冬の日本海を代表する海の幸・ハタハタ。どうやって食べても美味しい魚ですが、生食はちょっと気をつけたほうが良いかもしれません。
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秋田でハタハタ漁の最盛期
秋田県で最も愛されるサカナといえば、やはりハタハタ。県魚にも指定されており、これがないと年を越せないとまで言われるほどの存在です。
秋田県の日本海沿岸では、11月の終わりから1月にかけてハタハタが漁獲されており「季節ハタハタ漁」と呼ばれています。昭和末期に壊滅的な不漁となり、度重なる禁漁処置などで危機を乗り越えてきた季節ハタハタ漁ですが、今年はシーズンになってもなかなか漁獲量が増えず、心配されていました。
しかし12月に入り徐々に本格化し、ハタハタ漁の特に盛んな秋田県八峰町ではハタハタの直売会も開催され、その賑わいがニュースにもなりました。直売所は本格的な接岸を待ちわびていた人でにぎわい、大量に購入する人もいたそうです。(『季節ハタハタ漁が本格化 直売会は即完売』秋田放送 2020.12.17)
「子持ちハタハタ」が旬
秋田では12月から1月にかけてが旬とされ、漁獲もこの時期だけとなるハタハタ。この時期は「ブリコ」と呼ばれる卵巣が大きくなり、その味が尊ばれます。そのため、特にメスが珍重されます。
一方で、秋田と並んで我が国でのハタハタの主要産地となっている島根・鳥取では、その漁期は9~翌5月までとかなり長くなっています。旬に関しても3~5月、春から初夏にかけてと、秋田とはかなりずれています。
これはそれぞれのハタハタの生態が異なるため……というわけではありません。実は山陰では、ハタハタの魅力はブリコよりも本体、脂の乗った身そのものだと考えられているのです。そのため産卵後、体力が回復し脂がしっかり乗った3~5月頃が旬となるのです。
生食は注意
ハタハタは全国的にはやはり「卵の美味しさ」で知られていますが、弾力があり身質の良い白身も大変美味です。脂が乗った個体は「酢じめ」で食べられることもあります。
身に水分が多いため足の早い魚ではありますが、水揚げされたばかりの個体であれば刺身で食べられることもあります。しかし、生食に関しては、他の魚と比べ若干「寄生虫のリスクが高い」という一面があり、注意が必要です。
北方系で動物プランクトンを食べる魚であるハタハタは、他の魚同様にアニサキスが寄生している可能性があります。また、それだけでなく「旋尾線虫」という危険な寄生虫に寄生されていることもあるそうです。旋尾線虫はアニサキスより遥かに小さいため目視確認は困難な上、人体に入るとときに劇症的な腸閉塞を起こすこともあります。
旋尾線虫はアニサキスのように内臓から筋肉に移行することはあまりないようで、新鮮なうちに内臓を除去しておけば感染のリスクは低くなるとされています。それでもリスクを犯したくないという人は、ハタハタの生食は避けたほうが無難でしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>