日本は四方を海に囲まれた島国であり、季節や場所によってスーパーに並ぶ魚介類も様々。特に秋は、産卵や冬に向けて、脂が乗り太った美味しいサカナがたくさんいます。今回は、なかでも10月に旬を迎える東日本のサカナを紹介します。
(アイキャッチ画像作成:TSURINEWS編集部)
10月の北海道地方の旬『ししゃも』
ししゃもは、世界中でも北海道南部の太平洋沿岸の一部でしか獲れない日本固有の魚です。
普段わたしたちがスーパーで見かけるししゃもは、北太平洋や北大西洋で漁獲されるカラフトシシャモ(キャペリン・カぺリン)という種類で、実は本物のししゃもではありません。
回遊魚であるししゃもは、10月から11月には産卵のため特定の河川を溯上し、河口から1~10km上流の砂れきの川底で産卵します。
この時期の卵を持った雌は子持ちししゃもと呼ばれます。
釧路での代表的な食べ方
ししゃもと言えば、干物のイメージですが、水揚げ直後の新鮮なししゃもが入荷する釧路では、お寿司にして食べるのが◎。
水揚げされる時期が限られているので、1年を通して、本当にこの時期にしか食べられません。新鮮な状態でないと食べれない「お寿司」は絶対に外すことは出来ないでしょう。
極めてあっさりした味で、ほのかに甘みが楽しめます。
10月の東北地方の旬『ハタハタ』
秋田県の県魚としても知られる「ハタハタ」の旬は10月下旬~1月。
中でも、産卵前で深海から浅瀬にやってきたばかりの「黄金ハタハタ」は脂のノリが段違いです。濃厚な脂とクセのない淡泊な身を楽しめるのは産卵前の10月頃だけです。
秋田での代表的な食べ方
黄金に輝くハタハタはどんな料理でも楽しめますが、せっかくなら地元の味を楽しんでほしいということで、おすすめするのが郷土料理の「しょっつる鍋」。
ハタハタを原材料にしている魚醤の「しょっつる」を出汁で薄め、そこに黄金に輝くハタハタ、そして地元野菜をたっぷり入れれば栄養満点の「しょっつる鍋」の完成。
提供してくれるお店はたくさんあり、お店ごとに野菜や具材が異なるので、どんな鍋になるかはお楽しみです!
10月の北陸地方の旬『甘海老』
お寿司のネタとしても馴染みのある「甘海老」。
「甘海老」というのは俗称であり、正式には「ホッコクアカエビ」と言います。能登半島沖合いの水深200m~700mの海底に生息し、石川県を代表する魚介類です。
甘海老は11年以上の寿命があるとされ、5歳前後から雌に変わるという不思議な生態を持ちます。
石川での代表的な食べ方
甘エビはなにより、生で食べるのが一番!
プリプリした食感とツルリとした舌触り、そして名前にもある「甘み」が強く、とろける味わいが特徴です。
10月は抱卵前で身に栄養がたっぷりで、1年を通じて一番濃厚な味が楽しめる時期と言えるでしょう。さらに季節が進むと、青色の卵をたっぷりと抱え、また違った味わいを楽しむことが出来ます。
10月の東海地方の旬『伊勢海老』
本来であれば、年間を通して漁獲することのできる伊勢海老ですが、三重県では県漁業調整規則により5月1日から9月30日までを禁漁とししています。
禁漁期を設けることで海老は大きくなり、個体数も確保することが出来ます。漁が解禁となったばかりの身がぎっしり詰まった伊勢海老をぜひ食べてみてください。
三重での代表的な食べ方
新鮮な伊勢海老を食べる場合、オススメなのはお刺身や姿造りです。プリプリで噛み切れないほどの身と、口の中いっぱいに溶け出す甘みに驚くことでしょう。
まずは醤油もつけずにそのまま食べて、伊勢海老の甘みを楽しんでください。最後に頭にぎっしり詰まったミソを醤油に溶かした「ミソ醤油」で。
ほろ苦い大人の味に舌鼓を打つことでしょう。
10月の関東地方の旬『ハゼ』
高級魚というわけではありませんが、江戸前のハゼが旬を迎えています。
江戸前とは、三浦半島の剣崎と房総半島の洲崎を結んだ線より内側の、東京湾で取れた新鮮な魚介類のことをさします。
これを使った料理は「江戸前~」と呼ばれ、ブランドのように扱われています。
中でも【江戸前天ぷら】は1,2位を争うほど人気であり、江戸前天ぷらの三大食材といえば、車海老、穴子、そしてハゼとなっています。キスじゃないいんだ!と驚く人も多いと思いますが、それほどハゼの天ぷらは美味しいのです。
東京での代表的な食べ方
ハゼはスーパーにはあまり並ばないため、食べるには自分で釣るか、天ぷら屋さんに行くしかありません。
とは言っても、実はハゼはどこでも釣ることが出来、河口に行けば高確率で釣ることが出来ます。家族と行楽気分で遊びながらたくさん釣って、お家で天ぷらパーティなんてのもオススメ。
天つゆで食べるのが一般的ですが、ハゼは塩で食べるのが通だとか。釣って楽しい、食べて美味しい「江戸前ハゼ」を週末にぜひ楽しんでみてください。
<近藤 俊/TSURINEWS・サカナ研究所>