各地で獲れるモクズガニは美味 河川によってルールがあるので要注意?

各地で獲れるモクズガニは美味 河川によってルールがあるので要注意?

日本全国の河川で捕獲することが出来る「モクズガニ」。腕に毛の生えたこのカニは非常に美味であると評判です。しかし河川によっては捕獲にルールがあるので要注意です。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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その他 サカナ研究所

モクズガニってどんなカニ?

モクズガニというカニはご存じでしょうか?

高級食材として扱われるカニで、日本全国の河川に生息しています。

日中は大きな石の下やコンクリートブロックの隙間などに隠れていますが、夜になると活発に歩き出し、川を流れてくるミミズや寝ている小魚を捕食しています。

節足動物門 甲殻綱 十脚目 モクズガニ科に属し、大きなハサミに濃い毛が生えるのが特徴で、「ハサミに藻(も)のクズのような毛がはえている」ことから、モクズガニと呼ばれるようななったと言われています。

また英名ではMitten Crab(手袋かに)とも呼ばれています。

地方名はいろいろ

このモクズガニは地方によって様々な呼び方があります。

西日本全般全般では「ツガニ」と呼ばれていますが、静岡県では「ズガニ」、徳島県では「ガンチ」、宮崎県では「ヤマタロウガニ」など様々な呼び名があります。

親が海を下る

淡水魚のマスなどの仲間は親が川を遡上し、上流で産卵、生まれてすぐに海に降下し、海で成長してから産卵のためにまた川を遡上する、このような生活史を送りますが、このモクズガニはこの逆で、親が産卵のために川を下ります。

このタイプを【降河回遊】と言い、魚類ではウナギが同じような生活史を送ります。

9月頃の秋になると上流に住んでいたモクズガニは川を下り始め、河口域で数日間、体を海水に慣れさせ、浅瀬の海でメスと繁殖します。

しかし繁殖を行ったカニは再び上流に戻ることはなく、繁殖行動をとったカニは数日のうちに死んでしまいます。

そして海で生まれたカニは川を遡上し、3年~5年をかけて成長し、親ガニと同様に産卵のためにまた海を下るのです。

各地で獲れるモクズガニは美味 河川によってルールがあるので要注意?モクズガニ(出典:PhotoAC)

中国の高級食材「上海ガニ」との違い

ちなみにこのモクズガニ、よく中国の高級食材である「上海ガニ」と同じものだと言われますが、正確にいうと極々近縁の別種です。

上海ガニは正式には「チュウゴクモクズガニ」と言います。判別方法としてモクズガニは甲羅の前側縁の突起が3つに対し、チュウゴクモクズガニは4となっています。大きさや味などについてはほとんど同じであるため、同じものだと勘違いされているようです。

しかし、唯一の違いはモクズガニは国内原産であるのに対し、チュウゴクモクズガニは外来生物であるということ。

実はこのチュウゴクモクズガニ、国内原産のモクズガニと交配して繁殖してしまうなどの理由から生態系へ与える影響が大きいと判断され、特定外来種として輸入や飼育が制限されています。

もし万が一捕獲した場合はリリース禁止で、絶命させて持ち帰らなければなりませんので注意してください。

身が多いのはどっち?

成体ではオス、メスの見た目は明らかに違います。

オスはメスに比べ、ハサミにたくさん毛が生え、その他の脚の長さも長いのが特徴です。

また裏側のふんどしの部分を見ると一目瞭然で、細長い形をしているのがオス、反対に広く円形に近い形をしているのがメスと判断することができます。

また、体サイズは雌雄であまり違いはありませんが、統計的にはオスの方が小型個体が多く、はさみの肉を食べたいならオス、身の肉を食べたいならメスを選ぶと良いようです。

各地で獲れるモクズガニは美味 河川によってルールがあるので要注意?高級食材としても扱われる(出典:PhotoAC)

エリアや獲り方によっては密漁になるかも?

このモクズガニ、日本全国の河川で捕獲をすることが出来ますが、地域によっては禁漁期間が設けられていたり、カニかごなどの漁具の使用が禁止されていることがあるので捕獲の際には注意が必要です。

重い罰則の場合だと6ヵ月以下の懲役または10万円以下の罰金が科せられることもあるようです。

『隣の川では獲っていいけど、この川ではダメ』のようなこともよくあるので、カニを獲りに行く際には目当ての河川を管理している漁業組合に事前に確認することをお勧めします。

とれるのは今だけ!

モクズガニが河口域で獲れるのは産卵のために降下してきている秋の今だけです。家族でカニ取りをするのも非常に楽しい行楽になるでしょう。

しかし、モクズガニの獲りすぎは厳禁です。

高級食材として扱われるほど美味であるにもかかわらず、捕獲の難易度が非常に低いため、たくさん獲ってしまいがちですが、彼らは産卵のために河口域に降りてきていることを忘れてはいけません。

必要最低限の持ち帰りだけにし、お腹に卵のついているメスの個体はリリースを徹底するなどの配慮を欠かしてはいけません。

<近藤 俊/サカナ研究所>