外来魚「ヨーロッパウナギ」が貴重なマスを食い荒らす? 西湖で問題に

外来魚「ヨーロッパウナギ」が貴重なマスを食い荒らす? 西湖で問題に

富士五湖のひとつ西湖で、とある外来魚が問題視されています。しかしなぜこの閉鎖された水域に外来種が入り込んだのでしょう?

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

TSURINEWS編集部

その他 サカナ研究所

富士五湖のクニマス

富士山の麓にある世界遺産の構成資産・富士五湖。その中のひとつ西湖には、日本でここだけに棲息する貴重なマス「クニマス」が棲息しています。

外来魚「ヨーロッパウナギ」が貴重なマスを食い荒らす? 西湖で問題に西湖と富士山(提供:PhotoAC)

クニマスはもともとは秋田県の田沢湖にのみ棲息していたのですが、1935年に西湖に移入され、その後田沢湖の個体群が絶滅してしまったことから、現在では西湖にしか存在していません。西湖漁協組合ではこの貴重な魚を保護するため、禁猟区を設定するなどの活動に取り組んでいます。

しかし近年、とある外来種の魚によってこのクニマスという種に危機が発生していることが判明しました。その外来生物とはなんと「ウナギ」です。

外来ウナギがマスの「卵」を食う

西湖で問題となっているのは「ヨーロッパウナギ」という種のウナギ。名前の通りヨーロッパ原産の種で、日本にはもともと棲息していません。

ヨーロッパウナギの分布域は北欧にまで広がっており、日本のウナギ(ニホンウナギ)よりも低水温に耐えることができそうです。そのため、標高が高く水温の低い西湖の環境にも適応してしまい、在来生物を活発に捕食します。

クニマスは西湖の水深40~50mほど、水温5℃前後の場所で産卵を行うと考えられているのですが、そのような環境はヨーロッパウナギにとっても摂食に最適だといい、彼らが貴重なクニマスの卵を食い荒らしてしまっていると見られているのです。

なぜ日本にヨーロッパウナギが?

しかし、ヨーロッパにしか棲息しないウナギがなぜ日本に入ってきているのでしょうか。

ヨーロッパウナギは種類こそ異なるものの、見た目はニホンウナギそっくりで味も近く、蒲焼きにすると違いがわかりません。そのため乱獲によってニホンウナギが激減した現代に、代用品としてその稚魚が盛んに輸入されたのです。

外来魚「ヨーロッパウナギ」が貴重なマスを食い荒らす? 西湖で問題にヨーロッパウナギとニホンウナギの区別は難しい(提供:PhotoAC)

稚魚は養殖されるだけでなく、ニホンウナギの漁獲減を補うために盛んに放流されました。西湖でも、釣り対象魚として人気の高いウナギの稚魚を毎年放流しており、かつてその中にヨーロッパウナギが含まれていたと思われます。ヨーロッパウナギも他の外来種同様、日本人のためにヨーロッパから連れてこられた魚たちなのです。

ヨーロッパウナギも絶滅危惧種

そして、日本人の口に入れるために乱獲されたことも影響し、現在ではヨーロッパウナギも絶滅危惧種となってしまっています。日本人のウナギ好きが世界の環境に悪影響を及ぼしてしまっている、非常に残念な一面がここにはあります。

外来魚「ヨーロッパウナギ」が貴重なマスを食い荒らす? 西湖で問題にバスク名物「シラスウナギのアヒージョ」(提供:茸本朗)

考えてみればクニマスも人間の都合で西湖に移入されたもの。西湖で起こっていることは「人間がよそから移入した魚が偶然貴重な存在となったが、人間が移入した別の魚によって食い荒らされ、再び種の危機を迎えている」ということであり、少なくともこの件について「ヨーロッパウナギが悪い!」と断罪する権利は我々人間にはないでしょう。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>

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