水族館で「節分」にちなんだフグが展示 フグはそもそも「福」だった?

水族館で「節分」にちなんだフグが展示 フグはそもそも「福」だった?

岐阜県の水族館で「鬼と福」にちなんだ「カエルとフグ」の展示が開始。ただのダジャレのようにも思えますが、そもそもフグは「ふく=福」が正しいという考え方もあります。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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「節分」にちなんだフグ

岐阜県にある世界最大の淡水魚・淡水生物水族館「アクア・トトぎふ」。ここで、2月2日の節分を前に「赤鬼と福」にちなんだ淡水生物の展示が始まり、話題となっています。

「赤鬼」に例えられたのは、全身が淡いピンク色で、頭部に角状の突起がある「ストロベリーツノガエル」。クランウェルツノガエルというカエルを改良して作られた、ペットとして人気の高い種類です。

水族館で「節分」にちなんだフグが展示 フグはそもそも「福」だった?淡水に生息するフグは多い(画像はアベニーパファーではありません)(提供:PhotoAC)

そして「福」に例えられたのは、インドに生息する世界最小の淡水フグ「アベニーパファー」。小さな鰭を懸命に動かし水中をホバリングする様子が可愛らしく、こちらも人気のペットとなっているそうです。

37年ぶりに2月2日となった今年の節分をはさみ、2月14日まで展示されるとのことです。(『節分は邪気を払って幸せな一年に 鬼は~カエル、福は~フグ』アクア・トトぎふニュースリリース 2021.1.13)

フグは「福」に通じる

さて、見ようによっては確かに「赤鬼」に見えるストロベリーツノガエルに対し、フグを「福」になぞらえるのは「なんだ、ダジャレかよ」と思う人もいるかもしれません。

しかし、実際のところ我が国の多くの地域で、フグを「ふく」と濁らずに発音することがあります。

水族館で「節分」にちなんだフグが展示 フグはそもそも「福」だった?下関の“ふく”刺し(提供:PhotoAC)

なかでも有名なのは日本最大のフグ卸売市場を抱える山口県下関市。街なかには「ふく料理」という看板を下げた料理店が数多く見られ、「ふく刺し」や「ふくちり」などの名物料理が楽しめます。この他、下関駅の名物にもなっている「ふくめし弁当」という駅弁も有名。気軽に楽しめる「ふく料理」として人気になっています。

下関を始め、中国地方の「ふく」と呼ぶ地域では「フグ」が「不遇」「不具」につながるとして敬遠し、「福」につながる「ふく」の発音を今でも大事にしているのだといいます。

そもそもフグは「ふく」だった

「フグ」という魚の名前は、彼らが的に襲われたときに大きく「ふくれる」ことから来ている、という説が一般的です。そのため江戸時代にはフクとよび「布久」などの漢字を当てるのが一般的だったといわれています。

しかしある時から、関東地方周辺で「ふぐ」と濁って発音されるようになり、それが一般的な呼び方として定着、やがてそれが全国に広まったと考えられています。もともとは「ふく」のほうが正しい呼び方だった可能性は高いのです。

水族館で「節分」にちなんだフグが展示 フグはそもそも「福」だった?福を呼ぶ存在として尊ばれるフグ(提供:PhotoAC)

ちなみに漢字の「河豚」は中国語に由来します。当地には河川を遡上するタイプのフグが多く、フグは川の魚と認識されていたそうです(日本にも、クサフグやシマフグのように河川によく入り込むフグがいます)。また「豚」の字は「豚のようにふくれる」ことから、あるいは捕獲されると「豚のようにグウグウと鳴く」ことから当てられたそうです。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>