貝類は旬をあまり意識しない海産物ですが、実は春が旬。今回は、おいしい貝類の見分け方を、奈良県中央卸売市場の丸中水産株式会社勤務の著者が紹介します。
(アイキャッチ画像提供:WEBライター・有吉紀朗)
アサリの栄養素
ほぼ一年中スーパーの店頭に並んでいるアサリですが、旬は春。特にこれから5月くらいまでが一番おいしい。新ワカメ、分葱との酢味噌和えや味噌汁、酒蒸しで人気者の「アサリ」ですが、釣り人的にはカワハギ釣りのエサと見てしまう時があります。
そんなアサリですが、カルシウムやカリウム、亜鉛、鉄などのミネラルがたっぷり入っています。特に100gあたりに含まれるビタミンB12の含有量は貝類の中で1番多いと言われています。ビタミンB12が不足すると、悪性貧血(頭痛、めまい、吐き気、動悸、息切れ、食欲不振など)、神経痛、慢性疲労が起こりやすくなり、特に外出制限であまり運動の出来ない人にオススメ。その他うま味成分であるタウリンも豊富だから、おいしくないサプリより断然おいしいアサリでしょう。
目利き
目利きのコツはなるべく大粒のものを選ぶこと。小粒はエサ用にするのもいいでしょう。産地による味の差は特にありませんが、むき身や冷凍は中国製が多いです。
反対に避けるべきものは、死んだ貝。パックに入っているアサリでは半分くらい口を開いているものがあるが、少しゆすってやって口を閉じるような貝が新鮮です。
砂抜きの方法
よく聞かれるのが、砂抜きの方法。売られているものはほとんど砂が抜けていますが、もう一度砂抜きをしたほうが安心です。
手順は、ザル付きのバットに貝を並べ、3%の食塩水に暗い所で1時間から2時間漬ける。元気なやつは潮を吹き、顔を近づけ眺めているとびしょびしょになるほどなので、新聞紙をかぶせておきます。
ザル付きにするのはせっかく出した砂を再び吸い込むのを防ぐため。3%の食塩水は500ccのペットボトルにキャップ2杯の塩でOK。
注意する点は、冷蔵庫に入れないこと。冷蔵庫に入れるとアサリは冬眠して砂が抜けなません。40℃くらいのお湯でする砂抜きは5分から10分でできるものの、貝のコンディションによって失敗が多いということも覚えておきましょう。
ちなみに、砂抜きに錆びた釘とか刃物という話を聞きますが、科学的な根拠はないようです。SNSもない時代によくこんな話が広がったものだと感心させられます。
そんな時間はないという人は、購入したアサリをよく洗う。あまり乱暴にすると殻が割れてそれが食感を損ないかねないので丁寧に洗いましょう。購入したアサリを持ち帰る時も乱暴に扱わないようにしたいところです。
潮干狩りでとったアサリ
潮干狩りでとったアサリは、砂が詰まった死んだ貝がないかまずチェックしましょう。ひとつずつ見て選別しましょう。その後砂抜きをしますが、こちらは4時間以上したほうがいいです。
関西ではあまりみかけないが、アサリは干物もおいしいです。また殻つきのままでも剥き身でも冷凍保存ができます。
ハマグリ
ハマグリも春が旬。ひな祭りや結婚式、棟上げなどお祝いの席には欠かせない貝です。千葉や茨城から入荷するのはチョウセンハマグリ。朝鮮ではなく汀線が語源です。
中国から入荷するのはシナハマグリ。最近はよく「コロナは大丈夫か」と聞かれますが、「今のところ哺乳類以外感染例はないようなので」と答えています。
ただし国産も含め生食は絶対しないこと。ハマグリの身にはビタミンB1を分解するアノイリナーゼという酵素が含まれており、ビタミンB1欠乏症になるおそれがあります。加熱することでこの酵素は不活性化されます。ただし焼きすぎない。焼きすぎると身が硬くなってしまいます。
目利き
国産も中国産も味にそん色はないので、大きい物を選ぶのが一番です。
選ぶべきでないものは、死んだ貝。これはアサリと同じですが、可能なら貝と貝をかるくぶつけて音を聞きます。この時低い音がするものはいい貝、高い音のものは避けましょう。身が痩せているばかりでなく味も落ちます。
砂抜き
砂抜きはアサリと同様にすればOKです。
その他の貝類
アサリではないですが、伊勢のほうで大アサリと呼ばれるウチムラサキもこれからがおいしい貝です。兵庫県東播では本荘貝と呼ばれていました。本荘というのは特に多かった地名が由来しており、カレイ釣りで有名な二見人工島や第一人工島沖では、船からヤスを突き刺すといくらでも採れたそうです。今は捕れなくなっており、寂しい限りです。
海藻がよく育つ春には、それらを食べるアワビやサザエも旬を迎えます。アワビはクロアワビが一番おいしく、次にマダカアワビがきます。安い物はチリアワビやロコガイで、アワビの代用品となっています。
<有吉紀朗/TSURINEWS・WEBライター>