釣り人からは厄介者として扱われることが多い「ゴンズイ」。危険な毒を持っている一方で、その食味はとても美味なようです。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
ゴンズイとは
ゴンズイと聞いてサカナを想像できる人は間違いなく釣り人でしょう。サカナ釣りに携わっている人なら一度は出会ったことがあるはずです。
ナマズ目・ゴンズイ科の属するサカナで、大きさは最大で20㎝前後、黒色の体に特徴的なヒゲ、黄色い縞模様の特徴的な見た目をしています。
また、体に毒のあるトゲがあることでも知られ、釣り人からは厄介者として扱われています。
海のナマズ?
ゴンズイは別名”アカナマズ”と呼ばれ、見た目は川や池に住むナマズのそっくりな見た目をしています。
地方によっては「ギギ」や「ググ」などとも呼ばれているようです。
これは釣り上げ、持ち上げた時にギーギーと鳴くことに由来していると考えられています。
ゴンズイの生息地
ゴンズイは北海道を除いた日本のほとんどすべての海に生息しています。
以前までは水温の低い東北地方や日本海側では確認されていませんでしたが、近年の地球温暖化の影響か、生息地は北方にどんどん広がっています。
また、以前までは国内に生息するゴンズイは1種類とされていましたが、2008年に日本にはゴンズイが2種類いることが判明し、本州~九州に生息するものを【ゴンズイ】、沖縄からインド洋、大西洋に生息しているものを【ミナミゴンズイ】と分けるようになりました。
触るな危険
ゴンズイの大きな特徴である毒のトゲですが、もし刺さってしまうと激しい激痛に見舞われ、 最悪死に至るケースまであります。背ビレ、胸ビレ付近にこの危険なトゲは存在します。釣れたゴンズイは非常に暴れるため、動きを制限しようと押さえつけようものならグッサリと刺さってしまうでしょう。
毒が体に入ってしまうと傷口付近が焼けつくような激痛に襲われます。焼けるような激痛に加え、傷口はひどく腫れ、しびれることもあり、この痛みは長時間続きます。
また、そのまま放置してしまうと傷口の周辺が壊死を起すこともあります。
さらに注意しなければならないのが、ゴンズイの毒は死んだあとも無くならず、体に残り続けます。そのため、不用意に死体を触って毒をもらってしまう危険性があるのです。
生きていようが死んでいようがゴンズイは素手で触らないようにしてください。
たくさん集まると「ゴンズイボール」に
ゴンズイは普段群れを作って行動をします。その数は少ないと数匹ですが、多い時には100匹を超えるほどの大きな群れを作ります。この時、群れはまるでボールのように丸くなります。そのためこの群れは「ゴンズイ玉」や「ゴンズイボール」と呼ばれています。
そしてこのゴンズイ玉ですが、群れの形によって竜巻型、ローラー型、妖怪型など、おおよそ3種類の形に分かれると言います。
群れを作ることのよって、自分よりも大型の敵から身を守るため、群れを作って大きな生き物に見せているというのがもっとも有力な説だと考えられています。
フェロモンでぶつかり回避
こんなにも大量に集まってしまうとゴンズイ同士がぶつかってしまうのではないかと思った方もいるかもしれません。
しかし、ご安心ください。彼らは決してぶつかったりしないのです。それには彼らが体から発するフェロモンが深く関係しています。
フェロモンと聞くと、色気だとか匂いだと勘違いしている人も多いかもしれませんが、そうではなく、フェロモンとは「体から放出されて同種の仲間に対して特異的な反応を引き起こす化学物質」の事を指します。
誘惑的な効果がある「性フェロモン」、アリの様にたくさんの仲間がはぐれない様にするための「道しるべフェロモン」などがありますが、ゴンズイは群れて行動するための「集合フェロモン」というものを発し、互いにどこにいるかどれくらい離れているかを常に感知しています。
そのため、大きなゴンズイボールになってもゴンズイは互いにぶつかることなく、視覚に頼らずとも離れずに泳いでいくことが出来るのです。
食べたらおいしい
毒があって危険なためイメージがあまりないかもしれませんが、実はゴンズイはとても美味なサカナです。新鮮なゴンズイの身は白身で脂も程よくのり、コリコリとした食感で美味しいと言われています。
また、肝も非常に美味しく、肝醤油にして食べることもあるそうです。
しかし、ゴンズイの毒が少しでもついていると大問題ですので、取り除くことができない場合は加熱処理をするのが望ましいでしょう。ゴンズイの毒はタンパク質でできているため、加熱することによって毒を無効化することが出来ます。
唐揚げや揚げ物で食べることを覚えてしまえば、外道として釣れていたゴンズイも貴重な食糧に見えてくること間違いないでしょう。
繰り返しにはなりますが、毒の管理にだけは細心の注意が必要です。
<近藤 俊/サカナ研究所>