ここ数年水揚げが芳しくないサンマ。今年の漁獲量も過去最低クラスを記録しているのですが、その裏にはとある「自然現象」が関わっているようです。
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今年もサンマは記録的不漁
ここのところ毎年のように、不漁の知らせを耳にする「秋の味覚」サンマ。今年も秋漁が解禁されて以降「歴史的不漁」「卸値が過去最高価格に」などといった喜ばしくないニュースが飛び交っていましたが、現状はやはり非常に厳しいようです。
「全国さんま棒受網漁業協同組合」によると、秋の7月から10月末の全国のサンマ漁獲量は1万2913tだったそうです。これは過去最低だった去年の同じ時期の64%に過ぎない数字です。
10月以降各地での水揚げが増え、数値としては持ち直してきてはいるものの、依然として過去最低を更新するペースが続いているといいます。(『7~10月全国サンマ漁獲量1万2913トンで過去最低更新』TBSニュース 2020.11.9)
サンマの群れがいない
全国さんま棒受網漁業協同組合によると、通常では秋になると日本近海に南下してくるはずのサンマの群れが今年はなかなか見つからず、そのため公海で操業を続けている状態なのだといいます。
さらに、公海で操業している外国船も不漁だといい、そのため「太平洋サンマの資源状態そのものが悪いのでは」という厳しい見方もあります。結果としてサンマの価格高騰は世界的なものになっています。(『サンマ「壊滅的不漁」過去最低だった去年の半分』HTBニュース 2020.11.9)
「魚種交替」が原因か
サンマの水揚げ量が減少している理由について、国立研究開発法人「水産研究・教育機構」は、近海の漁場で「マイワシ」が増えていることを理由として挙げています。
フィッシュイーターではないマイワシが、サンマの減少につながっているというのはちょっと意外に思えますが、これは食害によって数を減らしているということではありません。
マイワシとサンマは、エサとなる動物プランクトンを巡って互いに競合するライバル。マイワシが増えることで、エサが減ったサンマが沖合に追いやられている可能性があるといいます。(『イワシ増えて沖合に追いやられるサンマ、歴史的不漁の原因か』読売新聞 2020.11.10)
このように、ある魚種が増える一方、別の魚種が減ることは青魚ではしばしば起こり、「魚種交替」と呼ばれています。太平洋ではマイワシとサンマ、サバの3種が年によって増減を繰り返していると言われているのですが、ここにスルメイカを加える意見もあるそうです。
「魚種交替」は大規模な海洋気候変動と連動して起こるとされ、寒冷期と温暖期でそれぞれ異なる魚種が生息数を増やすともいわれています。しかし、その正当性を含めまだまだ不明な点が多く、研究の余地は大きいようです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>