5月ごろ、日本海の船釣りで釣り人を楽しませてくれたムギイカも、そろそろ大きくなってスルメイカと呼ぶにふさわしいサイズに。そこで今回は、おいしいスルメイカの見分け方を、奈良県中央卸売市場の丸中水産株式会社勤務の著者が紹介します。
(アイキャッチ画像提供:WEBライター・有吉紀朗)
夏といえばイカ?
今期(2020年)のはじめくらいまでイカ類の漁獲量は少なく相場が高くなり、日本海・大和堆での他国の漁獲圧が原因とか騒がれていました。確かに乱獲も主因のひとつですが、イカ類は世代交代の時間が短く資源量回復も早いです。イカの寿命は小型のホタルイカでも大型のソデイカでも約1年。その1年の間に産卵、成長、成熟、死亡というサイクルが繰り返され、産卵海域、時期も広いので、短期間で個体数は増えます(だから私はアオリイカも少しの間禁漁すれば、増えまくるのにと思ってしまいます)。
さて、夏といえばイカが旬となりおいしいように感じるのは、主に夜釣りで狙うためか、あるいはビールによくあうからでしょうか?関西では冬場に旬を迎えるヤリイカに対し、水温が上昇するころから入荷が多くなるのがケンサキイカです。また、ほぼ通年入荷するスルメイカも、梅雨前後から入荷量が多くなり価格も安くなります。今回の主役は、そんなスルメイカです。
スルメイカの思い出
水産系の学校に通っていた私、学生のころはGWが終わるころからほぼ毎週夕方から一晩イカ釣り実習というのがありました。日本海でシーアンカーを入れて自動イカ釣り機の間で、手釣りでスルメイカを狙います。集魚灯にはダツやトビウオもサバも集まります。敵はイルカでした。おっぱいバリを使っていたので釣れるイカはオスばかりと思っていましたがメスも釣れます。
数年前は大阪湾の岸和田沖や小島沖でもスルメイカが釣れました。泉佐野の乗合船でも釣れており、マツイカと呼んでいたそうです。しかし、ここ数年はめっきり釣れなくなってしまいました。兵庫県沖から五島列島まででは幼体がみられたようですが、分布密度は低かったようです。
ともあれ日本人が昔からイカといえばスルメイカです。
体色で鮮度を判断
スルメイカの鮮度を見るのに有用な手段の一つが、体色のダイナミックな変化を見ることです。
スルメイカを釣られた人は分かると思いますが、釣り上げた透明なイカの表側は茶色の小さな粒子が移動したり、消滅をしたりして体色が変化していきます。側面はエメラルドグリーン、白、青、透明、黄金色に明滅して、目まぐるしく変化しながら徐々に白っぽい透明になり、10分後には濃い茶色にかわります。20分後には艶のない白さになって色の点滅はほぼなくなり、30分後には茶褐色になり体色変化も終わります。
次に白くなるのは、古くなるか氷が当たっている、あるいは重なっている箇所で、水があたっても白く変化しやすいです。もう1段落古くなると白い体表に肝の色が写って茶色くなってきます。
この体色のダイナミックな変化を購入する際にも参考にすることをお勧めします。
スーパーで売っているものでも、腹側を指ではじけば組織が明滅するものもあります。また吸盤をさわり吸い付くものは間違いなく新鮮です。
スルメの目で鮮度を判断
パック詰めされたスルメイカは、体色以外に目を見ます。膜が無いので、飛び出し気味で澄んだもののほうが新鮮です。
また多くが釣りで漁獲されますが、定置網での漁獲もあります。こちらは網の中でこうなるのだと思いますが、仲間内でかみ合いしたような傷があります。自家消費ならそう味は落ちないです。
それより水温が高い海域のスルメイカは身が薄いので、できるだけ水温の低い地方のイカのほうが間違いないでしょう。
調理する際のポイント
自家製塩辛の作り方とかも紹介されていましたが、アニサキスの危険があるので一度冷凍することをお勧めします。塩ではアニサキスは死にません。細く切ることによって虫を傷つけて殺すことができるイカそうめんは、刺し身で食べる際には最も適しているようです。スルメイカは冷凍しても味、栄養は劣化しないし脂肪が少ないので酸化しにくいです。
また、調理の時はなるべく水を使わないのもポイントです。胴からゲソを外す時に洗う以外、水は使わないようにしましょう。雨の日に釣ったイカと晴れの日のイカでは味が違うという人もいるくらいです。
加工品も多く、スルメにイカ飯、総菜のイカリングと多用途でどれもおいしいです。
<有吉紀朗/TSURINEWS・WEBライター>