海洋生物の生命を奪う『ゴーストフィッシング』 根掛かりが主な原因か

海洋生物の生命を奪う『ゴーストフィッシング』 根掛かりが主な原因か

『ゴーストフィッシング』という言葉をご存知だろうか。根掛かりなどによって海中に捨てられた釣り具や漁具に海洋生物が掛かり、死んでいくことだ。

(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース中部版 APC・浅井達志)

TSURINEWS編集部

その他 お役立ち

根掛かりは連鎖する

アイキャッチの写真は、先日釣行した際に釣り場に放置されていたものを分別したものだ。回収した時点では握り拳ほどの大きさの、複雑に絡み合ったイトの塊。おそらく先行者が海底から釣り上げたものだと思われる。

絡まっていたのは割れたプラグなど使えないものばかりだったので、そのまま放置していったのだろう。内訳はプラグが2個、メタルバイブが1個、ジグヘッドが10個、他にも複数のエサ釣りの仕掛けやワームなど。釣りイト自体も、ナイロンラインやPEラインなど複数のものが確認できる。

お世辞にも大きいとは言い難い、直径十数cmのイトの塊だ。その狭い範囲に、よくもまあこれだけのルアーや仕掛けが絡んだものだ。その数の多さには驚かされる。

始まりは誰かが丸めて捨てた1本のイトだったのだろう。海底に沈んだそのイトに何かが絡み、それがまた次の根掛かりを、という無限の連鎖。「いつも大混雑しているような釣り場なんじゃないの!?」と思うかもしれないが、多くても数人しかいないようなマイナーな場所での話なのだ。これがもしも人気釣り場だったら、どんなことになるのだろうか。

海洋生物の生命を奪う『ゴーストフィッシング』 根掛かりが主な原因かベイエリアの海底はどうなっている?(提供:週刊つりニュース中部版 APC・浅井達志)

ゴーストフィッシング

被害に遭うのは、ルアーや仕掛けだけではない。昨年の伊勢湾はワタリガニが豊漁で、カニ網を使ったカニ釣りが大人気だったのを覚えている読者も多いだろう。

昨秋、岸壁際のカキ殻に絡み付いたまま放置されていたカニ網に、ルアーを引っ掛けてしまったことがあった。そこで網ごと回収してみると、掛かっていたのは数個のジグヘッドと、死んだものも含めて3匹のカニ。おそらく岸壁に沿って移動しているとき、網に掛かったのだろう。

海洋生物の生命を奪う『ゴーストフィッシング』 根掛かりが主な原因か根掛かりのリスクは壁面にも(提供:週刊つりニュース中部版 APC・浅井達志)

網に掛かったカニはやがて死んで分解されるが、ナイロン製の網は分解されることなく半永久的にカニを捕獲、殺戮し続けるのだ。これらは「ゴーストフィッシング」と呼ばれ、世界各地で大きな問題となっている。

根掛かったカニ網は消えない

カニ網とは、エサに寄ってきたカニを、束ねた網に絡めて捕獲する道具だ。当然ながら、わざわざ絡みやすいように作られている。そんなものを障害物の周りに投入すれば根掛かりは必至。本来は砂地や砂泥地といった、根掛かりのない場所で使用するものなのだ。

昨年のカニ網ブームで、伊勢湾奥の沿岸部には相当な数のカニ網が根掛かっていると考えられる。海底の目に見えない部分がどんな状況になっているのか、想像するだけでも恐ろしい。

回収できる工夫をしよう

こういったものはメーカーが生分解性素材に切り替えてくれるといいのだが、価格に反映される部分なので難しいのだろう。とはいえ、安価になればなるほど、気軽に捨ててしまう人が増えるのも事実。

確かに、釣りをする上で根掛かりは避けられない部分もある。だが、仕掛けの工夫などで回収率を上げたり、または海底に残る部分をできるだけ少なくしたりすることは難しい話ではない。

カニ網も同様。根掛かりしても、網を引きちぎって回収できるだけの太いイトを使えば済む話なのだ。イトの太さで釣果が変わるような釣りでもあるまいし、わざわざリスキーな細イトを使う必要はどこにもない。

釣り人の意識で釣り場をキレイに 

自分1人くらいゴミを捨てても影響はないだろう。自分1人くらい回収率を上げてもゴミは減らない。そう考えるのは誰しも同じ。だが、数年前の統計によると、日本には約770万人の釣り人がいるのだ。一人一人が環境に目を向けるだけで、釣り場は確実にキレイになっていく。

絡んで捨てられた釣りイト、根掛かりしたルアーや仕掛け。手元を離れれば誰もが忘れてしまう「それら」のその後について、少しだけでも考えてみてほしい。

<週刊つりニュース中部版 APC・浅井達志 /TSURINEWS編>

この記事は『週刊つりニュース中部版』2020年5月8日号に掲載された記事を再編集したものになります。

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