夏場には必携のクーラーボックスだが、中を冷やすための氷や保冷剤は必要だ。今回はそんな保冷剤の扱いについて紹介したい。
(アイキャッチ画像撮影:TSURINEWS関西編集部・松村計吾)
保冷剤の正体
保冷剤といえば、冷蔵をキープしたい洋菓子や和菓子などを購入すると、「移動は何時間くらいですか?」と質問されて、その時間に合わせて大きさの違う保冷剤を入れてくれるサービスを思い出す人も多いはず。
氷のように硬くなっている保冷剤も、外装がソフトなタイプだと数時間で解凍して、グニャグニャでジェルのような硬さになる。そう、保冷剤はただの氷ではないのだ。
実は保冷剤の中身は高吸収性ポリマーといわれる素材に水を吸収させたもの。吸収性ポリマーとは身近な物でいうと、紙おむつなどに使われ水分を多く吸収できる素材だ。保冷剤の中で、水を吸収させた素材を凍らせることで、普通の氷よりも溶けにくくなっている。
保冷剤の種類
保冷剤使用のメリットとして挙げられるのは、高吸水性ポリマーの利用で同じ体積なら、氷よりも保冷時間が長く持つこと。そして、何度も繰り返し使える点だろう。氷は通常ビニール袋などに入れられているが、冷解凍を繰り返すうちに中の水がなくなってきて痩せ細ってしまう。
保冷剤といってもその種類はけっこうある。筆者の近所にある100均ショップを覗いただけでも、その形状、大きさなど特徴を違えた保冷剤が並んでいる。特にこれからの夏場には需要が増えるので、その種類も豊富なのだ。
ソフト&ハード
保冷剤は凍っている時にはもちろん氷同様、カチカチである。高吸収ポリマーを使っているとはいえ、ほとんどが水分なので氷と同じく硬いのは当然だ。
まず、目に見えて違うのは、保冷剤を入れるもの。プラスチックやポリエチレン製の硬い容器に入ったハードタイプと、水漏れがしないビニールのようなパッケージに入っているソフトタイプに分かれる。
釣りの場合は、本来は魚の棘や釣りバリなど尖ったものをクーラーボックスに放り込みがちなので、穴の開きやすいソフトタイプよりもガッチリとしたハードタイプが長持ちする。
保冷剤の大きさ
氷同様、保冷剤も大きい方が保冷力が長持ちするが、その分スペースも取る。100均ショップでも大きさの違った保冷剤が揃っていて、内容量が500gとか、1kgなんて具体的な数値で大きさを表記しているので分かりやすい。もちろん、大型の方が価格が高いこともあるので、まずは自分が使う容器の大きさなどを考慮して購入しよう。
保冷温度の差
以前、あるメーカーからマイナス16度となる保冷剤が発売されて、アイスクリームも溶けずにキープできると注目を浴び、現在も便利な野外用のアイテムとなっている。そこまで低い温度ではなくても、最近の100均ショップにはマイナス10度で冷やせる保冷剤もあるなど進歩は止まらない。
ただし、温度が低ければ良いという物ではない。魚を入れた時、あまりに保冷剤の温度が低すぎて凍ってしまう。また、夏場に食材が傷むのを防止するためにクーラーボックスに入れたおにぎりやお弁当がが凍ってしまっていたなんて事態はさすがに避けたい。そんな時には通常の0度タイプの保冷剤を使用する。保冷剤の使い方もTPOに合わせてというのが基本である。
機能を十分に発揮させよう
保冷剤を使う場合には、まず、商品ごとの注意書きをよく理解しておくことである。たとえば、「この保冷剤は家庭用冷凍庫で12時間以上凍らせてください」といった内容や、「保冷時間の目安は4時間」といった保冷剤ごとの機能的な説明をよく読んでから扱いたい。
いくら保冷能力が高くても、凍らせる時間が短ければ十分に機能を発揮できないし、野外で早々に溶けてしまって以降はただの荷物になってしまうからだ。ただし、最初から、途中で保冷能力の落ちた保冷剤を取りだして持ち帰る予定の場合は別で、筆者などは最初にクーラーボックス内を保冷剤だらけにして持っていくこともある。こうすることで、最終的に氷を少しでも長持ちさせようという考えだ。
魚を冷やすなら0度タイプ
釣った魚を冷やすのが目的なら、氷点下タイプではなく0度、つまり氷と同等の温度で冷やしてくれるタイプを使用する。この時、注意したいのは溶け具合の確認である。氷なら完全に水になってしまうので溶け具合が確認しやすい。しかし、保冷剤は高吸収ポリマーに吸わせた水分なのでジェル状で、形状をある程度維持する。
特にハードタイプの保冷剤は見た目が全くかわらないので、いつの間にか溶けてクーラーボックス内の温度が上がってしまっているということも少なくない。その点も含めて、説明を良く読んで目安にする。できれば保冷剤用のクーラーボックスを別に用意して、保冷剤ばかりを入れておくと長持ちするので、釣りが終わったら保冷剤を入れかえるのも手だ。
氷を長持ちさせるのは氷点下タイプ
氷は周囲の温度が高いと、高い温度が持つエネルギーを取り込もうとする。それを利用したのがクーラーボックスで、氷を入れておくとクーラーボックス内が冷えるのはそのためである。ボックス内を冷やすかわりに氷は少しずつ溶ける。
これを逆に考えると、氷を長持ちさせるためには、氷より温度の低いものを同時に入れていけば良い。それが前述したマイナス10度や16度といった氷点下で冷やせる保冷剤だ。
釣り場へ持参し、釣りをする時間、できるだけ氷を温存させるために、氷点下タイプの保冷剤を入れておくと、氷よりも温度の低い保冷剤が氷のエネルギーを吸収して溶けるが、エネルギーを奪われた氷は長く凍ったままになるので、より長持ちするという寸法。保冷剤の保冷力がなくなってくれば取りだして、氷を独り立ちさせるというイメージだ。
普段、買い物の際に入れてくれ、何気なく使っている身近な保冷剤は、釣りや夏場の野外活動で非常に便利なアイテムである。今回紹介したように、用途に合わせた機能を持った保冷剤を選ぶことで野外活動が快適になる。この夏は、保冷剤使いの達人になってみませんか!
<松村計吾/TSURINEWS関西編集部>