コロナ禍が続いていますが、今年も潮干狩りのシーズンがスタートしました。潮干狩りターゲットといえばアサリやハマグリなどの二枚貝ですが、どこの砂浜にもいる「美味しい巻き貝」についてご存じの方はいるでしょうか。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
潮干狩りシーズン到来
東京湾に鋭く突き出る「富津岬」を擁し、広大な干潟の広がる千葉県富津市。その富津海岸で3月6日、今季初の潮干狩り場がオープンしました。初日は約300人が訪れ、潮の引いた海岸にはアサリやハマグリを掘る人々の歓声が響きました。
来場者にはサービスとしてアサリのみそ汁が無料で振る舞われ、富津名産の生ノリの摘み取り体験などのイベントも合わせて開催。また、今シーズンの無事を願って神事が執り行われました。
緊急事態宣言の再延長により、21日までは休業となる予定ですが、8月27日までの期間中に約15万人の人出を見込んでいます。千葉県の東京湾側には他にも木更津市の木更津、江川、牛込、久津間、金田などの潮干狩り場があり、4月にかけ続々とオープンする予定となっています。(『潮干狩りオープンも…緊急事態宣言再延長で7日から休業』毎日新聞 2021.3.6)
「無料」と「有料」の違い
奥深い内湾で、開発が進んだ現在でも広大な干潟の残る東京湾沿岸には、たくさんの潮干狩り場があります。ただ、千葉県側の潮干狩り場は有料の場所が多いのに対し、神奈川県側は「アサリ等持ち帰り量の上限」はあるものの、無料の場所が目立つ印象です。
実は有料の潮干狩り場は、その周辺一帯にアサリやハマグリの漁業権が定められています。その一部を有料で一般人に公開しているという形をとっており、潮干狩り場ではない場所で潮干狩りを行うと「密漁」で罰せられてしまう可能性があります。
一方、有料潮干狩り場では養殖されたアサリやハマグリを漁協があらかじめ蒔いているため、潮干狩り初心者でもたくさんの収穫を楽しむことができます。無料の場所は天然の貝しかいないため、特に人気の高いアサリについては残念ながら絶滅状態のところも多いです。そのためそういう場所で潮干狩りをする際は、アサリやハマグリにこだわらず、バカガイやシオフキガイ、ホンビノスガイなどの他の貝もターゲットに入れておくのが無難でしょう。
アサリの天敵「ツメタガイ」
さて、潮干狩りのターゲットと言うと、基本的には「二枚貝」だと思っている方がほとんどだと思います。しかし、二枚貝が多い干潟には、それを捕食する肉食性の巻貝も棲息しており、場所によってはそれらの貝もターゲットとなりえます。
このような「肉食性二枚貝」の中で有名なのが「アカニシ」と「ツメタガイ」。アカニシはサザエの代用として食用にされることも多い食用種ですが、ツメタガイは現状利用されることはほぼなく、捨てられてしまうことが多いです。
ツメタガイは殻の中に砂を噛んでいることが多い、身に強いヌメリがある、加熱すると固くなるなどの理由から「食べられない」と思われているようです。しかし実は身の味そのものはなかなかよく、一度茹でてから身を取り出して洗い、じっくり煮ると美味しく食べることができます。
棲息する場所には彼らの卵嚢である「砂茶碗」が残されているため、見つけたら周囲を掘ってみるのも面白いかもしれません。つるつるした丸っこい巻き貝は見つけやすく、ときにたくさん見つけることも可能。近縁でそっくりな外来種のサキグロタマツメタも美味しく食べられます。
これらのツメタガイは、ときに有料潮干狩り場で大発生し、せっかく蒔いたアサリを食べ尽くしてしまうことがあります。そんなときは会場から駆除の呼びかけが行われることも。見つけたら進んで食べるのがオススメです!
<脇本 哲朗/サカナ研究所>