栄枯盛衰を体現し、今も多くの人々が思いを馳せる「平家」の人々。その名武将の名前を関した魚たちがいます。
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まるでモンスターと話題の「敦盛魚」とは
最近、SNSでとある「カッコいい」魚がちょっと話題になったのをご存知でしょうか。
その魚とは「アツモリウオ」。ほとんどの人は聞いたこともない名前だと思いますが、食用として人気の「八角」ことトクビレの仲間で、赤い体色と大きな鰭が特徴の魚です。
アツモリウオは北海道や東北の冷たい海に生息しており、その名前はもちろん平安時代の武将「平敦盛」に由来します。その赤い体色といかついシルエットを、赤い兜が代名詞であった敦盛になぞらえたのだと思われます。
日本人は魚介類を「平家」に例えがち
実はこのアツモリウオに限らず、我が国には「平家」に関連する和名を持つ魚介類がいくつもいます。最も有名なものはおそらく「ヘイケガニ」でしょう。このカニは背中に怒った人の顔のような模様があり、これを「源氏に滅ぼされ怨念を持って死んだ平家の人々」の怨霊に例えたのです。
またこれは標準和名ではなくて地方名ですが、瀬戸内海沿岸ではミノカサゴを平清盛になぞらえ「キヨモリ」と呼ぶところがあります。派手な模様の鰭の中に毒針を持つミノカサゴを「派手な法衣の中に凶器を潜ませていた」という平清盛になぞらえたのではないか、と言われます。
この世の春を謳歌するも、時勢に負けて滅亡した平家は、その悲劇的な物語性もあって、いまでも多くの人に親しまれる存在です。生き物の名前にも用いられやすいのかもしれません。