稲の大敵「ジャンボタニシ」は食べて駆除も可能 味はまるでサザエ?

稲の大敵「ジャンボタニシ」は食べて駆除も可能 味はまるでサザエ?

梅雨が明けるころになると、西日本各地の水田や川、用水路で、奇妙なピンク色の物質が目に入るようになります。実はこれは、とある厄介な外来生物の卵なのです。

(アイキャッチ画像提供:提供:PhotoAC)

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その他 サカナ研究所

田んぼに現れるピンクの卵は何者?

梅雨が開けて本格的な暑さが到来するころになると、主に西日本各地の田んぼや池、沼、用水路や川岸などで、あまりに毒々しいピンク色をした奇妙な物質が目につくようになります。

稲の大敵「ジャンボタニシ」は食べて駆除も可能 味はまるでサザエ?色合いのこともあり、非常によく目立つ(提供:PhotoAC)

水面からかなり上の方に固まるように貼り付いているこれは「ジャンボタニシ」と呼ばれる生き物の卵塊です。

ジャンボタニシは正式和名を「スクミリンゴガイ(一部地域では近縁のラプラタリンゴガイ)」といい、日本各地に棲息している代表的な淡水性巻き貝・タニシの名前を関していますが、南米から移入された外来生物です。

重要害貝・スクミリンゴガイ

スクミリンゴガイは、日本には食用のため移入されたと言われています。しかしそれが自然環境下に逃げ出し(もしくは人為的に放流され)、温暖な地域ではそのまま環境に適応し、定着したと見られます。

ジャンボタニシ類は国産の淡水性巻き貝と比べると遥かに大きく、最大で殻長8cm近い大きさにまで成長するため、稲を盛んに食害してしまいます。このことから日本を含む東アジアでは、農業上は大変重要な有害生物となっています。(『スクミリンゴガイ』農研機構 九州沖縄農業研究センター)

稲の大敵「ジャンボタニシ」は食べて駆除も可能 味はまるでサザエ?大きく、殻が薄いのが特徴のジャンボタニシ(提供:野食ハンマープライス)

先述の卵塊は水面上に産み付けられ、また毒を保有していることから他の生物の餌になることも殆どないと言われています。成体の捕食者もコイくらいしかおらず、結果としていまやかなりの数のジャンボタニシが、わが国の内水面に棲息していると考えられています。

食べると意外と美味しい

しかしこの貝、以外な方法で我々の生活に役立つ可能性を持っています。それはズバリ「食用」。先述の通りそもそも食用として移入されたジャンボタニシは、大型の巻き貝ということもあって可食部が大きく、殻も柔らかいことから食材として用いるのにも適しています。

稲の大敵「ジャンボタニシ」は食べて駆除も可能 味はまるでサザエ?可食部はサザエに似た食感(提供:野食ハンマープライス)

調理にあたっては、殻を金槌等で割って中身を取り出し、筋肉だけにしてから滑りを良く洗い流し、しっかりと加熱をします。軽く加熱しただけだとやや硬さがありますが、じっくり火を通すと柔らかさとコリコリした食感が生まれ、まるでつぶ貝やサザエのように楽しむことが可能です。やや泥臭さがあるので、味噌や酒、バターやにんにくなど香りの強い調味料を用いるのが美味しく食べるコツ。

稲の大敵「ジャンボタニシ」は食べて駆除も可能 味はまるでサザエ?佃煮風の濃い目の味付けが合う(提供:野食ハンマープライス)

広東住血吸線虫には要注意

ただ一方で注意したいのが寄生虫。ジャンボタニシは、在来タニシやカタツムリなどと同様、広東住血吸線虫という寄生虫がいることがあり、ヒトがこれに寄生されると非常に重篤な症状に陥ることがあります。そのためしっかりと加熱する、調理後の調理器具は熱湯で消毒するといった処理が必要です。

傷口からの侵入の可能性を考えると、加熱処理前の個体を素手で触ること自体、避けた方が良いでしょう。

また、卵同様内臓にも毒が含まれると言われます。この毒は加熱すると無効化されるといいますが、内臓はすべて洗い流してから調理するのが無難でしょう。

「素手で触らない」「しっかり加熱殺菌をする」ことさえ守れば、ジャンボタニシは安全に美味しく食べることができる食材となります。場所によってはサザエかとも思えるサイズのものがゴロゴロ棲息していることもあります。美味しそうな食材と見るか、にっくき外来生物と見るかはあなた次第です。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>