深海魚や未利用魚の「ハンバーガー」が人気のワケ 調理法がポイント?

深海魚や未利用魚の「ハンバーガー」が人気のワケ 調理法がポイント?

漁獲されるにも関わらず利用されない魚「未利用魚」。近年、この未利用魚が「ハンバーガー」として活用されるケースが増えているようです。

(アイキャッチ画像提供:野食ハンマープライス)

アバター画像 TSURINEWS編集部

その他 サカナ研究所

鹿児島のユニークな深海魚PR

「食を通じて海の問題を考える」ことを目的とし、日本財団が行っている「トトタベローネ」という取り組みがあります。そのひとつである「トトタベローネ桜島」に関連して提供されている料理が話題になっています。

それは「桜島美味深海(おいしんかい)バーガー」。鹿児島湾(錦江湾)で漁獲される未利用深海魚を利用して作られたオリジナルメニューで、連携する鹿児島市内の飲食店9店舗で提供されています。

深海魚や未利用魚の「ハンバーガー」が人気のワケ 調理法がポイント?深海は未利用魚の宝庫(提供:野食ハンマープライス)

錦江湾では様々な種類の深海魚が漁獲されますが、選別に手間がかかることや流通の仕組みがないため、そのほとんどが捨てられているといいます。未利用魚に新たな価値が見出されることが目的で作られたのがこの桜島美味深海バーガーなのです。(『トトタベローネ桜島 アンバサダーが深海魚メニューPR』KKB 2020.10.31)

各地の「未利用魚バーガー」

実は「未利用魚バーガー」が他の地域にも存在していることをご存知でしょうか。

先述の「海と日本プロジェクト」では、京都市内の小学生が海について学ぶ「海の京都調査隊」というものも開催しており、そこでは小学生たちが未利用魚を用いたオリジナルバーガーづくりに挑戦しています。日頃は食べる機会の少ないサメやエソを食材にしたバーガーづくりを通じ、海洋資源を生かす大切さを実感したそうです。(『「初めてサメを食べた」 低利用資源の魚をハンバーガーに、児童らが海を学ぶ』京都新聞 2020.11.2)

そして実はこれら以外にも、未利用魚を「バーガー」にするという試みが全国各地で行われています。

深海魚や未利用魚の「ハンバーガー」が人気のワケ 調理法がポイント?バーガーの材料になる深海ザメ(提供:野食ハンマープライス)

深海魚漁が盛んな静岡県沼津では、市場近くの飲食店で「深海ザメバーガー」が提供されています。深海漁で混獲されるエドアブラザメを用いたもので、ふっくらとしてジューシーな味わいが美味でした。

ほかには、茨城県行方市のご当地グルメとして知られる「行方バーガー」の中にも、市内の霞ヶ浦で漁獲される外来魚・チャネルキャットフィッシュ(アメリカナマズ)を用いた例がありました。

琵琶湖周辺ではブラックバスを用いたバーガーもあるという話もあり、ハンバーガーは今や未利用魚の最もポピュラーな活用法であると言えるかもしれません。

なぜ「バーガー」なのか

未利用魚はそれぞれに「利用されない」理由が存在しています。それは例えば「匂いが強い」ことだったり、あるいは「サイズが小さい」「肉質が悪い」「見た目が悪い」といった特徴だったりします。

これらのデメリットはしかし「ハンバーガー」にすることで解消できるものが多くあります。フィッシュバーガーは「衣をつけ、油で揚げ、バンズに挟む」という工程がありますが、香りの強さや肉質の悪さは揚げることで軽減させることができますし、見た目の悪いものやサイズの小さなものについてはミンチにしてしまうという手があります。

深海魚や未利用魚の「ハンバーガー」が人気のワケ 調理法がポイント?バーガーという料理には集客力がある(提供:野食ハンマープライス)

これに加え「ハンバーガー」という料理には「気軽に食べられる」「食べ歩きにも良い」というイメージがあり、観光資源としても最適だといえます。これらの点が、未利用魚がハンバガーに加工される理由と言えるのではないでしょうか。

未利用魚による町おこしは各地で盛んに開催されており、今後も「未利用魚バーガー」は増えていくものと考えます。新型コロナウイルスによる外出自粛が落ち着いた暁には、このような「未利用魚バーガー」を巡る旅などしても面白いかもしれません。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>