コンブが将来的に絶滅の危機 環境全体への影響が懸念されるワケとは?

コンブが将来的に絶滅の危機 環境全体への影響が懸念されるワケとは?

和食における最重要食材のひとつコンブ。主に北日本を中心に生息していますが、その多くの生息地がいまピンチを迎えています。

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その他 サカナ研究所

将来的にコンブが絶滅する?

2020年、北海道大学の研究チームが日本のコンブに関する絶望的な研究結果を発表し、大きな話題となりました。その内容とは「地球温暖化に伴う海水温上昇のため、日本近海の天然コンブのうち主要な11種が、2090年代までに消滅する可能性がある」というものです。

研究の中で「消滅する」と名指しされたのは、肉質が柔らかく、おでんの煮昆布などでそのまま食べられるナガコンブや、昆布類の中でも最高級の出汁が出るとされるマコンブなどです。これらの種は冷水を好むため、温暖化が進んだ海域では生息できないのです。

コンブが将来的に絶滅の危機 環境全体への影響が懸念されるワケとは?昆布だしは幻の存在に!?(提供:PhotoAC)

仮に海洋温暖化が現状のまま進めば、北海道周辺の海水温は最大で10℃ほど上昇すると言われ、その結果コンブの分布域が現状の0~25%にまで減少する見通しだといいます。また温暖化の進行が緩やかになった場合でも、2040年代までに上記のナガコンブなど4種が、日本の海域から消失する恐れがあるということです。(『温暖化で近海コンブ消滅も 2090年代、主要な11種』日本経済新聞 2020.3.19)

コンブのCO2吸収率

出汁のもとや食材として、和食で最も欠かせない食材であるコンブ。もしなくなってしまった場合、その悪影響は計り知れないものがあります。実はすでにコンブ類の市場供給量は年々減少傾向にあり、この30年で3分の1になったという研究結果もあります。

また群生するコンブは「海中の森」と呼ぶべき存在で、豊かな生態系を育む、地球環境にとっても欠かせない存在。失われてしまうと生物多様性の点でも大きな懸念があり、アワビやウニなど重要な漁業種が減少するなど人類にとっても直接的な影響があります。

コンブが将来的に絶滅の危機 環境全体への影響が懸念されるワケとは?コンブは環境に欠かせない存在(提供:PhotoAC)

さらに、コンブのCO2吸収率は他の植物類と比べて高く、結果として温暖化を抑制する力が大きい生物です。コンブが減少すると結果として温暖化がさらに進み、さらにコンブが減少してしまうという悪循環に陥ってしまうのです。

養殖プロジェクト進行中

これらの事情からいま世界各地で、食材確保と環境保全の両輪を見据えた「コンブ養殖プロジェクト」が始まっています。

例えばアメリカ・ニューヨーク州では、これまで養殖が禁止されていたロングアイランドでのコンブ養殖を解禁する「コンブ法案」が昨年6月に施行。高い栄養価を誇るスーパーフードとして、また強力なCO2吸収作用を持つ「海の熱帯雨林」として、資源量を増やすための努力が行われています。

また日本でも、コンブの胞子が着床しやすい特殊なコンクリート製の人工藻場を函館沖などのコンブ産地に沈め、資源量の増加を試みています。

コンブが将来的に絶滅の危機 環境全体への影響が懸念されるワケとは?横浜の海にもコンブが!?(提供:PhotoAC)

都心部でも

ちょっと意外なところでは、東京湾の横浜沖合でもコンブ養殖プロジェクトが実施されています。これは横浜市のSDGsへの取り組みである「横浜ブルーカーボン事業」の一貫で、寒い時期に一気に3~4mも成長するコンブを収穫することで、海中のCO2を減らすことを狙いとしているそうです。収穫されたコンブはイベントなどで振る舞われており、市内各所での販売も視野に入れているといいます。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>