サンゴのちょっと変わった5つの生態 産まれたては泳ぐってホント?

サンゴのちょっと変わった5つの生態 産まれたては泳ぐってホント?

一般にはあまり知られていないサンゴの生態。今回は割と知られていないサンゴのちょっと変わった5つの生態についてご紹介します。

(アイキャッチ画像出典:Pixabay)

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その他 サカナ研究所

目次

1.サンゴは植物ではなく動物

海の中を美しく彩るサンゴ。南国の海でまるで花畑のように見ることができますが、実は植物ではなく動物。

クラゲやイソギンチャクの仲間に分類されており、刺胞(しほう)動物の一種です。刺胞動物とは、触手などに毒針を持つ生き物のことを指し、以外かもしれませんが、サンゴもクラゲややイソギンチャック同様に、安易に触ると痛みやかゆみに襲われる可能性があります。

また、食べ物と排泄物が同じ口から出入りする体の構造を持つ腔腸(こうちょう)動物にも分類されます。

腔腸(こうちょう)動物とは、クラゲなどの刺胞(しほう)動物とクシクラゲなどの有櫛(ゆうしつ)動物をまとめた動物グループになります。しかし近年では、2つは独立する違う具グループであるとすると考え方が有力になってきており、使われることが少なくなってきています。

2.世界中に数百種類存在している

サンゴは世界には約800種類ものサンゴが存在します。このうち約200種のサンゴが沖縄で確認されており、世界的にも見ても非常にサンゴの多い海域だと言えます。

非常に多くの種類が存在するサンゴですが、サンゴは「造礁サンゴ」と「非造礁サンゴ」の2つの種類に分類することができます。

造礁サンゴ

造礁サンゴは、一般的にイメージされるサンゴ礁を作るサンゴの総称です。造礁サンゴには、ハナヤサイ、ミドリイシ、コモン、といったサンゴがあり、テーブル状、枝状、キャベツ状などのサンゴ礁を形成しています。

非造礁サンゴ

非造礁サンゴは単体で生息するサンゴを総称を指します。また非造礁サンゴには宝石に使われるアカサンゴやモモイロサンゴ、シロサンゴ、ベニサンゴなどがあ仲間におり、その多くが深海でゆっくりと成長します。

3.繁殖活動は年に一回、盛大に

種類にもよりますが、サンゴは年に1度、いっせいに産卵をします。日本の場合だとだいたい初夏の満月の前後数日のうちの1日に、卵と精子が入ったパックをいっせいに放ちます。

このパックは水に浮きます。

やがて時間の経過とともにそのパックははじけ、ほかの精子や卵と受精します。

受精後は1〜2日で「プラヌラ幼生」となって泳ぎ始め、2週間〜1カ月ほど漂ううちに岩の上に定着し、炭酸カルシウムの骨格をつくりだして成長を始めます。

サンゴの子どもたちは新しい環境で生活を始めるのです。

4.体内で植物プランクトンと共生

サンゴは自らの細胞の中に、単細胞の褐虫藻という藻類を取り込んで共生生活をしてます。

サンゴは前述の通り動物なので光合成はしませんが、褐虫藻は植物なので、光合成で栄養物と酸素を作り出します。サンゴはこの褐虫藻が作り出した栄養物と酸素を使って生きています。

褐虫藻にメリットがなさそうですが、サンゴの体内で生活をすることによって、外敵から身を守ることができます。また褐虫藻は動物であるサンゴの排泄物を受け取り栄養源にしており、共存関係にあります。

このようにして相互に利益を共有しながら、持ちつ持たれつで生きることを「相利共生」と言います。

サンゴのちょっと変わった5つの生態 産まれたては泳ぐってホント?美しいサンゴ(出典:Pixabay)

5.サンゴの色は褐虫藻次第

サンゴと聞くと色とりどりで美しいサンゴイメージする人がほとんどだと思います。しかしその色を決めているのは、体内に取り込んだ褐虫藻の植物色素によるって決まります。

サンゴの分布図

サンゴは、沖縄などの亜熱帯地方に分布しているイメージですが、実は日本で言えば、伊豆地方付近にも分布しています。

水温が18~30度程度までの熱帯・亜熱帯の比較的温かい海岸が最も生息に適しています。(4)で説明したようにサンゴは、褐虫藻が光合成した栄養素で生きています。沖縄などの亜熱帯の透き通る海には、プランクトンが少ないため、褐虫藻にとって光合成がしやすい環境になります。

一方で、伊豆地方など、黒潮などにより、豊富な栄養素、すなわちプランクトンがいる海になります。そのため沖縄ほどカラフルがサンゴ少ないと言えます。

サンゴの白化

そして褐虫藻は生まれたばかりの頃に取り込まれ、体内で増殖していきます。もともとサンゴには色がありませんが、取り込んだ褐虫藻次第で、その後の人生の体の色が決まります。

しかし、こんなにも仲のいい両者ですが、海水温の上昇や汚染等などが原因で、サンゴの体内から褐虫藻が出ていってしまうことがあります。

これが最近、環境問題でも取り上げられている【サンゴの白化現象】です。サンゴの体内から褐虫藻が抜けてしまうと、共生関係で成り立っていた栄養の補給ができなくなり、サンゴはやがて死んでしまいます。

サンゴのちょっと変わった5つの生態 産まれたては泳ぐってホント?白化してしまったサンゴ(出典:Pixabay)

地球温暖化による影響

サンゴがひん死の状態にある「白化現象」。環境省の調査で、日本のある地域では9割ものサンゴが白化していることが近年明らかになりました。

この原因は前述のような海水温の上昇などが原因と見られています。

地球の温暖化を止めなければ、そう遠くない未来に海中を彩る美しいサンゴは見られなくなってしまうかもしれません。

<近藤 俊/TSURINEWS・サカナ研究所>