釣りでの厄介者「アイゴ」は美味 トゲに含まれる毒素については未解明

釣りでの厄介者「アイゴ」は美味 トゲに含まれる毒素については未解明

釣りではやっかい者とされる「アイゴ」。実はとっても美味しいサカナだということをご存知ですか?

(アイキャッチ画像出典:PhotoAC)

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その他 サカナ研究所

アイゴってどんなサカナ?

アイゴは【スズキ目ニザダイ亜目・アイゴ科・アイゴ属】に分類される海水魚です。

一般的にはあまり知られていないマイナーな魚ではありますが、釣りをしている人にとっては非常にポピュラーなサカナです。

釣りで敬遠されがちなアイゴがどんな生態を持っているのか知らないという方も多いと思います。

大きさは最大で約30㎝ほどまで成長し、一般的なアイゴは茶色や黒っぽい色をしていますが、南国のアイゴは黄色や青色をしているものも存在しています。

日本全国に生息

アイゴは国内では青森県以南から沖縄県の沿岸部に生息しており、特に本州中部から南の海に多く生息しています。

国外では朝鮮半島南部からオーストラリア北部の沿岸部に分布しており、西太平洋の温暖な海で広く見られる魚です。

最近では地球温暖化の影響で北海道での目撃例もあり、少しずつ生息域を北に広げているようです。

水深は約50mまでの比較的浅い岩礁帯や藻場に生息しており、エビやカニなどの甲殻類やゴカイなどの多毛類などを好んで捕食し、海藻なども食べることがある典型的な雑食性です。

背びれに毒がある

アイゴの一番の特徴はやはり毒がある事でしょう。

背ビレや腹ビレに鋭いトゲがあり、このトゲには毒があります。

そこまで強力な毒ではないため、死に至ることはありませんが、刺されると数時間は辛い時間が続き、その後もジンジンとした痛みが残る場合が多いです。

また、死んだ後もトゲには毒が残っているので、堤防に落ちている魚体などには安易に触らないようにしてください。

釣りでの厄介者「アイゴ」は美味 トゲに含まれる毒素については未解明背びれと胸びれに毒が(出典:PhotoAC)

毒の種類はいまだに不明

サカナの毒と言えばやはりフグの毒をイメージするでしょう。フグ毒は「テトロドトキシン」と言い、摂取してしまうと微量でも命の危険に陥ってしまうような強力な毒です。

しかし、アイゴの毒はタンパク質性の毒素であることは判明していますが、実は詳しい物質名などは分かっていません。

アイゴに刺された場合は、まず患部を清潔な水で洗って綺麗にし、患部にトゲが残っていた場合は、ピンセットなどで慎重に取り除いてください。そして患部を圧迫して可能な限り毒を絞り出します。(口を使って吸い出すのは、口の中に傷や虫歯があった場合、そこから毒が入り痛みが生じるのでおすすめできません。)

毒を絞り出したら火傷しない程度の熱いお湯を用意し、患部の周辺を加熱します。アイゴの毒素はタンパク質ですので、加熱してタンパク質を変質させることで痛みを緩和させることが出来ます。

その後は安静にしておけば数時間のうちには改善します。

名前の由来

アイゴは漢字で書くと「藍子」や「阿乙呉」と書きます。

これはアイヌ語が所以となっており、トゲがあることを示す「アイ」と、魚を示す「ゴ」がくっついてアイゴとなったとされています。

どうして暖かい海を好むアイゴの語源がアイヌ語なのかは定かではありません。

地方での呼び名

アイゴは全国的に生息している魚ですので、地方によって呼び名も沢山あります。

富山県ではイタイタ、長崎ではヤノウオ、熊本ではバリゴ、沖縄ではマーエーなどと呼ばれたりしています。

因みに、釣り人はバリゴと呼ぶことが多いのですが、このバリとは尿のことで、アイゴは尿のような匂いを持っていることが多いのでこの呼び方になっています。

食べたらおいしい

毒が理由でリリースされがちのアイゴですが、味については非常に美味であると言われています。

しっかりとした歯ごたえのある白身をしており、塩焼きなどで食べると絶品だと言います。

しかし、雑食性のため、前述のように取れる地域にによっては強烈な臭いを放つものもいるため、関東地方では臭いを嫌ってあまり食べられていません。

瀬戸内海、四国、九州などでは定番の大衆魚とされており、特に秋にとれる小型のアイゴは瀬戸内海では高級魚とされています。

また、沖縄では、アイゴ類の稚魚を塩辛にした「スクガラス」を豆腐などに乗せて食べたり、酢締めや唐揚げ、塩味の煮付けが定番のようです。

『アイゴの皿ねぶり(盛られた皿まで舐める)』と言う言葉もあり、味は一級品と考えて良いでしょう。

磯焼けの原因にも

近年ではアイゴが増え、「磯焼け」と呼ばれる沿岸部にある藻場の海藻類が消失する一因として問題視されることもあります。

味は一級品であるアイゴを食べることで自然保護にもつながる可能性があいます。

もし釣れてしまった場合は自然保護の一環と思って一度食べてみてはいかがでしょう。

<近藤 俊/サカナ研究所>