、それが2列ある。この日は相談の上、南側の8番イカダに上がる事になった。
当日のエサ
この日、大西さんが用意したエサはまきエサ用のダンゴ材がパワーダンゴチヌ1箱をベースに濁りオカラ、大チヌスペシャルハイパー、荒びきさなぎ徳用2kgを各1袋。これで約1日楽しめる分量だ。
イカダの上で一気に混ぜると量も多くて大変なので、現地で混ぜる場合は、3分の1から半量ずつを桶に入れてまぜる。水を加えて柔らかさを加減し、ここにオキアミやニュー活さなぎミンチ激荒をダンゴのアンコとして使う。
さしエサには、アンコにも使う生オキアミ、くわせオキアミスーパーハード【チヌ】、荒食いブラウン(練りエサ)、ガツガツコーン、サナギなどを準備した。
まずは落とし込みで狙うが…
まずは前日もまきエサが入っているとの情報から、オキアミ、コーン、サナギを主体に落とし込みで探りを入れる。が、さしエサが着底するやいなや、穂先には派手なアタリ。少し誘い上げるとココンと軽快なアタリで小アジが釣れてきた。
やはりダンゴなしではエサ取りをかわすのは難しいと判断して、早々にダンゴ釣りに切りかえた。ただ、ダンゴへのアタックもかなり激しく、穂先は常に揺れっぱなし。朝からイソベラ、キュウセン、チャリコと続きなかなかの苦労っぷりだ。
数投目に早くも本命
ただ、数投目に派手なエサ取りたちのアタリとは違い、クッと穂先を押さえ込む変化が出た。「これは本命でしょ」と、じっくりと送り込むと、スーッと穂先が持ち込まれた。大きくアワせると、ゴツ、ゴツと頭を振るようなチヌ独特の引き。上がってきたのは手の平よりも少し大きな小チヌだ。
エサ取りの中にチヌのアタリもまじる…と言った状況で、そのチヌが釣れた後も、チヌの食いパターンになる事はなく、再びエサ取りが闊歩する。
ダンゴを取り巻くエサ取り
しばらくダンゴをまき続けると、竿下にはアジの群れ、そして表層にはサヨリの群れが居付いて、海中はもの凄い事に…。そして、時折ボラが回遊してくるが、底のダンゴを突くボラは居るものの、どこかに行ってしまったり、現れたり…と言う状況だそうだ。
確実に言えるのは、あまりむやみにエサを浮かすと、すぐに小アジが食ってくるので、釣りにならない点。小アジ狙いのサビキ釣りや、サヨリ釣りならめちゃくちゃに釣れそうだが…。
エサ取りの状況を分析
さしエサのローテーションを繰り返しつつ、その日の組み立てを考えていた大西さんいわく「オキアミは瞬殺か、エサ取りが掛かってくる。サナギもかなり突かれる。コーンもよく取られるので、しっかりと残るのは練りエサですかね。その練りエサにチヌが食ってくれれば楽なんですけど、そうはいかないみたいですね」。
他にダンゴの握り加減をかえるだけでも、エサが出るタイミングをズラす事ができ、釣りに変化をもたらし、エサ取りをかわす事も…。状況を見ながら握り加減をかえていく大西さんだったが、なかなか当日のエサ取りはタフなようで…。
本来、魚体の大きなボラが寄ってくると小さなエサ取りは散ってしまう事が多いのだが、このポイントに限っては、ボラがダンゴを突いても、常に横からエサ取りもエサを食べている感じだそうだ。まるで共存…。
釣法かえる2タックルを用意
ダンゴを一点にまき続けて、しっかりとまきエサのステージを作り、そこにチヌを呼び込むのがチヌカカリ釣りのセオリーだが、チヌが他魚に遠慮したり、警戒心を抱いている場合は、寄ってこない場合も多い。そんな時のために大西さんは2つのタックルを用意している。
一つはダンゴ使用時に使うオモリなし(オモリを打つ場合はガン玉など後でかみ付けられる小さなオモリを使用)のフカセ仕掛け。もう一つは中通しオモリ0.5~1号がついた落とし込み用のタックルだ。
落とし込み用のタックルは、竿下にダンゴなしで落とし込む場合もあれば、最初にリールから糸を出しておき、少しキャストして広範囲を探る釣りにも使う。これで、まきエサの中には寄ってこなくても、周囲で見ているチヌをサーチする。
エリアによりエサ取りがかわる?
ただ、ステージ外を探ると、また違うエサ取りも多いようで、ヘダイやチャリコが多くなる感じ。そんな中、やはりしっかりと竿先を押さえ込んでくれるのは本命のチヌで、「このパターンならチヌが釣れる」と言う傾向がなく、あちこちを攻め、エサをローテーションし、ダンゴを止めたりしながら少しずつ攻めるタイミングをかえていく内に、ポツリポツリとチヌが掛かる。
昼を過ぎると海の状況がさらに変化してきた。あいかわらずエサ取りの猛攻は続くが、少し間が空く事も…。このタイミングでチヌが食ってくれれば…と、思っているとサナギのエサに、きれいなチヌアタリが出た。
重量感ある引きは本命か…
大きくアワせた大西さんの竿に、これまでよりも遙かに重量感のある引きが伝わってきた。「確実に本命です」と大西さんはきっぱり…。浮かせてきたのは当日最長となる35cm級のチヌだ。それまで釣れていたのが手の平サイズだっただけに、かなり大きく見える。エサ取りの猛攻に負けず、集中力を切らさずに工夫を重ねた結果の貴重な1尾だった。
日が傾き始めると、またまた状況に変化が現れた。アタリがあって、ヒットした瞬間に「チヌかも」と言う重量感のある引き。ところが水面下まで浮かせてからがしつこい。茶色い魚体が横を向いて泳ぎ回る。35cm近くあるアイゴだ。結局、アイゴも2、3尾をしとめた。
夕マズメに少しエサ取りが減ってきて、チヌの入れ食いパターンが到来するか…と、期待したがこの日は夕方に潮が止まってしまい全体に活性が下がったのか、チヌは追加できずに午後5時前に納竿とした。