関東圏の人間にとっても身近な「珊瑚の海」駿河湾。しかしここのサンゴが、とある危険生物の食害により保護が必要な状態になっているといいます。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
駿河湾のサンゴ
2,500mにも至る深海を始め、あまり広くない海域にもかかわらず実に多様な環境を内包することで知られる豊かな海・駿河湾。
その駿河湾の一地域である「内浦湾」には、エダミドリイシなどのいわゆる「造礁サンゴ」が生息しており、ダイビングなどで人気のスポットとなっています。
しかしいま、そんな内浦湾のサンゴに危機が訪れています。内浦湾では1996年の海水温の記録的な低下や、年々勢力を増す台風の被害などでサンゴが減少しているのです。
湾に面する水族館「伊豆・三津シーパラダイス」では、2007年からおよそ20種類のサンゴを魚と一緒に育て、海に戻す取り組みを続けています。(『内浦湾のサンゴを守れ! 水族館が海の環境保護に奮闘 静岡・沼津市 伊豆三津シーパラダイス』静岡朝日テレビ 2022.3.7)
ガンガゼによる食害
熱帯と温帯にまたがり、いくつかのサンゴの生息北限がある我が国ですが、実は日本沿岸のサンゴは各地で減少が続いています。そしてその一因として注目されているのが「ガンガゼ」による食害。
長い棘に毒を持つことで「危険生物」として知られるガンガゼですが、ウニの一種である彼らが「サンゴを食べる」と聞くと、やや意外にも思えます。実はガンガゼは、サンゴの本体である「ポリプ」を捕食してしまうことが調査によってわかっているのです。
しかし、ガンガゼの本来の餌である藻類が豊富な環境下では、サンゴの食害が目立つことはないといいます。人間の活動によって起こる環境破壊のひとつで、磯の藻類が減少してしまう「磯焼け」がサンゴの生育にも悪影響を及ぼしているのです。
ガンガゼを食べて駆除
いま、内浦湾に面する沼津市ではこれらのサンゴを守るために、駆除したガンガゼを食用にするキャンペーンを行っています。
キャンペーンでは、市内の漁協と協力し、採捕許可を受けたダイバーたちが捕獲したガンガゼを市内外の飲食店にて提供。生食するだけでなく、うに醤油などの加工品にも活用するといいます。
ガンガゼの生殖巣は、他のウニのそれと比べると苦味成分であるサポニンを多く含むとされ、全国的な評価はあまり高くはありません。しかし九州などで食用にする地域もあり、商品化の事例もあります。
駿河湾周辺では6~8月頃にかけて旬を迎えますが、その時期のガンガゼは生殖巣が大きく、口にするとウニ特有のトロッとした濃厚な味わいが楽しめます。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>