いよいよ乗っ込みシーズン到来!乗っ込みとはさまざまな魚が、産卵のために浅場に入ってくる行動のこと。クロダイ(チヌ)やアオリイカなどが春に乗っ込みを迎えるが、忘れてはならないのが魚の王様マダイだ。今回はその乗っ込みマダイを効率よく狙える、伊勢湾伝統のウタセ釣法を紹介しよう。
釣り方
これで準備は万端、いよいよ釣り方を解説していこう。
ほとんどの場合がポイントにアンカーを打つカカリ釣りである。
【ウタセエビについて】
ウタセエビが配られ、開始の合図があればエサを付けていく。
エビを持ったら口からハリを入れていく。
抵抗なくスッと通る場所なので間違えないはずだ。
そのまま額角(がっかく)、いわゆるツノの根元に刺し抜くが、ポイントはハリのカエシは出さないこと。
固い額角にカエシを残すことで、エビは水平の状態を保てるのだ。
「絶対に死なないように刺しましょう」と説明する文言もよく見かけるが、水温が高い時期などはうまく刺せても死んでしまうこともよくある。
それでも問題なく食ってくるので、エビの生死よりも真っすぐバランスを取って刺すことを心がけたい。
3本から4本のハリにエサ付けが済めば、ゆっくりと仕掛けを下ろしていく。
市販の仕掛けを使う場合、大抵捨てイトの長さが50cm~1mほどである。
【捨てイト】
すぐに小ダイやベラなどのエサ取りやられるようなら、捨てイトを3~5m、あるいはそれ以上取って対応する。
時合いになれば、タイはまきエサを追って想像以上に浮いてくるので試してみよう。
【タナを探る】
仕掛けが流れない時間帯や釣り座によっては直下を釣るしかない場合もあるが、置きザオで漫然と待つのではなく、スローに巻き上げながらエサを動かしつつタナを探っていく。
多くの魚種がそうであるように、タイもまた動くエサには反応がいい。
【誘い下げ】
うまく反応があるタナが見つかれば、次の投入からはカウンターを確認しながら上から誘い下げていくのもアリだ。
【トンバセ】
幸運にも潮下の釣り座にあたり、仕掛けを流すことができるなら、離れた場所でまきエサを拾っているであろう良型を狙って、「トンバセ」を試してみよう。
この場合は潮に乗せやすくするために、ミチイトはフロロカーボンラインがベストだ。
軽めのオモリを使って底を取り、ころ合いを見て底を3mほど巻き上げる。
ロッドを倒しながら底を取っていくと、巻き上げた長さよりもラインが出ているはずである。
仕掛けが潮にたわんで弓のようになっているこの状態こそが、仕掛けを遠くに「飛ばし」、潮に仕掛けを「負わせる」ことなのだ。
緩いテンションで漂うウタセエビを徐々に送っていくことで、まきエサの効くエリアを探り、直下に寄らない狡猾(こうかつ)な良型を仕留めるのだ。
【アタリ】
どういう釣り方をしようと、アタリは割と明確だ。
アワセは船長によって待った方がいい、即アワセでいいとまちまちだが、個人的には概ね良型はガッガッときたら必ず反転して引き込んでいく。
その時点からエサを離すことはないので、しっかりロッドに乗ってからアワせるとハリ掛かりは良くバラシは減る。
ヒラメと同じで、掛からないものは掛からない、掛かるときには用を足しに席を外していても掛かる。
フッキングに悩むより、多くアタリを出す釣りを考えていこう。
【巻き上げ】
水圧の変化に比較的弱い魚である。
急激に巻き上げると浮き袋や腸が口と肛門から飛び出してしまい、イケスに入れても死ぬこともある。
身にも臭みが出ると言われているので、追い食いを狙いがてらゆっくりと楽しんで巻き上げていく。
最後に
皆さん口をそろえるのは伊勢湾のマダイの美しさ。
速い潮、豊富なエサが育んでいるのは兵庫の明石や和歌山の加太と同じだ。
難しくなんかない、もちろん簡単でもない。
その日の状況を読みきって手にした1匹の価値は、匹数やサイズなんてどうだってよくなる。
数少ない釣り人ごとの多彩なアレンジが可能な船釣りである。
臆せずチャレンジしていただきたい。
<週刊つりニュース中部版 峯卓/TSURINEWS編>