宮城県で開発された新ブランド魚「伊達いわな」。「一年中美味しい」ことが売りのこのサカナ、普通のイワナとはどこが違うのでしょうか。
(アイキャッチ画像提供:宮城県水産業基盤整備課)
「伊達いわな」の試食会が開催
宮城県で新しいブランド魚として開発された「伊達いわな」。
そのプロモーションとして、飲食店関係者などを対象にした試食会が開催され話題となっています。
試食会では寿司、刺身、テリーヌなどといった、一般的にイメージされる「川魚料理」とは大きく異なったものが提供されました。参加者からは、「脂が乗って美味い」「川魚を生で食べるイメージがなかったので面白い」といずれも好評だったとのことです。
今後、県では「伊達いわな」の魅力をより広く伝えるため、栗原市や大和町など県内の伊達いわな生産地を巡る一般向けのバスツアーの開催も予定しているとのこと。(『宮城県が開発“伊達いわな” 飲食店関係者ら対象の試食会 大きさは通常のイワナの2倍以上・1年を通して高い品質を保つ』東日本放送 2020.11.4)
伊達いわなの特徴
この伊達いわな、一体普通のイワナとどこが違うのでしょうか。
「すべてメスの」養殖イワナ
伊達いわなは、もともとイワナ養殖が盛んな宮城県で、新たな特産品となることを目指し開発された「すべてメスの」イワナです。通常のイワナの2倍以上の大きさがあり、1年を通して味が落ちず高い品質を保つのが特徴です。
6年前に初出荷され、今年は約8tの生産が見込まれているといいます。
「全雌三倍体」のイワナ
実は、伊達いわなは「全雌三倍体」のイワナです。「三倍体」とは温度や圧力による刺激で染色体の数が通常の1.5倍になっているもので、DNAを取り出して操作するいわゆる「遺伝子組み換え」とは異なります。
イワナが含まれる「サケ科」には、信州サーモン、ヤシオマスなどの三倍体養殖ブランドがいくつかあり、この伊達いわなもそのひとつと言えます。
伊達いわなが美味しいワケ
三倍体個体はいずれの魚種でも「繁殖力を持たない」という特徴があるため、通常個体のように性成熟をすることがありません。そのため、産卵期の「成長停滞」や「身質低下」が起こらないのです。
一般的に、イワナは他のサケ科魚と比較すると脂の乗りが弱く、さっぱりとした味わいのものが多い魚です。しかし、この伊達いわなは上記の理由から年中通して脂が乗り美味だといいます。
上質な白身で川魚特有のクセがなく、和食・洋食・中華問わず幅広い料理に使える食味の良さが魅力とされています。
一般的なイワナは2年で20cm程度になりますが、伊達いわなは2~3年で体長50cm・体重1kgほどの大型に育つため、歩留まりが良いというメリットもあります。さらにすべてが養殖モノのため、天然モノと比較すると寄生虫の危険性も低く、生食が可能となっているのも魅力でしょう。
今後さらに知名度が上がり、日本各地で食べられるようになる日が来るのがとても楽しみです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>