クロダイの養殖海苔への食害が明らかに 高級部位狙い撃ちで売上げ激減

クロダイの養殖海苔への食害が明らかに 高級部位狙い撃ちで売上げ激減

釣り人に最も人気のある魚の一つクロダイ。しかしいま、そのクロダイによる「海苔」への食害が問題になっています。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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その他 サカナ研究所

養殖海苔がクロダイの食害に

海苔の養殖が非常に盛んな兵庫県の水産技術センターがこのたび、県内の養殖海苔がクロダイによって食害されていることを確認しました。その被害は、養殖初期の高値で取引される柔らかい新芽に集中しており、被害額も大きくなっているといいます。

クロダイの養殖海苔への食害が明らかに 高級部位狙い撃ちで売上げ激減海中のクロダイ(提供:PhotoAC)

県内ではここ数年、養殖の開始直後に海苔の先が刈られたようになる「バリカン症」が頻発してきました。同センターは2018年12月から今年の2月にかけ、県内3箇所の養殖場にカメラを設置し観察したそうです。

すると、冬から初春の日中に、海苔養殖網の下の水深約30cmを撮影したカメラに、多くのチヌの群れが写っているのが確認されたそうです。(『養殖ノリにチヌの食害 兵庫県内で確認 海の栄養不足が影響か』神戸新聞 2021.10.19)

海苔の新芽を狙い撃ち

上記の水中カメラでは、海苔の新芽を20匹以上のクロダイが次々に食いちぎっていくところが撮影されていました。他の魚や水鳥による食害もあったものの、その大半はクロダイによるものだったといいます。

そして、クロダイによる海苔被害が出ているのは兵庫だけでなく、全国の海苔雨養殖が盛んな県では概ね発生していると見られています。なかには千葉県富津市や香川県のように、クロダイのせいで売上が激減し、廃業に追い込まれる海苔生産者が出ているところもあるといいます。

クロダイの養殖海苔への食害が明らかに 高級部位狙い撃ちで売上げ激減海苔の養殖(提供:PhotoAC)

兵庫県は国内養殖海苔の約2割を生産しており、出荷額は約200億円ほどもありますが、クロダイによる被害は生産量の1割ほどにものぼると見られています。近年はクロダイの被害のほか、栄養不足による色落ちなどにも見舞われており、海苔養殖はピンチが続いているのです。

クロダイ被害拡大のワケ

クロダイは水深の浅い沿岸部に生息し、内湾や汽水域を好む性質を持っています。そのため彼らの生息域と海苔の養殖場は大きく重なります。

また他のタイ類と比べると、クロダイは非常に食性が広く、動物性食材から海藻まで好んで食べます。そのため、柔らかくて食べやすく、量も豊富な養殖海苔は彼らの格好の餌となってしまうのです。

クロダイの養殖海苔への食害が明らかに 高級部位狙い撃ちで売上げ激減何でも食べるクロダイ(提供:PhotoAC)

兵庫県ではこの事実を受けて、地元の釣り愛好家らが、釣り上げたクロダイに調査用発信器を取り付けるための釣り大会を計画しているそうです。クロダイの生態調査を進めていくことで、兵庫県を代表するブランド品である海苔の被害をできるだけ小さくしたいという思いがみんなにあるのです。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>