一年中手頃な価格でスーパーの店頭に並ぶイワシ。いつでも美味しく感じられますが、一体「旬」はいつなのでしょうか?
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静岡でマイワシが豊漁
山が海に迫る地形が特徴的な静岡県の伊豆半島。ここではその地形を生かし、定置網漁が盛んとなっています。
そんな伊豆半島の東岸にあり、地域漁業の中心となっている伊東の定置網では、2月よりマイワシの豊漁が続いており、ホットなニュースとなっています。昨年末から今年はじめにかけて不漁が続いていたこともあり、伊東港の魚市場関係者は胸をなでおろしているそうです。
静岡県定置漁業協会によると、2月1日の48tを皮切りに、7日まで連日20~50tほどのマイワシが定置網に入ったといいます。(『マイワシ豊漁 伊東魚市場、久々に活気』静岡新聞 2021.2.21)
家計の味方イワシ
いとう漁協によると、今回のマイワシは脂の乗りが良い上物。「大羽イワシ」と呼ばれる大ぶりのものは刺身用などの鮮魚として、1kg400~700円ほどの価格で取引されているとのことです。
この価格はマイワシとしてはまあまあの値付けですが、これが小売の状態になっても1パック300~400円程度なので、鮮魚としてはとても買いやすい価格です。味もよく、調理もしやすく、様々な料理にできるイワシはまさに家計の味方と言える存在でしょう。
また、青魚の代表であるイワシは、必須脂肪酸として知られ、脳の働きを良くすると言われるDHAやEPAを豊富に含んでいます。ビタミンDとカルシウムに富んでいることもあり、子供の成長には欠かせない食材です。
イワシの旬っていつ?
さて、普段から自分で鮮魚を購入される方なら、イワシ類が一年中鮮魚コーナーに並んでいるのを見たことがあるのではないかと思います。鮮魚店で「イワシの旬っていつなんですか?」と聞いても、あまり要領を得ない返答だったり「一年中うまいから一年中旬だよ!」なんて開き直った答えが返ってくることもしばしば。
イワシの旬が曖昧な理由のひとつに「イワシの旬は利用目的によって変わる」と言うことが挙げられます。地域によって多少の差はありますが、一般的に「脂が乗り刺し身が最も美味しくなる」とされるのは、産卵を控えて脂の乗る春から初夏にかけての「入梅鰯」と呼ばれるものです。また、寒い時期を控えて盛んに餌を追う晩夏から秋にかけてのものも、入梅鰯ほどではないですが脂が乗っています。
しかし、このような脂の乗ったイワシは、昔ながらの干物や「目刺し」にすると脂が酸化してしまうため美味しくありません。そのため「イワシといえば干物!」という世代にとっては、脂の少ない冬のものこそ旬のイワシである、という考え方になるのです。
そう考えると本当に「一年中が旬である」と言えるようにも思えますが、唯一そうと言いきれない時期があります。それは「産卵直後」、関東周辺では真夏ごろにあたります。この時期のマイワシは脂もなく身も痩せて水っぽくなっており、刺し身にしても干物にしても美味しいとは言い難いのです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>