ここ数年、急激に数を増やしている鳥であるカワウ。大きな経済的被害をもたらす「害鳥」としての側面が大きくなっています。
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全国で問題となる「黒い鳥」
皆さんは「迷惑な黒い鳥」といえばなにを想像されますでしょうか。多くの方はきっと、ゴミを漁り、人に危害を加えることもある「カラス」を想像されるのではないかと思います。
しかし近年、人に対して最も大きな被害をもたらしている「黒い鳥」は、もしかするとカラスではないかもしれません。
カラスに代わるその鳥の名は「カワウ」。体長80cmほどの水鳥で、ペリカンとやや近い種類です。身近な都市鳥でもあり、今や全国の水辺で見かけない日はないカワウですが、実はいま最も問題となっている鳥の一つでもあります。
その問題とは、漁業被害です。
漁業の大敵「カワウ」
カワウの特徴は、魚をたくさん食べること。潜水力と遊泳力が高く、1日に500gもの魚を捕まえて食べるといわれています。そのため、養殖されている魚を食べてしまったり、漁業価値の高い種が捕食された結果不漁になってしまうなどの被害が発生してしまっています。
現在カワウは全国に10万羽ほども生息しており、その漁業被害は内水面のアユから海面の養殖魚まで多岐にわたっています。平成20年の漁業被害額は、アユを中心とした内水面漁業だけでも全国で103億円にも登っており、海面漁業も含めるとその被害はかなりの規模になってしまっています。まさに「漁業の大敵」なのです。
カワウはかつては環境破壊により大きく数を減らしたのですが、近年は逆に非常に増えています。河川改修が進み、餌となる魚の隠れ場所がなくなった結果、カワウが餌を取りやすくなったからであるとも言われており、これも一つの環境破壊の形と言えるのかもしれません。
対策は進んでいるのか
カワウは高い移動能力を誇り、1日で直径数十~50kmほどの広い範囲を移動する事が可能です。そのため自治体ごとで漁業被害の対策を行うのは難しく、広域で連携した対策が必要となっています。
例えば内水面漁業の盛んな京都、滋賀を含む関西広域連合では、カワウの個体数調査や効果的な対策の情報共有を図っています。カワウのねぐらを把握し、捕獲数を増やして個体数抑制につなげる狙いがあります。
また環境省でも、カワウを鳥獣保護法に基づく狩猟鳥に指定しており、狩猟による繁殖抑制を狙っています。2014年には、カワウの個体数を2023年度までに半減させる目標を設定するなど、様々な方面から対策が進められているのです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>