今日の問診票
直射日光、海面からの照り返し、風がない日の蒸し暑さ。さらに寝不足、疲れが重なると、楽しいはずの沖釣りを楽しむことができません。今回は、熱中症の予防や処置についてアドバイスをお願いします。
(アイキャッチ画像提供:WEBライター・近藤惣一郎)
診断結果
沖釣りは「船上」という特殊な環境にある分、熱中症のリスクも高く、応急処置や救急要請も陸上に比べて難しくなることを理解し、正しい対策をとるようにしましょう。
処方箋
薄手で汗を素早く蒸発させる速乾素材の服装、冷したタオルや冷たい食べ物を準備して沖釣りに向かいましょう。定期的な休息、こまめな水分と塩分の補給、暑さに備えた体作りも欠かせません。
熱中症とは
熱中症は、暑さで意識を失い倒れてしまうことで、日頃元気な自分には関係ないと考える人が多いと思います。しかし、暑い日に喉の渇きと共に、立ちくらみや体のだるさ、イライラ感、頭痛を感じる時がありますよね。
これは紛れもなく熱中症のサインです。早めの対処を怠ると、誰でも「虚脱感」から「意識障害」といった重篤な状態になりえるのです。
沖釣りの熱中症リスク
「船上」という特殊な環境で半日から1日行われる沖釣りには、熱中症のリスクがつきものです。日陰での休憩や飲食、トイレでの排泄、衣類の脱着など、陸上や建物の中など日常なら自由に行えることが、船上では制限を受けます。
さらに、カンカン照りや、蒸し暑さ、波が高い日の揺れ、寝不足が加わるとより厳しい環境になり、釣り初心者や高齢者、子供なら尚更大変です。万が一熱中症になってしまった場合の応急処置や救急要請も、陸上に比べ船上ではなにかと難しくなるのです。
熱中症防止対策
だからこそ無防備、無計画にこの時期、釣行することは危険で、当日までの体調管理に加え、脱水や電解質異常にならないための飲物・食物の摂り方や暑さから身を守る知識に基づいた船上での計画的な熱中症対策の備えが必要になるのです。
対策の基本
水分とナトリウム(塩分)が補給できる十分量の飲物、体温を下げる冷タオルや氷・冷たい食物などは欠かせません。船上では日陰や風通しの良い場所で、定期的な休憩をとるべきです。
釣り前日の多量飲酒は勿論避け、睡眠を十分とることは原則。日頃屋外に出る機会が少ない人は、数日前から早起きと併せ、30分程度のジョギングを行い汗をかくことで、身体が暑さに慣れてきます(暑熱順化)。
服装
風通しが良く熱を逃がし、汗を速乾させる服装が必要です。ウェアに関しては、最近は太陽光を直接肌に浴びることによるシミやシワなど皮膚の紫外線障害を予防する啓蒙が拡がり、半袖シャツや半ズボンの下に、速乾性、ストレッチ性のアンダーを着用するスタイルの釣り人が多くなりました。
肌に密着するこの種のウエアは、汗で濡れても風にあたると汗が蒸発する際に効率よく気化熱を奪い、素肌の時よりも体温低下作用が大きくなって涼しさを感じる事ができます。
首の後ろは要注意
見た目も爽やかで快適ですが落とし穴があります。それは首の後ろ(後頸部)が直射日光にさらされやすいということです。この部分は頭部を支える筋肉があり、そのすぐ下には脳に血液を送る太い椎骨動脈、そして頸髄があります。この部分が灼熱にさらされると脳の温度も上がり、体力も消耗、熱中症の危険が高まります。Tシャツよりは襟が立てられるポロシャツやフード付きのものがよいです。私が夏でもジャケットを着用している1つの理由はここにあります。タオルを首に巻いたり専用の冷却クールダウンアイテムを活用するのも良いですね。
正しい水分補給法
次に、「正しい水分補給法」について解説しましょう。
「早め」「こまめ」がキーワード
飲料の摂り方は早め早めが原則。喉の渇き、身体のだるさは、脱水症を知らせているサイン。立ちくらみやクラクラ感、身体の火照りを感じた時点から飲み始めるようでは遅いのです。釣り座周りにボトルを置くか、専用ケースで身につけて、喉の渇きを感じたら一回あたり50mlほどを、まめに、ちょこちょこ飲みましょう(一度に300ml以上は飲まない)。トイレが近くなることを気にして飲まないことは危険です。スポーツ飲料は血液、体液のバランスを最適に補正するので、真水やお茶と違い、汗をかく環境では、尿量を増やしません。
飲物は5~15℃が適温
また、冷たい飲料はお腹が冷えて身体に悪いと思われがちですが、熱中症対策に適した飲物は5~15℃。冷水は胃に留まる時間が短く、速やかに小腸に移動し、吸収されます。口もとから胃、腸を冷やせば深部から体がクールダウン、精神的、気分的にも爽快感が得られます。冷温を長時間保てるハイドレーションボトルや保冷機能が備わったボトルケースを活用することをお勧めします。