スーパーの鮮魚コーナーに並ぶ魚には【天然】や【養殖】と最近では書かれるようになりました。しかしこのラベル表記がなかった場合、どのように見極めれば良いのでしょうか。今回は簡単なマダイの見極め方を解説していきます。
(アイキャッチ画像出典:PhotoAC)
天然モノと養殖モノの違い
【マダイ】は、サカナの中で縁起物として様々な場面で使われています。私達の生活の中でも、赤ちゃんが丈夫に育つようにと願掛けも兼ねた『お食い初め』など幼少の頃から、特別な日に食べることが最も多いサカナと言えるでしょう。
以前は高級なサカナとして扱われてきましたが、近年の養殖技術の発達で年中、そして比較的簡単に入手できるようになりました。
最近ではスーパーでも1匹まるまる買うこともできるようになってきています。以前に比べ比較的身近なサカナとなったマダイですが、では天然モノと養殖モノの違いはあるのでしょうか?
天然マダイ
まずは、天然のマダイについて紹介します。
天然モノのメリット
・見た目が美しい赤色をしている
・身が引き締まり、コリコリとした歯ごたえ
・適度に脂が抜け、さっぱりとした味わい
天然モノのデメリット
・沖に出ないと釣れない
・大きさが揃いにくい
・海洋汚染などの影響
養殖マダイ
次に、養殖モノのマダイについて見ていきます。
養殖モノのメリット
・天然モノより脂が豊富で濃厚な味わい
・しっとりとした舌触り
・数や品質が安定している
・ブランド化しやすい
養殖モノのデメリット
・日焼けで色が黒くなりやすい
・ヒレがすり減ってしまう
・人工飼料による人体への影響
両者にはこのようなメリット/デメリットがあり、どちらを選ぶのかは消費者である私達に選ぶ自由があるので、その時々にあった魚を選ぶと良いでしょう。
国内流通比率
日本国内のマダイの流通比率ですが、平成30年度では全漁獲量は約76,000トンの内、約16,000トン(約21%)が天然で、残りの60,000トン(約79%)が養殖となっています。
私達が日頃、回転寿司で食べるマダイはおそらく養殖だということがこの数字からも伺えます。
では国内に流通しているマダイはいったいどこの産地が多いのでしょうか。天然・養殖それぞれのTOP3を調べてみました。
天然モノの産地TOP3
1位・・・長崎県 2,100トン
2位・・・福岡県 1,900トン
3位・・・愛媛県 1,500トン
養殖モノの産地TOP3
1位・・・愛媛県 33,300トン
2位・・・熊本県 8,700トン
3位・・・三重県 3,800トン
九州や四国地方が多く、特に愛媛県は天然・養殖を合わせて全体の約半分を占めています。
愛媛県で養殖が盛んな理由
愛媛県の西側に広がる宇和海はリアス式海岸(狭い湾が複雑に入り込んだ沈水海岸を指す)になっていることと黒潮が流れ込む2つの要因から、他の産地に比べて養殖に適した環境が揃っています。
・太平洋から黒潮が流れ込む
→栄養素やミネラルが豊富になり成長が早い
・リアス式海岸になっている
→波が高くなりにくく、安定して生産できる
こういった理由から愛媛県では天然モノに勝るとも劣らない上質な養殖の鯛を生産しています。
3つの見分けるポイント
さて、ここからが本題です。
これらの情報を踏まえて、スーパーや鮮魚店で並ぶマダイを見て、一目でどうやって天然モノと養殖モノを区別するのか。
このポイントさえ押さえておけば、必ず見分けることができるでしょう。
1.尾びれの形
まずパッと見で大きく違う点は「尾びれ」の形。
養殖のマダイは、生簀の中で生活するため、尾びれの先が擦れて丸くなります。
天然モノはピンと尖っているため、一目で天然モノだと判断することができるでしょう。
2.鼻の穴の数
よーく見ると違う点、は鼻の穴の数。マダイには左右2つずつ似鼻の穴がありますが、養殖モノは左右一つずつのことが多いです。
これは鼻腔隔皮欠損症とよばれるもので、原因はよくわかっていません。
人工的に繁殖させていることが、影響していることはわかっていますがそれ以上はまだ謎のままのようです。
しかし、すべての養殖真鯛でみられる症状ではなく、ちゃんとした鼻腔を持っている養殖真鯛もいるので、間違えないように注意してくだい。
3.体の色
最後に体の色について。養殖のマダイは日焼けをしているため、天然モノよりも色が黒くなっていることが多いです。
反対に天然のマダイは水深の深い場所に生息するため、美しいピンク色をしています。しかし、天然モノでも、オスとメスでは色が異なり、オスのほうがメスよりも黒っぽくなります。
黒いからと言って養殖だと判断せず、尾びれや鼻の形を見て判断するのが良いでしょう。
養殖モノだって十分美味しい
以前までは養殖のマダイは「まずくて食べれない」「身がパサパサしている」などの理由であまり好まれていませんでした。
しかし最近の養殖技術の進歩により、天然モノと養殖モノの差はかなり少なくなってきています。
海洋汚染が気になるなら養殖モノを、自然界で育ったものにこだわるなら天然モノを。
昔から「腐っても鯛」という言葉がありますが、今では腐った天然モノにこだわるよりも安価な養殖モノを選んだほうが美味しいのは間違いないでしょう。
<近藤 俊/TSURINEWS・サカナ研究所>