潮干狩りの前に必ずチェック 恐ろしい「貝毒」と対策について解説

潮干狩りの前に必ずチェック 恐ろしい「貝毒」と対策について解説

誰でも簡単に楽しめる初夏のアクティビティの代表「潮干狩り」ですが、リスクがないわけではありません。最大の危険である「貝毒」について知り、危険を未然に防ぎましょう。

(アイキャッチ画像提供:野食ハンマープライス)

TSURINEWS編集部

その他 サカナ研究所

潮干狩りのハイシーズン

一進一退が続いていた気温もぼちぼち高い方へと落ち着き、ソメイヨシノも葉桜となっていよいよ春は盛りとなりました。温かい空気に誘われて生き物たちも顔を出すこの時期、様々なレジャーの適期となりますが、その中でも代表的なものはやはり潮干狩りではないでしょうか。

潮干狩りの前に必ずチェック 恐ろしい「貝毒」と対策について解説大きく潮が引いた春の干潟(提供:PhoteAC)

そもそもなぜ春が潮干狩りに向いているのかというと、「日中に潮が大きく引く」ため。日本では多くの場合1日に2回ある「干潮」ですが、大きく潮が引く干潮とあまり潮が引かない干潮が存在します。これは「日潮不等」と呼ばれ、おもに地球の地軸の傾きが原因となって起きる現象なのですが、この「大きく潮が引く干潮」が午前中~昼にかけて起こるのが、春なのです。

潮干狩りは潮の引いた砂浜や干潟で行われるアクティビティなので、潮が大きく引くときほど、潮干狩りを楽しめる時間も長くなります。なので一般的に「春が潮干狩りのハイシーズン」と言えるのです。

貝毒に要注意

ところで、潮の干満差自体がいちばん大きくなるのは、実は春ではなくて夏もしくは冬だといいます。(『「“彼岸潮”は年一番の大潮」は間違いだった!?』「ウェザーニュース」2018.9)冬は最大干潮が真夜中になるため潮干狩りに不適なのは分かるのですが、夏の最大干潮は日中になります。加えて干満差も大きいとなれば、夏こそが潮干狩りに向いているシーズンと言える気がするのですが、実際はそうではありません。その最大の原因として、「貝毒」があります。

潮干狩りの前に必ずチェック 恐ろしい「貝毒」と対策について解説一見すると美味しそうな貝でも……(提供:野食ハンマープライス)

「貝毒」とは有毒なプランクトンを食べたアサリやホタテ、カキなどの二枚貝が体内に一時的に毒素を蓄積し、それらの貝を食べた人が中毒症状を起こしてしまう現象を言います。渦鞭毛藻類という植物プランクトンが原因で発生し、おもに濾過食性を持つ二枚貝類の貝毒が有名ですが、巻き貝にも発生します。これらの貝毒は、水温が高まってくると発生しやすくなる傾向があり、そのため「夏の潮干狩りは慎むべき」という事も言われるのです。(『貝毒ってなんだ?』一般財団法人東京顕微鏡院,2014.2)

恐ろしい貝毒

その症状は大きく分けて「麻痺性貝毒」「下痢性貝毒」「神経性貝毒」「記憶喪失性貝毒」の4つがありまずが、日本では前者2つの発生が報告されています。

日本で最も問題となるのが「麻痺性貝毒」で、原因となるプランクトンの生息域が広いため、日本全国様々な貝で発生します。ホタテガイ、アサリ、カキ、ムラサキイガイ(いわゆるムール貝)などの二枚貝はもちろん、巻き貝であるトコブシ、貝ですらないホヤや、毒化した貝を食べたと思われるカニ類からも毒成分が検出されています。中毒症状はフグ毒中毒によく似ており、食後30分程度で軽度の麻痺がはじまり、次第に全身に広がります。最終的には呼吸麻痺により死亡することもあり、大変恐ろしい毒です。(『二枚貝:麻痺性貝毒』「自然毒のリスクプロファイル」厚生労働省)

潮干狩りの前に必ずチェック 恐ろしい「貝毒」と対策について解説外見からは毒性の有無はまったくわからない(提供:PhoteAC)

「下痢性貝毒」は日本においてはムラサキイガイによる発生が多く、潮干狩りのターゲットとは少し異なります。しかしムラサキイガイの貝毒が発生した海域では、他の二枚貝でも下痢性貝毒を起こす可能性が高まっているので、潮干狩りも避けるべきでしょう。おもな中毒症状は消化器系の障害で、下痢、吐気、嘔吐、腹痛が起こります。症状は食後30分から4時間以内の短時間で起き、回復は早く、後遺症や死亡例もないそうです。(『二枚貝:下痢性貝毒』「自然毒のリスクプロファイル」厚生労働省)

貝毒を避けるには

このように恐ろしい貝毒ですが、もちろんその被害を未然に防ぐことは可能です。もっとも効果的なのは、潮干狩りを行う前に、現地の漁協や水産研究所が発表している貝毒の発生情報を確認すること。漁獲物による被害を防ぐために検査結果が細かくモニタリングされており、貝毒の原因となるプランクトンの発生状況なども確認することができます。

有料の潮干狩り場では、貝毒が発生したらすぐに閉鎖が行われます。貝毒が強ければ、こういう場所を利用するのも手かと思います。

また、プランクトンが発生しやすい状況では、貝毒も発生しやすいもの。プランクトンの異常発生とも言える「赤潮」が発生していたら、その海域での潮干狩りを行わないようにすることも自衛手段としては効果的です。

潮干狩りの前に必ずチェック 恐ろしい「貝毒」と対策について解説赤潮の発生時は要注意(提供:PhoteAC)

楽しい潮干狩りは美味しい貝が採れるからこそ。その貝で体調を崩したら、楽しさも台無しです。最低限の知識をもち、安全に潮干狩りを楽しみましょう。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>

現在、一部都府県に緊急事態宣言もしくはまん延防止等重点措置が発令中です。外出については行政の最新情報を確認いただき、マスクの着用と3密を避けるよう心がけて下さい。一日も早く、全ての釣り場・船宿に釣り人の笑顔が戻ってくることを、心からお祈りしております。