川釣りに『遊漁券』が必要な理由とは アユは海でも禁漁期がある場所も

川釣りに『遊漁券』が必要な理由とは アユは海でも禁漁期がある場所も

5月ごろから各地で漁や遊漁が解禁される「鮎」。自然の川の生き物なのになぜ釣りをするのにお金がかかるのか。意外と知らない遊漁とアユの禁漁期について調べてみました。

(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)

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その他 サカナ研究所

遊漁ってなに?

漁業法の法律用語で、レジャーを目的に海・川・湖沼で魚や貝などを獲ることを「遊漁」と言い、最近ではレジャーフィッシングなどと呼ばれることもあります。

漁業法では、川や湖沼といった内水面における漁業権を漁場管理や稚魚放流の義務を負った漁業協同組合にのみ認め、非組合員である遊漁者には遊漁規定によって、一定の入漁料を組合に納めることが義務付けられています。

もっと簡単な言葉で説明すると、漁業権とは【地域の漁業協同組合関係者以外が河川や湖でサカナや貝などを獲ってはいけない法律】のことを言い、その土地で釣りなどを行いたい場合は、遊漁券を地域の漁業協同組合から購入し、許可を得て釣りなどを行うことを「遊漁」と言います。

遊漁の中でも鮎(アユ)釣りはその最たる例だと言えるでしょう。

川釣りに『遊漁券』が必要な理由とは アユは海でも禁漁期がある場所もアユ釣りは遊漁の代名詞(出典:PhotoAC)

なぜ遊漁というシステムが必要なのか

「自然の川なのになぜ魚を獲るのにお金がかかるの?」

そう思う方もいるかもしれません。

しかし実は私たちが釣りをしたり遊んだりしている川は、漁業協同組合の方々によって、「魚の放流」や「産卵場の整備」、「河川清掃」などの漁場管理が行われ、魚がいる豊かな川と、釣り人が楽しめる場が維持されています。

各自治体からの補助金や助成金などはありますが、漁業協同組合の運営費のほとんどは遊漁券による収入で賄われており、そのほとんどは放流と漁場管理が占めています。

放流に関しては釣りシーズンに合わせて成魚放流や、自然環境維持のための稚魚の放流活動、漁場管理に関しては、釣り人が安全に快適に楽しんでもらうために、ゴミの撤去や草木の伐採、入川道の整備などに充てられています。

一般的なアユの禁漁期

アユについての漁業権のある河川では、毎年だいたい4~5月頃に漁協によって、10~15cm程度のサイズの稚魚の放流が行われます。

その後、地域によって差はありますが、5月ごろから遊漁が解禁され、10月ごろまで遊漁を楽しむことができます。

その後は翌年の解禁日までは禁漁期間となり、一切の漁業や釣りが禁止されます。

アユが徹底管理される理由

ではなぜアユがこれほどまでにシビアに管理されるのでしょうか。

実は私たちが見ることのできるアユのほとんどは養殖のものです。

夏の風物詩でもあるアユは、高度経済成長期にダムなどの人工構造物によって遡上が妨げられたり、河川環境の悪化などによりその数が激減し、一時は絶滅の危機にまで陥りました。

その問題への対策として禁漁期を設けることで一定量のアユを保護するようになりました。

アユは一年しか生きられない

アユの寿命は1年しかありません。

彼らは両側回遊魚と言って一生のうちで海と川を行き来します。

つまり、1年を通して見ると、川にはアユがいない時期があるのです。

アユは秋から冬にかけて産卵をし、孵化した稚魚はすぐに海に下ります。そして、春までの数ヶ月の間は海で過ごします。

その後、ある程度大きくなった初夏の頃に川を遡上し、秋からの産卵期に向けて成長し、産卵を行った冬に一生を終えます。

なので、1年を通して河川にアユがいない時期と産卵期、稚鮎が河川を下る時期は禁漁期として一定の資源が確保されるようなシステムになっているのです。

これに加え、毎年稚魚を放流したり、河川の環境を整えるなどの対応によってアユは少しずつですが確実に数を増やしていると言われています。

一部の地域では海でも禁漁

禁漁期間の間に河川でアユを獲ることは、前述のとおり禁止されています。

では、川を下って海にいるアユはどうなのでしょうか?「川で釣るのはダメだけど海で獲るのは平気なのでは?」と思う方も多いかもしれませんが、それはNG。

例えば神奈川県ではHP上でも明確に禁止の旨が記載されおり、河川や海は関係なくアユは獲ってはいけません。

自治体によっては明確に禁止していないところもありますが、自然保護を理由に禁漁にしている訳ですから、海で獲ってしまっては何の意味もありません。

禁漁規則に関しては、事前にしっかり確認するようにして下さい。

ルールを守って自然と遊ぼう

「自然の川で遊ぶのになぜお金がかかるのか」

その背景には、数多くの方の苦労が隠されています。

各関係者の協力が無ければ、綺麗で美しい川や自然は維持されませんし、護岸を歩くことだってできなくなるかもしれません。

決められた区域で釣りをする。自分が出したゴミは持ち帰る。

こういった当たり前の行動を当たり前のように皆が出来れば、将来の水資源は間違いなく豊かになることでしょう。

川釣りに『遊漁券』が必要な理由とは アユは海でも禁漁期がある場所もいつまでも豊かな自然を(出典:PhotoAC)

<近藤 俊/サカナ研究所>