釣った魚やエサ、飲み物などを収納するクーラー。実践的な魚の温度を比べて編集部で検証をおこなってみた。
(アイキャッチ撮影:週刊つりニュース関東版 編集部)
検証内容
今回は3つの条件で検証してみた。
1.ブロック氷のみ
2.ブロック氷+塩水
3.ペットボトル氷+塩水
塩水は海水の塩分濃度に近い3.5%のものを1L。1~3と一緒に23度ほどにした120g前後のサンマを、氷に魚体が触れないように入れる。1時間ごとに魚体の肛門から温度計を挿入し体内温度を測定。氷や魚の様子、温度の変化を検討する。
実験道具
クーラーは、小物釣りでよく使われる10L以下のもの。ホームセンターなどに売られている低価格帯の商品を使用。
氷は今回、1リットル=1kgの水道水を凍らしたブロック氷とペットボトル氷。
温度計は料理用のスティックタイプを使用した。
氷は毎回計測(撮影:週刊つりニュース関東版 編集部)
1.ブロック氷のみ
まずはブロック氷のみで実験
開始1時間で22.8度から15.5度に低下。2時間で13.2度になり、約10度低下。3時間で最低温度の9.5度記録。4時間以降は気温が上がり、徐々に魚も上昇し始める。7時間後には11.7度になっていた。
7時間後に1kgから282gと氷が溶けづらく長時間入れておけるので、食べ物や飲み物を入れておく分には問題ない。しかし、魚には温度が高すぎるので冷やしきれず、傷みやすい。ボックス内は少し冷えている程度。
溶けだした水が魚の温度を下げているようだ。真水なので魚がどんどん吸って身が水っぽくなり味が落ちる。氷のみの保存は短時間なら問題ないが長時間は温度が下がらず、腐敗する可能性がある。
この状態で冷やすなら、砕氷を多めに入れて、直接触れさせるしかない。この場合は冷やしすぎで魚が凍ってしまう。これも美味しくなくなる原因になるので注意。もしやるなら紙などに包んでからが望ましい。
2.ペットボトル氷と塩水
開始1時間で23度から12.2度に低下。2時間で10.2度になり、約13度低下。3時間以降は8度前後をキープしていたが、7時間後には9度となった。
温度の推移は氷のみと氷+塩水の中間。最後の上昇は氷のみより少なかった。また、残った氷は水を捨てた分で295g。残った氷が「氷のみ」より多かった。
塩分濃度の変化がなく管理は簡単だが、より冷やそうとするとペットボトル分だけかさばる。クーラー内を効率よく活用できないため、沢山釣れたときに邪魔になる可能性がある。また、量によっては下がりきらない場合やまんべんなく冷えない可能性がある。
しかし、別の使い道になることがある。溶けた水を飲んだり身体を冷やしたり手を洗ったりできる。飲み物を凍らして入れておくのがいいかもしれない。
3.ブロック氷と塩水
もっともポピュラーな組み合わせ。
開始1時間で23度から10.7度に低下。2時間で8.7度になり、約14度低下。3時間以降は7度台をキープしていた。魚の温度低下はダントツで早かった。
しかし、氷の溶けるスピードがとても速く7時間後には72gの氷しか残っていなかった。
当日、魚を釣って冷やして持ち帰りそのまま料理したり、冷蔵庫にしまったりする場合はこの方法で問題ないだろう。長時間クーラーに入れる場合は、必ず氷を足すこと。また、真水氷の場合は、塩分濃度が下がり、魚が水っぽくなる可能性があるので、塩/海水を足すことが必要になる。
魚を素早く冷やし、氷が溶けるまで低い温度をキープできるが、氷の溶けるスピードがとても速く、氷のみより1時間あたり約1.3倍溶けていた。
実験を終えて
この検証の前に20Lクーラーを使って似た条件で、挑戦したもののどの方法もほぼ変わらない結果になった。大きさに対しての氷や魚の量も大切なことが分かった。
気温やクーラーでの保存期間などさまざまな要素があるものの、しっかり温度下げられるので、夏は海水+氷が1番無難だろう。
知り合いの漁師は5日間の航海中、砕氷+海水で魚を魚倉に保存していた。このとき温度が1度前後で魚が凍らないようにキープ。また、氷がまんべんなく周るように塊がないようにしていた。高すぎると腐敗が始まり、低すぎると凍ってしまうからだ。
高い場合は臭いが強くなり、低い場合は目が白くなる。高すぎても低すぎても魚は傷んで値段が下がってしまうので細心の注意を払っていた。また、魚が揺れで動かないような氷と海水量で調整する。身が割れるため、硬直した魚は絶対に曲げなおさないなど、かなりシビアだ。
美味しく食べたいならしっかり冷やすことが肝心。ケチらずに氷はしっかり使おう。
<週刊つりニュース関東版 編集部 四家匠/TSURINEWS編>