千葉県の小さな川の河口に、巨大な魚影が大集結し話題となっています。これは一体何を意味するのでしょうか。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
河口でアカエイ大量発生
東京湾最奥部に位置する千葉県千葉市を流れる、花見川という小さな川があります。その河口部にかかる美浜大橋で5月下旬、突如大量のエイが泳いでいるのが観測され、ニュースになりました。
このエイは「アカエイ」という種類のもので、1匹が全長1mを超えるほど大きく、しかも数え切れないほど多くの個体がさほど大きくない河口に押し寄せたのです。
大きなエイが群れをなして泳ぐ様子は異様で、橋を利用する人は「不気味だ」「天変地異の前触れか」などと恐れていたといいます。(『なぜ? “アカエイ”大発生 住民「怖い」…実は理由が』FNNプライムオンライン 2021.5.20)
天変地異の前触れ?
アカエイは全長2mほどにもなる大型魚ですが、浅瀬を好む性質があり、ときにヒザ下ほどの水深しかないような場所でも見かけることがあります。干潟が多く浅瀬が広がり、彼らの餌となる小動物が多い河口の汽水域はアカエイの生息に最適なため、もともとかなりの数の個体が生息していると思われます。
アカエイは普段は単独で暮らす魚ですが、初夏にかけて産卵期を迎えると浅瀬に集まり交尾相手を探します。今回はそれがたまたま人の目に付きやすい場所で行われただけで、別段珍しいことではないといえます。
災害大国に棲む我々日本人は、見慣れない現象が起こるとすぐに「天変地異の前触れだ」などと言ってしまいがち。気持ちはわかりますが、デマの温床となるのでそのような論にむやみに加担するのはやめるべきでしょう
アカエイは美味しい
ところでこのアカエイですが、実はなかなか美味しい魚のひとつです。尾に毒棘を持つことや「軟骨魚類特有の臭い」があるのではというイメージもあり敬遠されることが多いですが、鮮度が良いうちに処理されたものはくさみもなく美味だと言えます。
西日本では広く食用にされており、スーパーマーケットの鮮魚売り場でも当たり前に見かけます。一方で東京湾では利用されることは少なく、食べられるということを知らない人のほうが多いかもしれません。
東京湾のような身近な海でも大群が見られるほど生息数は多く、また大型魚のため1匹から採れる肉量も多いなど、食材としてのメリットは大きな魚。もっと利用すべき食材と言えるでしょう。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>