釣りエサだけじゃもったいない? 毒ウニ『ガンガゼ』は6月が旬の美味食材

釣りエサだけじゃもったいない? 毒ウニ『ガンガゼ』は6月が旬の美味食材

「毒を持つウニ」として知名度のある『ガンガゼ』。釣り人にとっては「エサ」として認識されていることが多いですが、実は人間の舌にも美味しい生き物です。

(アイキャッチ画像提供:野食ハンマープライス)

TSURINEWS編集部

その他 サカナ研究所

毒のあるウニがいる

知名度こそ高いものの「なんだかよくわからない生き物」であるウニ。そのいがぐりみたいな見た目から「棘皮動物」というグループに含められているウニは、表皮や内部組織が進化した棘を、移動や防御に用いています。

卵巣が食用になり、その濃厚で万人受けする味わいは世界中で愛されますが、生き物として注目しても、色々と摩訶不思議なところがあり、興味深い存在です。そもそも生き物に多い「左右対称」ではなく、「五放射相対」(正五角形をベースとした形状)という時点で非常にユニークであると言えるでしょう。簡単に言えば「ウニには前後がない」のです。

さてこのウニですが、多種多様な種類がある生き物なので中には多少の変わり者もいます。例えば、毒を持つもの。

釣りエサだけじゃもったいない? 毒ウニ『ガンガゼ』は6月が旬の美味食材代表的な毒ウニであるガンガゼ(提供:野食ハンマープライス)

代表的なものがガンガゼで、時に30cm程度にもなる棘に毒を持っており、刺さりやすく、刺されると体内で折れて激しく痛みます。体内に残ってしまうと、手術で取り出す必要もあるほど危ない存在。日本近海にも多く、ダイバーや漁師が被害に合うこともあり、身近な危険生物として知られています。

釣りエサとしてメジャーなガンガゼ

そんなガンガゼですが、実は釣りの世界では欠かせない存在でもあります。棘が長く凶悪な見た目をしているガンガゼですが、その一方で殻そのものはもろく、人間の手でも容易に割ることができるほど。この弱点を隠すために棘を進化させたと考えられていますが、棘を長くすることができない底面側をあらわにされるとどうしようもなく、なすすべなく魚に食べられてしまいます。

とくにイシダイはこのガンガゼが大好物。長い棘をくわえてひっくり返し、底面を上にしてボリボリと食べてしまいます。こうされることを防ぐため、ガンガゼは岩のくぼみに潜ったり、集団で一箇所に固まるなどして対抗するのですが、それでもしばしば無残に食べられているシーンを見かけます。

釣りエサだけじゃもったいない? 毒ウニ『ガンガゼ』は6月が旬の美味食材棘を切られてしまったガンガゼ(提供:野食ハンマープライス)

釣り人もその習性を利用し、このガンガゼをイシダイ釣りの特エサとして利用します。エサにするときは棘をハサミで切り落とし、「ウニ通し」と呼ばれる道具で針に通して使うのですが、柔らかいとはいえ殻ごとのウニを食べられる魚はイシダイ・イシガキダイ以外にはそうそうおらず、結果として本命の魚をキャッチできる可能性が上がるので、非常に好まれているのです。

実は人の食材としても好適

特殊な形でヒトに利用されるガンガゼですが、地域によってはもっと直接的な利用、つまり「人間のご飯」として利用しているところがあります。ガンガゼは毒棘さえ処理してしまえば普通のウニと変わらず、体内にある生殖巣を食材として利用できるのです。

ムラサキウニなど「夏が旬」の食用ウニよりも少しだけ早い6月ごろに生殖巣が大きく発達し、他のウニ同様に食用にすることができます。旬のガンガゼを割ると体内の大部分が可食部と言えるほどで、スプーンで取り出して塩水にとり、汚れを落とすだけで食べることができます。熊本県水俣地方では商業的に漁獲され「サクラウニ」という名前で商品化されています。(『咲いた、咲いた、サクラウニ』日本列島知恵プロジェクト)

釣りエサだけじゃもったいない? 毒ウニ『ガンガゼ』は6月が旬の美味食材ガンガゼの生殖巣(提供:野食ハンマープライス)

見た目と同様に味はやや淡いですが、生臭さも少なく、食べやすくてとても美味。他の食用ウニ類と違い、漁業権が指定されていることも少ないので気軽にとって食べることができるのも嬉しいです(念のため、ガンガゼを採取される際は、その地域の漁業権指定状況や漁業調整規則を確認するようにしてください)。

幻の魚ともいわれるイシダイは、1日に1匹も釣れないということもしょっちゅうある魚です。そんなときは気分を切り替えて、ガンガゼを自分のご飯にするというのもよいかも知れませんね。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>

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