例年10月の末には始まっているヒラメ釣りではあるが、やはり本番はこれからの冬季だ。春からの産卵に向かうその魚体は厚みを増し、下がる水温に反比例して上品な脂を乗せる。座布団と呼ばれる大型が出るのはこの季節が圧倒的に多い。
(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース中部版 峯卓)
冬の船ヒラメ釣り
シーズン初期のように中~小型のアタリが途絶えない一日も悪くはないが、あって数回の時合いを狙いすまして仕留める良型の重量感たるや、凍える手先でサオを握り、鼻水をすすって耐えた苦労も一撃で吹っ飛んでいく。
交じってくる青物や根魚だって大型がメインだ。とはいえ、良型のヒラメほど潮効きに繊細な魚も少ない。食わない日の時合いはまさに刹那、その短いチャンスを取りこぼせば貧果に終わる日だって当然ある。そんなしびれる冬のヒラメ釣り、詳しく解説していこう。
狙えば周年釣れるヒラメではあるが、伊勢湾界隈ではいくぶん食味が落ち、イワシの確保も難しい春夏はシーズンオフと考えていい。関東ではドテラ流しも一般的だが、こちらでは潮、風に船を立てての流し釣りがメインだ。
水深30~80m前後の瀬や人工漁礁周りを狙っていく。ダイレクトに攻めるので、根掛かりには注意が必要だ。突如として現れるベイトの群れに着いた「渡り」のヒラメは大型ぞろいなので、そんな日に当たればラッキーだ。
タックル
準備するタックルは、一般的なヒラメの道具立てで構わない。
ロッド
2~2.7mで、6対4か7対3調子が使いやすい。ヒラメ40信仰の時代は、5体5調子のムーチングロッドも多く見られたが、待てば食い込むわけではない場合が多いので、誘いも自在な前述の調子が最適だ。
個人的にはムーチングロッド大好き派なので、どちらもサオも持参してまずはお土産を確保してから、存分に軟調ロッドの曲がりを堪能したりしている。
リール&ライン
PEラインの1.5~3号が最低200m巻ける小型の電動がベストだ。素早い回収や強力な巻き上げ力は必要ないので、スペックさえ満たせば手巻きでも全く問題ない。PEラインには、リーダーとしてフロロカーボンラインの8号あたりを5mほど結束しておこう。
仕掛け
仕掛けは親バリがチヌの7~8号や丸セイゴの16~17号、孫バリはそのハリをワンサイズ下げたものか、トレブルフックが一般的だ。
イワシが弱りにくいシングル孫バリ、フッキング最優先のトレブルフック孫バリ、好みで選んで使用して構わないが、ブリ、ワラサなどの回遊があるときは、トレブルは避けること。3本のハリが浅く掛かると、簡単に伸ばされてしまうので注意が必要だ。
オモリは船やポイント、海況によって指定号数がまちまちだが、50、60、80号をいくつかずつ用意すれば概ね対応できる。集魚ライトや仕掛けに付ける集寄なども市販されてはいるが、ことヒラメに関しては顕著な効果を見せつけられた経験はなく、潮切りの悪化でオマツリの一因ともなる。仕事をするのはイワシだ。シンプルを心がけよう。
タックル、仕掛け類とも準備すべきものは多くないので、すぐにでも出かけられるはずだ。
エサ付けが最大のキモ
釣り方の説明の前に、一番大事なことを確認しておこう。この釣り……、イワシのエサ付けの上手下手が釣果を決める。後述するが、釣り方にも多少のコツがあるにはあるのだが、何と言ってもイワシを海中で長く暴れさせることができれば、勝手にヒラメは食ってくる。アワセ云々よりもまずはアタリを多く出す、それがキモである。
釣り開始直前に、まずは素手をよく濡らしておき、親指と人差し指で軽くイワシの目をふさぎながらつまみ上げる。手のひらで胴を包み込めば、目を押さえられたイワシはそれほど暴れないはずだ。
その状態で鼻腔を貫く鼻掛けか、口の中から上アゴへ抜く口掛けかで素早く親バリを掛ける。続いて孫バリを背ビレか尻ビレ付近の硬い部分に掛ける。何もない肉に刺すと、特にトレブルフックは抵抗で外れやすいので気をつけたい。
一連の作業を水の中でできれば完璧だが、慣れないうちに手間取って時間をかけてしまうくらいなら、サッと引き上げて短時間で済ませる方が弱らせないだろう。
ウソみたいな話だが、エサ付けで倍は釣果に差が出る。急ぎ過ぎて適当にハリを打ち、回転しながら海底へ……。慎重になり過ぎてイワシを弱らせ落とし込む時点で虫の息……。どちらも釣り座や時合い以前の話だ。難しいが素早く丁寧に!できれば釣れたも同然なのだ。