皆さんは『左ヒラメに右カレイ』という言葉をご存知でしょうか。姿かたちがよく似ているカレイとヒラメの見分け方で用いられる言葉です。見た目が似ている2種類ですが、実は食性や生息場所などの生態も全く違います。本当は全然違う2種類の魚について紹介していきます。
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分類学上のヒラメとカレイ
ヒラメとカレイは分類学的には近縁種です。
ヒラメはカレイ目カレイ亜目ヒラメ科に属し、カレイはカレイ目カレイ亜目カレイ科に分類されます。
ではどうやって見分けるのか。
そんな時に出てくるのは『左ヒラメに右カレイ』という言葉ではないでしょうか。
左ヒラメに右カレイ
ヒラメとカレイを見た目で見分ける際に使用するこの言葉。
目を上にして両者を並べた時に、頭が左に来た場合は「ヒラメ」、右に来た場合は「カレイ」というものです。
しかし、すべてのヒラメとカレイがこの見分け方で判断できるわけではありません。
例外も多く存在し、日本産のヌマガレイは目が左側、また、ボウズガレイ科のものは特に左右の区別がありません。両者に突然変異が起きた場合でも同様です。
また、アメリカやアラスカのカレイは、半数以上の割合で左側眼となっているともされています。左右どちらに眼があるのかは、遺伝子レベルで決まるともいわれているが、詳細は謎のままです。
『左ヒラメに右カレイ』という言葉が間違っているわけではないですが、目の位置の違いが決定的な違いとは言えないのです。
ではどのように分類されているのでしょうか。
目の『付き方』が重要
前述したとおり、目の向きだけでは判断できないことはお伝えしましたが、両者の目には他にも違いがあります。
それは目の付き方です。
ヒラメは目が埋まったように付いており、上を見ることが得意な付き方をしています。
反対にカレイは少し飛び出たように目がついており、キョロキョロと周囲を見渡すことができるようになっています。
この目の付き方は、彼らが「エサとなる生き物をどのようにして見つけているか」によって各々発達したと考えられています。
カレイは自分の近くの生き物を探すため、キョロキョロと見渡せることに長け、ヒラメは自分の上を泳ぐものを見つける能力に長けています。
大きく異なる『食性』
そして、前述のとおり、両者の最も大きな違いは、『どのようなものを食べているのか』。つまり【食性】です。
ヒラメは非常に獰猛で歯が鋭どく、口も大きいため、生きた魚を丸のみにして食べてしまいます。
反対にカレイは、魚も食べますが、口は小さく、砂の中のゴカイや小さな甲殻類などを主食にしています。
またカレイは、『右カレイ』の他に、おちょぼ口としても有名です。これはカレイの食性が強く影響しています。一方でヒラメは食性も獰猛なため、口もカレイに比べ裂けています。
どのようなものを食べているかによって、目や口の発達の大きな変化が生じているのです。
違いに注目しよう
見た目も似ていて、顔の向きが違うだけと思われがちなカレイとヒラメですが、実は大きな違いがありました。
食性や、器官の発達の仕方などによって分類されていることがわかりましたね。
今後、水族館やスーパーで見かけた際は、顔の向きだけではなく、目の付き方にも注目してみると面白いかもしれません。
<近藤/TSURINEWS・サカナ研究所>