ルアー釣りの外道である「エソ」。雑に扱われることも多いエソの生態に迫ります。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
エソってどんなサカナ?
エソは「ヒメ目エソ科マエソ属」に属する魚です。
日本近海に住むマエソ属にはマエソ、ワニエソやトカゲエソがいて、ヒレが若干短かったり、尾びれの色が少し黒い事で区別されますが、釣りでも市場でも意識して区別していない様で、この3種が総じて「エソ」と呼ばれています。
エソは大きなものだと体長70㎝、3kgに達することもあるサカナですが、ここまで大きくなるのはごく一部で、一般的には40~50㎝くらいの個体が多いです。
上から押しつぶされたかの様な形で、細長く筋肉質で、薄茶色っぽい色をしています。
見た目の特徴として口が大きいです。頭の後頭部付近まで裂けるように存在する口は非常にインパクトがあるでしょう。
体形が円筒系で口が大きいことから、ワニやトカゲ、ヘビに例えられることもあります。
名前の由来は?
名前の由来は大和朝廷の頃、朝廷に相対する種族を「ヒナ」と呼びまた「エミシ、エミジ、エソ、エゾ」と呼んでいました。
現代からすれば差別的な意味となりますが、「エミシ」「エソ」は見るに堪えない物、見ると嫌悪感がするものを指します。
なのでエソは「見た目から醜悪な感じがするサカナ」という残念な由来となっています。
英名で「Lizardfish」「Snakefish」と呼ばれ、サカナなのにハ虫類にたとえられてしまうことの方が多いサカナかもしれません。
生息域は?
日本国内では太平洋側は千葉以南、日本海側では若狭湾より西南に沿いに生息しています。
瀬戸内海にも多く分布し、海外では東シナ海からインド洋までの水深100m以内の浅い海の海底に生息します。
砂地の海底を好み、夜行性で昼は砂に潜ってエサを待ち伏せしていることが多く、小魚を求めて回遊するうちに汽水域に迷い込んでくることもるようです。
大きな口は肉食の証拠
エソの食性は肉食性で貝類、多毛類、頭足類、甲殻類、小魚など生息地の動いて口に入るものはとりあえず何でも捕食しようとします。
その証拠に釣りではワームやメタルジグミノーだけではなく、ゴカイや冷凍イワシやキビナゴ、キスやアジを使った活きエサでも釣れてきます。
九州地方などの暖かい海では「エサ取りと言えばエソ」と言えるほどよく釣れるサカナなのです。
エソはとっても美味しいサカナ
見た目から敬遠されがちのエソですが、実は非常に美味しいサカナです。小骨が多いため調理は少し大変ですが、身にクセはなく、非常にしっとりと柔らかいのが特徴です。
また、尾の部分の身は小骨も少なく、刺身にすると最高だとか。
一部の釣り師の間では周知の事実で、リリースするのはもったいないと言われるほど美味しいです。
エソを使った高級食材
実は、このエソはかまぼこやちくわの原料となり古くから食用とされ親しまれています。
ですが、水揚げ量が少ないため、現在ではほとんどの練り物の加工品は、タラやホッケなどの大量に水揚げされるものが使用されています。
しかし、エソを原料としたかまぼこはかまぼこの中でも最高級品として扱われ、値段も一般的なかまぼこよりも3〜5倍高く、まさに高級食材と言えるでしょう。
「笹かまぼこ」と呼ばれお歳暮などに扱われています。食卓で主役を張れる「意外な高級魚」なのです。
エソのすり身を使った商品が農林水産大臣賞を獲得したこともあり、その味は国が認めたと言っても過言ではないのです。
アンチエイジングの効果も?
高級なエソの身は味だけではなく、アンチエイジングの効果も期待できると言われています。
エソの身は脂肪分も少なく、良質な白身魚で動物性のタンパク質を多く含みます。栄養成分にはビタミンB・C・Eのほか、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、カルシウム、リン、マグネシウム、カリウムで構成され、バランスよく摂取できることが期待されます。
これらの効能としては免疫力強化、皮膚、粘膜の機能維持強化、ストレスの緩和などで、まさしくアンチエイジング(若返り効果)が期待できるのです。
釣り人から入手して食べてみよう
なかなか、スーパーなどで購入する事はできませんので、釣りをされる方、釣り人の友人がいる方は是非一度持ち帰ってもらい食べてみて下さい。
その際、注意するのは2点。
まず一点目ですが、先にも少し触れましたが、エソは小骨が非常に多いサカナだということ。食べる際は小骨に注意しましょう。
そしてもう一点は刺身で食べる場合のアニサキスです。
恐ろしい寄生虫で、魚の内臓や筋肉組織に取り付き、生きたまま人間の体内に入ると、お腹の中で胃壁に噛み付き、激痛を伴って病院に駆け込む事態となります。
加熱するか、冷凍で一日凍らせると死滅しますが、釣りたてを生で摂取する場合は注意が必要です。
上記2点が面倒くさいという方におすすめなのが、3枚に卸した身をフードプロセッサーですり身にして鍋で食べる方法です。
このすり身を鍋に入れるとすり身自体も美味しいのですが、鍋のおつゆにも良い出汁を提供し、野菜や他の具も美味しく仕上がる、絶品鍋になります。
エソを調理するうえで最も厄介なポイントが一瞬で解決できる最高の方法と言えるでしょう。ぜひ挑戦してみて下さい。
<近藤 俊/サカナ研究所>