アジアのエビ養殖業界が危機 感染拡大中ウイルス「DIV1」の正体とは

アジアのエビ養殖業界が危機 感染拡大中ウイルス「DIV1」の正体とは

新型コロナウイルスで人間社会が混乱に陥っていますが、エビの養殖業界においても、現在とある危険なウイルスの感染拡大が起こっており、警戒が強まっています。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

TSURINEWS編集部

その他 サカナ研究所

DIV1ウイルス

新型コロナウイルスの再流行が警戒されていますが、病原性ウイルスの被害を受けるのはヒトだけではもちろんありません。近年では鳥インフルエンザや豚熱、コイヘルペスウイルスなど、家畜や養殖魚介類がウイルスによって大きな被害をうける事例が多発しています。

そして現在、とあるウイルスが世界的拡散の恐れありとして警戒されています。そのウイルスとは「DIV1ウイルス」というもの。2014年に中国・広東省の海生エビ養殖場で初めて確認され、あっというまに中国全土に広がりました。このウイルスに罹患したエビは体色が赤みがかり、数日後には殻が軟化して衰弱・斃死してしまうのですが、致死率はなんと80%にも及ぶそうです。

アジアのエビ養殖業界が危機 感染拡大中ウイルス「DIV1」の正体とは被害を受けているタイガー種のエビ(提供:PhotoAC)

昨年2月には養殖エビの主要産地である広東省広州市珠江流域で大規模感染が発生し、養殖されていたエビの95%が廃棄処分されるという事態も発生。高温期になると一度発生拡大は落ち着いたのですが、本年2月には再び広東省で発生が相次いだそうです。(『エビも中国発ウイルス「DIV1」猛威 アジア拡散の恐れ 強烈な感染力、致死率80%以上も』みなと新聞 2020.7)

広がりを見せるDIV1ウイルス

このDIV1ウイルスですが、新型コロナウイルス同様、海を超えて他の地域への感染が拡大しつつあるようです。本年6月には台湾の養殖池で確認されており、しかも海生エビだけでなく、淡水性ザリガニの養殖池でも検出されたといいます。

そして厄介なことに、このウイルスがどのようにして海を渡ったかについては現時点では判明していません。DIV1ウイルスは甲殻類全般に感染の可能性があるものなのですが、予防方法や治療方法を含めわかっていないことは多く、現状では打てる対策はなにもないのだそう。

アジアのエビ養殖業界が危機 感染拡大中ウイルス「DIV1」の正体とはエビの養殖池(提供:PhotoAC)

中国や台湾を始め、アジアにはエビ養殖が主要産業となっている地域が多く、このウイルスが波及すると甚大な被害をおよぼす可能性があることから、恐れられています。

ヒトへの感染はあるのか

このウイルスの「DIV」とは、エビ、カニ、ヤドカリなどが含まれる「十脚目」に感染する「十脚目イリドウイルス」の略です。イリドはラテン語で「虹色」の意味があるため「虹色ウイルス」と呼ばれることもあります。

このDIV1ウイルスをはじめイリドウイルス科の多くは無脊椎動物に感染します。数年前に話題になった「青いダンゴムシ」も、一般的なダンゴムシがダンゴムシイリドウイルスに感染することで発生します。その一方、魚類、両生類、爬虫類などの脊椎動物に感染するものもいるそうです。日本ではマダイやカンパチなどの養殖魚に感染する「マダイイリドウイルス病」が知られており、ワクチンも実用化されています。

ただこのイリドウイルス科のウイルスは、名称からも分かる通り基本的には特定の宿主にしか感染しません。そのためDIV1ウイルスが我々人間に感染する可能性は低く、実際にこれだけ流行が拡大している現在でも、人間をはじめとした哺乳類への感染は確認されていません。新型コロナウイルスのような健康被害を心配する必要は、現時点ではないと言えるでしょう。

アジアのエビ養殖業界が危機 感染拡大中ウイルス「DIV1」の正体とは高級養殖エビの代名詞・クルマエビ(提供:PhotoAC)

とはいえ、世界的に需要が高く、高級品であるエビやカニの養殖業は地域を支える主要産業。このウイルスがもたらす影響は決して小さいものではありません。日本でもクルマエビの養殖が行われており、ウイルスが波及すれば被害額は大きなものとなるでしょう。新型コロナウイルス同様、一刻も早い感染ルートの確認、および対策方法の確立が求められています。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>

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