前号の波止メバルに変わり、今回のテーマは船メバル。少しずつ気温が上がり、各海域では春告魚の好釣果が続々と聞かれている。今回は船からのサビキメバルとコウナゴメバルの2パターンの釣り方を本紙APCの峯卓さんに解説してもらった。
サビキメバルとコウナゴメバル
立春も過ぎて少し春めく日も出てきたとはいえ、地上に比べて1カ月遅れて推移する海においては春まであとひと息といったところだろうか。
各地で最低水温を記録するのも3月上旬が多いことからも、本格的に春の釣りものに移行するまでは、今しばらくの辛抱が必要だ。
とはいえ日照時間は日に日に伸び、光を必要とするプランクトンが増え、アミエビ、イワシ、コウナゴといった「海の米」が沿岸にわき始めて格好のエサとなるのもこの時期だ。
多くの魚種が待ち構えたかのようにこれらを飽食して太っていく。
春の産卵に備えてというのがほとんどだが、少し前に産卵を終えてやせた魚体を回復させていく魚がいる。
メバルだ。
もちろん当の産卵期には群れもよく固まり、サイズもそろう。
皆さんもソフトボールのように腹が膨らんだ大メバルの画像を目にしたり、実際に釣り上げた経験があるだろう。
見た目は栄えるし引きも強くないので、尺を超える大型が釣れるのはこの時期だったりもする。
しかし食味は落ちるし、何より腹の中には数千の子孫である。
良心の呵責に苛まれると言えば大げさだが、遊漁船の中には産卵期にはメバル釣りをしないと決めているところもある。
2月も中旬になればほぼ全ての海域で産卵は終わっていて、へこんだ腹は膨らみを戻し、頭から背中のラインは急速に盛り上がってくる。
そう、カッコいいメバルである。
重いだけの産卵期とは違いサイズを間違うほど引きも強烈だ。
もちろん食味も抜群なのは言うまでもないだろう。
釣り方は主に2つある。
専用の魚皮サビキを使用するサビキメバルと、生けや冷凍、塩蔵のコウナゴを使用したコウナゴメバルである。
どちらも釣趣あふれる釣りではあるが、どちらかと言うと前者は数狙い、後者は型狙いといったところだ。
残念ながら今年も伊勢湾のコウナゴの資源量は回復しておらず、生きたコウナゴの入手は困難だろう。
しかし冷凍物でも十分釣りになるので、鳥羽から南伊勢にかけての船宿では今年も大メバル狙いで出船する。
実はこれからの時期こそが本番。
今回は船からのメバル釣りを紹介していこう。
タックル
使用するタックルはどちらの釣りも同じような感じだ。
ロッドは1.8~3m前後、オモリ負荷30~50号程度の胴調子のものが、仕掛けを無駄に跳ねさせずに使いやすいだろう。
合わせるリールだが、狙う水深が20mから深くても40m程度なので手巻き、電動どちらでも構わない。
PEラインの1~2号が200mも巻ければ十分なので、小型リールが持ち重りもなく最適だ。
注意したいのは必ずPEラインに先イトとして、フロロカーボンラインの4~5号を5m程度は接続しておく。
ショックリーダーとしてではなく、目のいいメバルを色付きのラインから離す目的と、長い仕掛けを扱うために移動時などに、どうしても穂先絡みが起こりやすい。
PEラインが絡むと非常にほどきにくく見えにくいので、気づかずに巻き込んでロッドを折ってしまう人も多い。
張りのあるフロロカーボンラインならロッドに沿わせても絡みにくく、絡んだ場合でも少し振ってやれば元に戻ってくれる。
オモリは40~60号程度を準備する。
カサゴ釣りと違って基本的には底から浮かせて釣るので、慣れればそれほどオモリを消耗することはない。
だが潮が速い時間帯や傾斜のきついポイントを攻めるときなどは、注意していてもオモリを根に食われるので、余裕のある数を準備したい。
【サビキメバルの場合】
仕掛けはサビキメバルの場合は小アジバリやチンタバリに魚皮を巻いた5~7本バリのサビキを使用する。
ハリスは0.8~1.5号で、これより太いと極端にアタリは減る。
不自然な動きを嫌うので、枝スの長さも最低20cmはほしいところだ。
魚皮の色も製品によってさまざまだが、緑やアメ色などはどんな天候、潮色でも安定して強い。
日によってよく当たるサビキが変わることも多いので、いくつか用意しておくと万全だ。
【コウナゴメバルの場合】
コウナゴメバルの場合は8~9号のメバルバリにハリスは1.5~2号で3~4本バリ仕掛けを使用する。
メバルにしては極太だが、この釣りの狙いは尺メバルだ。
連で掛けた場合やハタなどの他魚に備えて、仕掛けの強度を上げておく。
サビキメバルの場合はエサなしでも釣れるのだが、手返し勝負の時合いを除けばやはり面倒でもエサを付けた方が食いはいい。
さしエサには生きたイサザが最高だが、入荷は不安定で値段もなかなだ。
冷凍でも問題ないので、なるべく透明感の残ったアメ色のものを購入しておこう。
同じ小魚でも真っ白の製品は食いが落ちるので注意したい。
コウナゴメバルは前述の通り今年も生きたイカナゴ(コウナゴ)の入手は絶望的なため、冷凍や塩蔵を購入するのだが、こちらも身が氷焼けしていないものを選んでおく。
釣り方
これから具体的な釣り方を説明していこう。
【サビキメバルの場合】
サビキメバルの場合は、ポイントに到着するまでに仕掛けにイサザを刺しておく。
かなりヌルが強いので、軽く海水で洗ってからぬれタオルなどに置いておくとつかみやすいだろう。
使う分だけを細かいおがくずにまぶすのもアリだ。
刺し方は下アゴから上アゴに貫いておくと外れにくい。
合図があればゆっくりと下ろしていく。
着底したら素早く底を切ってゆっくりと誘い上げていく。
ロッドを利用して誘い上げ、誘い下げを繰り返していくが、タナを指示されなかった場合は最低でも5mほどは上まで誘ってみる。
上で食わせた方がおしなべて型がいいし、連掛けを狙うのに根掛かりを防ぎやすい。
アタリはココココンと明確だ。
アタリが出た時点で反転しているのでアワセは必要ない。
ロッドを起こしながらゆっくりと、ゆっくりと巻いてくる。
掛かったメバルが暴れることで他のハリが躍り、次々と重みが増していくはずだ。
ようやくここで取り込みに入る。
ロッドをサオ掛けに置いたらよほどの大型が掛かったとき以外は仕掛け船に入れずに、上のハリから魚を外していく。
そうすることで仕掛けを絡ませることなく、次のエサ付けから投入までの作業がスムーズに行えるはずだ。
【コウナゴメバルの場合】 コウナゴメバルの場合もイカナゴの下アゴから上アゴにハリを刺し抜くが、なるべく口の先端に刺すと回転してハリスがちぢれることが防げる。
同じように底立ちを取ったら、カサゴに食われる前に底を切って浮いた大メバルを狙っていく。
5m上げて食ってくることもあるので丹念にタナを探る。
10cm以上あるコウナゴを食ってくるのだからアタリがあれば大メバルの率は高い。
欲張って無理に連掛けを狙わずに、ドラグも効かせて慎重に取り込もう。
この釣り方もサビキメバルに比べてハリスが長いため、手前マツリには気をつけて魚を取り込むようにしたい。
また明らかに30cmを超えるような大型は、タモ取りした方が無難だろう。
釣行後の楽しみ
なんといってもメバルには食の楽しみがある。
25cmまでの中型は定番の煮付けが一般的だが、塩焼きも捨てがたい。
身の甘さがひと際味わえる一品だ。
25cm以上の大型は迷わず刺し身にしたいところだが、私のお勧めはサク取りしたメバルを昆布に当てて一晩寝かせた昆布締めの薄造りだ。
個人的にはヒラメより上だと思っているので、ぜひお試しいただきたい。
淡泊な白身に潜む深いうまみが魅力のメバル、釣って食べてひと足早い春を満喫してほしい。
<週刊つりニュース中部版 峯卓/TSURINEWS編>