伊藤さとしのプライムフィッシング。その日その釣り場で最良の釣りを目指す。1か月をメドに釣り方、エサ紹介などを伊藤の実釣を交えて解説する第20回。今月のテーマは「バランスの底釣り・基礎編」。今回はアタリを出すテクニック・誘いについて考えてみよう。いわゆるテンション操作の意味と目的、効果はどのようなものなのか。
ラインテンションとは
「ラインテンションって言葉、聞いたことあるよね。実際、どういうことか理解してる?」
ハリス、強いては道糸の張りですよね?それがどうかしましたか?
「バランスの底釣りではこれがとても重要な要素なんだよね。だから理解して実行するのと、意味も分からずテンション操作するのとでは大違いなんだ。」
いい機会ですから記者の私も体験します。
テンションとは
ではそもそもテンションとは?
「エサを軸にして、ラインに張りを加える。つまり竿尻を引いて道糸を引っ張る。するとエサがアンカーのような役目を果たしてハリスが張る。するとエサの状態はどうなるかな?」
エサの状態ですか?
「では質問を替えようか。エサじゃなくハリの姿勢はどうなる?」
なるほどハリの姿勢、つまりは向きがどうなるかってことですね。それは多少は動くかもしれませんよね。
「そうだね。今、多少ハリスが張っていたよね。重要なのはそこ。
つまりハリスを張ることでそれまでノーテンションで底に着いていたハリに引っ張りが加わるわけだから、ハリの姿勢イコールエサの姿勢が変わってもおかしくないよね。」
そうか!たとえばベタッと寝ていたハリが引っ張られることでチモトが起き上がるかもしれませんね。
「そういうこと。つまりはエサの位置は変わらないけど、エサは動いている。これがつまりは誘いになるわけだよね。」
でも、だったらもっと大きくエサの位置が変わるほど竿尻を引いてもいいのでは?
「もちろんそういう誘いもあるけど、固形物じゃないからハリから抜ける可能性がある。だからエサを動かすほどの誘いではなく、ハリの姿勢を変える程度の誘いのほうが練りエサを使う底釣りには向いているとも言えるわけだよね。」
ではテンション操作の第一目的は誘いですね?
「そういうこと。トップが1~2節程度ゆっくり潜るように竿尻を引いてテンションをかけたままにする。するとエサの姿勢が変わったことから魚が興味を示す。するといわゆる触りが出るからそこからトップが戻ってきてチクッと落とす。まあ机上の計算だけど、こういう展開はよくあることだよ。」
他の目的は
ほかの目的はありますか?
「まあ目的はいつだってアタリを出すためなんだけど、アタらない理由によって目的が変わると言ってもいいよね。そういう意味での第2の目的はハリスを張らせてアタリを出すかな。」
さっきと同じじゃないですか?
「言葉の上ではね。でも今度のアタらない理由はラインが弛んでいるから。流れなどでハリスや道糸が多少でも湾曲すると、動きがオモリ(強いてはウキ)に伝わりにくくなるのは理解できるよね。つまりアタっているのにその動きが緩慢になったラインテンションの影響で伝わっていないとしたら、やるべきことはただ一つでしょ。」
伝わりやすくする。つまりはラインを張ればいい。
「ご名答。この場合もエサを動かすほど竿尻を引くのではなく、トップ数節分のテンションをかけてやればいい。逆の視点から見るとトップ数節が潜るということは、テンションが加わったからこそ。だからどれだけ竿尻を引くかはトップ数節が潜るか潜らないか、その程度のテンション操作で十分だってことなんだよね。」
なるほど。つまり整理するとハリ(エサ)の姿勢を変える。動きを伝わりやすくする。この2点がおもなテンション操作の目的であり理由でもあるわけですね。
「そうだね。あとはテンションを抜くってこともある意味ではエサの姿勢を変えることにもつながるわけだから、張るばかりではなく抜くも試してみるといいよね。
とくにテンションをかけてそのまま触りにつながらなかったから、かけたテンションを一気に開放した途端にアタってくることもあるよね。」
引いていた竿尻を瞬時に元の位置に戻すことですね。
「そう。すると起き上がっていたハリがまた寝るから、これが誘いになるのだからね。まあ練るとか起きるとか言葉のアヤだから、実際はそこまでの動きではないのかもしれないけどね。」
次回は「グルテンセットの宙釣り」です。
<週刊へらニュース 伊藤さとし/TSURINEWS編>
隼人大池へら鮒センター