真夏向け最強サカナ料理「水なます」 生魚を冷たい汁物として食す?

真夏向け最強サカナ料理「水なます」 生魚を冷たい汁物として食す?

暑い夏でも美味しく食べられる魚料理といえば、宮崎の「冷や汁」が有名ですが、関東屈指の漁師料理の名産地「房総」にはちょっと趣の違った「冷や汁」的な料理があります。

(アイキャッチ画像提供:野食ハンマープライス)

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夏バテに良いサカナ

長い梅雨が終わると訪れる猛暑。年々強まる暑さに体調を崩してしまう人も増えていると思いますが、今年の夏は新型コロナウイルスへの抵抗力をつけるためにも、例年にまして体調管理が大切となります。

夏バテ防止には「タンパク質」と「ビタミン」をしっかり摂取することが大切ですが、そのいずれもをしっかり摂取できる食材といえばやはり魚介類。ウナギ、ハモなど「長物」と呼ばれている魚たちを始め、古くから夏バテ防止食材として知られてきた魚介はたくさんあります。

真夏向け最強サカナ料理「水なます」 生魚を冷たい汁物として食す?夏が旬のカレイは魚類会でも屈指のタンパク質含有量(提供:PhoteAC)

栄養学的に見ても、カレイやサケ、カツオなどの夏に美味しい魚たちはいずれも肉を凌駕するほどのタンパク質を含んでおり、これらをしっかり摂取していくことは夏バテ防止に効果的であると言えます。

魚は冷やして食べても美味しい

さらにもうひとつ、魚料理が夏に向いている理由があります。それは「冷製料理で美味しく食べられる」ということ。魚の脂肪の主成分である不飽和脂肪酸は融点が低く、常温で液体になります。そのため、低温だと脂肪が固まり美味しく感じにくい肉と比べ、魚料理は低温でも美味しく食べることが可能なのです。

刺身や寿司など「生」で食べる料理が多いのもこれが理由のひとつ。ほかにもたくさんの冷製料理があり、たとえば宮崎名物の「冷や汁」などは今や全国区になっていると言っても過言ではありません。

真夏向け最強サカナ料理「水なます」 生魚を冷たい汁物として食す?宮崎の冷や汁(提供:PhoteAC)

これは焼いてほぐした魚と味噌、ごまなどをすり合わせ、豆腐ときゅうり、香味野菜と一緒に水に溶いて食べるというもので、氷を浮かべてキンキンに冷やして食べると、うだるように暑く食欲のわかない日でもいくらでも食べることができます。

食べやすくて栄養も豊富な魚の冷製料理は、まさに夏バテ対策にピッタリなのです。

生魚の冷や汁こと「水なます」

さて、この冷や汁と比べると知名度は低いのですが、よく似てかつより手軽な、冷製の汁料理が存在します。それは「水なます」。伝統的な漁師料理がたくさんあることで有名な千葉県房総の郷土料理のひとつです。

これは、新鮮な魚を捌き、シソやミョウガといった香味野菜とよく叩いて、氷水で作った味噌汁に入れるというもの。冷や汁とよく似ていますが、最大の違いは魚が生であるということです。同じく房総地域の郷土料理であるなめろうを冷たい味噌汁に溶いたもの、という説明のほうがしっくりくるという方もいるかも知れません。

真夏向け最強サカナ料理「水なます」 生魚を冷たい汁物として食す?刺身が入った味噌汁のようにも見える(提供:野食ハンマープライス)

新鮮な刺身を包丁でよくたたき、しっかりと旨味を出してから味噌汁に解くのが調理のコツで、旨味や脂がたっぷり染み出した汁は飲むだけで元気が出そうな素晴らしい味わいになっています。単体で食してもいいのですが、ご飯にかけるとより美味しさが際立ちます。

一般的には青魚で作られることが多い料理ですが、脂の乗った魚であればどんなものでも美味しくなります。知名度の低さが信じられないくらい美味しい料理なので、旬のアジやスズキの新鮮なものが手に入ったら、ぜひ試してみてください。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>