「世界最大の魚はなに?」と言われたら、皆さんはどの魚を連想されるでしょうか。この質問、定義を少し絞ると、ちょっと意外な魚の名前が登場します。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
世界新記録のマンボウが見つかる
昨年、ポルトガル沖の海で見つかったとある巨大な魚の死骸が世界的な注目を浴びました。
その魚とは「マンボウ」。昨年12月に見つかったものが、これまで見つかったものの中で最大であったとして、ギネス記録に認定されたのです。
そのサイズはまさに規格外の一言。全長は3m以上、腹びれの先端から背びれの先端までが3.6mもあったそうです。4畳半の部屋よりも大きいサイズです。
重さに至ってはなんと2.7t以上。それまでの記録であった、1996年に千葉県鴨川市沖で見つかったマンボウの一種「ウシマンボウ」のものを450kgも上回ったのです。
世界一大きな「硬骨魚」でもある
さて、このマンボウは同時に、世界最大の「硬骨魚」としても記録が認められました。
魚には大きく分けて、エイやサメなどの軟骨魚類と、それ以外の硬骨魚類があります。フグ目に含まれるマンボウは硬骨魚類の一種で、かつ硬骨魚類の中で一番大きな魚は実はマンボウなのです。
以前の世界記録が千葉県沖で採れたものだったことからもわかる通り、日本近海でも度々4畳半の部屋サイズのマンボウが水揚げされます。しばしば定置網に迷い込み水揚げされますが、クレーンで釣りあげられる様子はその形状も相まって魚離れした光景です。
ちなみに、軟骨魚類も含めた世界一大きな魚はサメの一種・ジンベエザメ。その全長は15mを超え、重量は大きすぎて計測されたことがほぼ無いようです。
硬骨魚類だけど「骨は硬くない」
そんな「意外な超巨大魚」であるマンボウですが、その生態は不思議に満ちています。
インターネットではしばしば「マンボウはとても貧弱で臆病な魚」と言われますが、それは誤解です。このような巨体ながら深海まで潜るほどのパワーがあり、意外と素早く泳ぐこともできます。
一方でこれほどまで大きくなるのに、主食はクラゲ類やホヤなど。そのせいか身は水分が多く、筋肉とは思えないほど柔らかいです。知らない人に食べさせたら、魚だと当てることは難しいかもしれません。
そして最もユニークなのはその骨。硬骨魚類とは名ばかりで、まるでナタデココや消しゴムのように柔らかく、半透明の頼りない見た目をしています。この骨でよくあの巨体が支えられるものだと驚かされます。
ちなみにこの骨について、かつては漁村の子どもたちが、その骨を削り出してスーパーボールのようにして遊んだという話も残っています。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>