ホタテの国内生産事情 「養殖」「天然」の他に「純天然」が存在?

ホタテの国内生産事情 「養殖」「天然」の他に「純天然」が存在?

カキと並び重要な養殖品であるホタテガイ。じつは純天然物はほとんどなく、栽培漁業で放流されたものを「天然」として扱うことが多いのですが、味は純天然物に負けないそうです。養殖物との違いを解説します。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

TSURINEWS編集部 TSURINEWS編集部

その他 サカナ研究所

日本人が大好きな「ホタテガイ」

日本人が最も食べる魚介類は何でしょうか。可食部分だけで考えると難しいですが、生産量ベースで考えると「ホタテガイ」がそれに当たるかも知れません。

ホタテの国内生産事情 「養殖」「天然」の他に「純天然」が存在?ホタテガイの網焼き(提供:PhotoAC)

ホタテガイの総生産量は55万t弱ほどもあり、これは海面漁業の総生産量の10分の1強を占めます。養殖量も20万tを超え、魚介類の中ではノリ、カキと並び大きく突出しています。(『養殖業の現状と課題について』水産庁 2013.2)

料理のジャンルを問わず利用されることや、1個体の体積が大きいことがこの理由と考えられますが、それだけの量を我々日本人が消費していると考えるとなかなかすごいことのように思いますね。

「天然もの」と「純天然もの」

上記の通り、総生産量の4割程度が養殖物となっているホタテガイ。天然物の割合が高いことから資源量が豊富なようにも感じますが、実際のところ「純天然物」については他の魚介類同様、漁獲量は減っていると考えられます。

実は「天然物」と呼ばれるものの多くは、ある程度のサイズに育てた稚貝を自然環境下に放流し、成長してから漁獲したもの。このような栽培物のホタテは「地撒き」物と呼ばれており、北海道で漁獲されるものの多くはこれに当たります。地撒き物は、純天然物と同様に自由に動き回ることができるため、貝柱が太く味も濃いとされ、主に剥き身で流通します。

ホタテの国内生産事情 「養殖」「天然」の他に「純天然」が存在?天然物の魅力は貝柱の太さ(提供:PhotoAC)

一方で、国内最大のホタテガイ水揚げ高を誇る青森県むつ湾では、養殖が盛んに行われています。かごに入れて海面下に下げる「垂下方式」や、殻に穴を開けて紐で吊るして育てる「吊るし方式」などが一般的です。こちらはその様式上、体内に砂を噛むことがなく、丸のまま流通させる場合には向いていると言われます。(『ホタテは養殖方法で用途が分かれるってホント?』「海といのちの未来をつくる」 2019.10)

養殖物と地撒き物の見分け方

このように、養殖物と天然物(地撒き物)は用途によって使い分けられ、流通の時点で形状が違うことが多いです。ただもし殻ごと入手できたような場合は、外見で見分けがついたほうが利便性が増すと言えるでしょう。

養殖物と天然物では、殻の表面に違いが現れます。ホタテガイは本来、貝の中では圧倒的に動き回る性質を持つもの。そのため地撒き物も自然環境下で活発に動き、結果として殻の表面がツルッとして付着物が少なくなるそうです。

ホタテの国内生産事情 「養殖」「天然」の他に「純天然」が存在?天然物のホタテガイ(提供:PhotoAC)

一方で養殖物はあまり動き回ることができないため、殻の表面に他の生物や藻類が付着することが多いそうです。(『ホタテ貝 天然物と養殖物の違い』魚之七寶HP 2015.4)アワビなど、多くの貝では養殖物のほうが殻の表面の付着物が少ないことが多いのですが、ホタテガイに関しては逆なのですね。

ホタテの国内生産事情 「養殖」「天然」の他に「純天然」が存在?養殖物のホタテガイ(提供:PhotoAC)

なお、吊るし方式で養殖されたものは、殻の蝶番のところに紐が残っているので、それで判別するのが一番容易でしょう。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>

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