アジングで釣れるアジは、ショアではマアジが主である。マアジは食性と回遊性により、体色が異なる。釣り方のヒントにもなるので、キアジとクロアジの違いを覚えておきたい。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター井上海生)
主に二種あるマアジの体色
近似種にメアジもいるが、今、沿岸のアジングで釣れるアジといえば、全国的にもほとんどマアジだろう。いろんな場所でマアジを釣っていると、エリアごとに、体色がわりと異なることに気付くはずだ。たとえば、大阪湾メインの筆者が泉南のサーフの澄んだ海で釣るアジは、黒っぽいアジが多い。対して、垂水の湾内や大阪南港で釣れる魚は、キアジが多い。
これは何も水色(すいしょく)が関係しているわけではなくて、アジの回遊性と食性によるものだ。沖合いまで回遊するアジは基本的に小魚を食べており黒っぽく、あまり回遊しない居着きのアジはプランクトンを食べており黄色っぽい。そのハイブリッドみたいなアジも増えているのだが、ここでの分類ではとりあえず、キアジとクロアジの違いを説明する。
キアジとは
まずはキアジ。アーバンアジングでよく釣れる色だ。キアジは別名金アジともいい、背から尾にかけて体色が黄色っぽい。体高も高くなり、よく肥えている特徴も持つ。
キアジはあまり回遊しない居着きと呼ばれる個体ないし群れで、ほとんど特定のポイントに通年着く。なぜ回遊しないかといえば、いろいろな理由があるが、要するにそこで充分な量のベイトを得ることができ、また外敵もそこまで多くないからだ。たとえば河口では、鉱物質のミネラルやプランクトンが流れてきて、ラクに捕食できる。シーバスや一部のボラが外敵にはなるが、大型魚がいても、連中の捕食のスイッチが入っていなければ問題はない。
その他、今、沿岸や近海では漁のためにまきエサされているからだとの説もある。まきエサの残りは波に乗って岸まで漂い、そこにアジが着くわけだ。彼らは回遊する必要がないので、その場でプランクトンパターンの群れとなり、バクバク食べてあまり泳がないので肥える。
なぜ黄色になるのか?
居着きのアジの体色が黄味を帯びるのは、いくつか説があるがはっきりしていない。よく言われるのは、浅場の水色にカモフラージュしやすい色だから、という話だ。水色は関係がないと冒頭で述べたが、水色が零した墨のように滲むわけではなくて、アジの身体が、外敵に見つけられないため、その水色に寄っていくのだと考えることはできる。
クロアジとは
俗にクロアジや、釣り人のあいだでは「セグロ」ともいわれるのは、回遊性の高いベイトフィッシュパターンのアジである。特徴は体色が黒味を帯びている。セグロといわれるだけあり、特に背部分が黒く、また縞模様を描くこともある。
居着きのキアジと違うのは、体長が大きくなりやすいことだ。セグロはよく食べてよく泳ぐ成長型の魚で、最大50cmくらいまでは沖釣りでは頻発する。ここでは分類上、便宜的にベイトフィッシュパターンといっているが、小魚メインとはいえど、マヅメ時には小魚を追ったついでに接岸し、常夜灯下などでプランクトンを食べることもよくある。
クロアジはアジの元の色?
キアジと比較すると確かに黒っぽいアジであるが、まあ、古来(というほど私も歴史を知らないが)アジとはこんな色だったのではないか。外的要因(常夜灯の設置や光を放つ建物の隣接、温排水など)でショアの魚がプランクトンパターンとなったのは比較的近年のことである。よって、スーパーに並んでいるアジがこの魚の「原型」と思われる。