丸ごと食べられる「骨なしコイ」開発が話題 魚食離れの切り札に期待?

丸ごと食べられる「骨なしコイ」開発が話題 魚食離れの切り札に期待?

魚という食材における一番のハードル「骨」。魚の骨は古くから様々な手段で処理されてきましたが、その最終手段とも言える方法が開発されました。

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サカナ研究所 その他

「骨なし魚」が開発

このたび、滋賀県の大学で開発された「骨なし魚」が大きな話題となっています。滋賀県立大学の教授が開発したこの骨なし魚、厳密には「骨がない」わけではないのですが、なんとすべての骨が軟らかく、丸ごと食べることができるそうです。

コイの骨が軟らかく

教授は淡水魚の養殖企業で餌の開発などを行った経歴を持ち、現在も魚の餌を中心に研究を行っています。その研究の中で、リンという成分の含有量を少なくした特別な配合飼料を2~3カ月与えると、コイの骨が軟らかくなることを発見したのだそうです。

丸ごと食べられる「骨なしコイ」開発が話題 魚食離れの切り札に期待?コイが骨なしに!?(提供:PhotoAC)

リンは生き物の成長に必須の栄養素で、カルシウムの結合を促進する働きがあるため、リン含有率を少なくすることで骨が柔らかくなるのかもしれません。

食味もアップ?

またリンの少ない餌を与えることで、魚の脂ののりが良くなり、副次的に食味が良くなるということも判明したそうです。これは海水魚にも効果があったそうで、今後より一般的な技術となっていくかもしれません。(『滋賀県立大が骨やわらかく食べやすい「骨なし魚」開発』みなと新聞 2021.8.12)

「骨なし魚」開発の背景

世界屈指の魚の消費量を誇る我が国ですが、その一方でかねてより「魚食離れ」が進んでいることも指摘されています。魚の消費量は1988年をピークに右肩下がりで、現在はその6割程度しかありません。

これには食生活の欧風化という要因もありますが、そもそも魚という食材を敬遠する考えが若い世代を中心に強くなっています。ただし、寿司や刺身は人気が高いため、魚という食材そのものの人気が下がっているわけではありません。

丸ごと食べられる「骨なしコイ」開発が話題 魚食離れの切り札に期待?魚が嫌いなのではなく「骨が嫌い」(提供:PhotoAC)

若者は骨が嫌い?

実は若い世代を対象としたアンケートでも、魚が嫌いな理由が「骨」にあることがはっきりしています。これは食べる側だけの問題ではなく、調理をする側にとっても、骨の処理が面倒で手が伸びないという声があります。

上記の骨なし魚の開発に当たり、教授は「食べにくいとされる骨まで食べやすくすることが、魚の消費量を回復させる上で必要なのではないか」と考えたそうです。実際に、「骨なし魚」にしたコイを学生に試食してもらうと、「通常より食べやすくおいしい」という評価を得られたといいます。  

色々ある「魚の骨」対策

魚好きにとっても厄介な存在であると言える骨。我が国でも、古くから魚の骨を食べやすくする試みが様々な形で行われてきました。

長時間加熱

骨をどうにかする上で最もポピュラーな方法は「長時間加熱」すること。長時間加熱すると、骨の主成分のひとつであるコラーゲンが溶け出し、柔らかくなります。長時間の煮炊きを行う他、揚げることや圧力調理など「高温短時間」の調理スタイルも活用されています。

酢漬け

別の方向では「酢漬け」もポピュラーな手段だと言えるでしょう。酢の主成分である酢酸が、骨の主要無機成分であるリン酸カルシウムを溶出させ、骨をもろくさせます。日本だけでなく、欧米においても「マリネ」という調理でこの手段が用いられています。

丸ごと食べられる「骨なしコイ」開発が話題 魚食離れの切り札に期待?骨せんべい(提供:PhotoAC)

物理的に抜く

更に、工業的になりますが「物理的に骨を取り除く」手段も存在します。これは簡単に言うと「三枚におろした魚を一旦冷凍して解凍し、身を柔らかくした後ピンセットで小骨を切除し、結着剤で割れ目を塞ぐ」というもの。他の方法と違い、骨を完全に除去できるため、老人など嚥下力が落ちた人でも喉に骨を刺す危険性がなく、介護の現場からも需要が高いそうです。

カルシウムは大事

ただし、魚の骨に含まれるカルシウムは、子供の成長や、我々の健康寿命を伸ばすためには欠かせない存在でもあります。厄介だからといって無下にしすぎないこともまた、骨をどうにかするのと同じくらい大切なことかもしれません。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>